日常、ときどき冒険 Jeep3兄弟をオフロードでガチ試乗!

街乗りメインなら、チェロキー&グラチェロは賢者の選択

 スマートなスタイリングやインテリアの雰囲気からも想像できるように、チェロキーはJeepブランドのなかでもっとも街乗りに適したSUVだ。

 ミッドサイズではあるがなかなか居心地のいい上質な車内空間を持っているし、乗り心地だって快適といえる部類。単にアンダー500万円のSUVとしてだけ考えても、なかなか満足感の高いモデルといえる。

●チェロキー・トレイルホーク

「チェロキー」はオシャレなタウンユースのイメージだが、「チェロキー・トレイルホーク」となるとルックスもハード仕様だ
「チェロキー」はオシャレなタウンユースのイメージだが、「チェロキー・トレイルホーク」となるとルックスもハード仕様だ

 そういう意味では、普段は街で遊び、ときどき野山に繰り出るようなライフスタイルにピタリとはまるクルマ。何せ全車オンデマンド式の4WDシステムを備えているのだ。

 このトレイルホークではそれに加え、セレクトレインのモード切り替え式に4WDローのレンジ、リアデフのロック機構まで備えている。

 スイッチをプッシュすると設定した9km/hまでの速度で自動的に坂を登るヒルアセントコントロールや坂を下るヒルディセントコントロールのシステムも与えられている。手間もいらないし、難しいことを考えることもなく、力強く悪条件の坂を登り、危なげなく下っていけるのだ。

 というと何だか大したことない悪路だったかのように思われるかも知れないが、走ったのは並みの4WDモデルでは分け入れといわれたら躊躇うし、大抵の人なら諦める場所。そこを涼しい顔でサラリと、けれど力強く走破していく。これにはほとほと感心させられる。

 大きすぎず小さすぎずの車体のサイズ感や洗練された乗り心地なども含めて考えると、このクルマがもっとも日常的に使いやすいスーパー万能選手といえるかも知れない。

●グランドチェロキー・リミテッド

「グランドチェロキー」は、プレミアム系フルサイズSUVのなかで、もっともコスパに優れている
「グランドチェロキー」は、プレミアム系フルサイズSUVのなかで、もっともコスパに優れている

 グランドチェロキーは、チェロキーの兄貴分であり、Jeepブランド唯一のフルサイズSUV。そのスタイリングは威風堂々というべき風格を見せ、インテリアもアメリカンな香り漂うラグジュアリーなしつらえ。装備類にも足りないものが思い浮かばないほどの至れり尽くせりだ。

 ただし、おかげで車重はおよそ2.2トン。重さというのは駆動の味方になってくれるし安定性を稼いでくれることもあるけれど、同時に重いモノほど登りにくいし落ちやすいという性質も持っている。足元が悪ければなおのこと、だ。

 だから、このクルマがレネゲードやチェロキーと同じようにドロドロの急な勾配を登り、濡れて滑りやすい草原の斜面を下れる様子には、驚きすら覚えてしまう。しかもオンロードでは快適至極のエアサスペンションが備わるおかげで、悪路での乗り心地だって他のどのモデルより素晴らしい。

 4WDシステムは、クォドラトラックIIというアクティブ制御のフルタイム4WD式。タイヤの空転をセンサーが感知すると、瞬時に駆動力をキープしている車軸に100%のトルクを送り込む仕組みだ。

 もちろん5つの走行モードを任意に切り替えられるセレクテレインも備わるし、ヒルアセントコントロールもヒルディセントコントロールも与えられている。それら各部の制御も、かなり細かく正確に働いてるようにも感じられる。

 そのうえ、フロア下のクリアランスが気掛かりなときには、エアサスペンションで地上高を持ち上げることだってできる。ゴージャスなSUVながら、悪路での走破性は間違いなく本物。この上にTRAIL RATEDバッジをつけたトレイルホークが存在することが不思議に感じられるくらいだ。

 ゴージャスなSUVというのは数多ある。それらのほとんどは、主戦場を街中に据えている。が、グランドチェロキーはちょっと違う。街中でも充分に戦えるし、荒野に出ても戦えるのだ。

 何ひとつ不満のない快適さ、不自由のなさ、そして望外なオフロード性能。もっともゴージャスな仕様ですら750万円を下回るという価格を考えると、これは世界でもっともコストパフォーマンスが高いプレミアム系フルサイズSUVなのだと思う。

* * *

 確かにラングラー・ルビコンは、行きたい場所へどこにだって行けるモデルだ。オフロードでのパフォーマンスは、驚愕といえるほど。それに現行のJL型は、オンロードでの乗り心地もだいぶよくなっている。

 けれど、最強の悪路走破性を稼ぎ出すために必須であるラダーフレーム+リジッドアクスルという構造は、どうあっても街中メインで考えられているモノコック構造のクルマと同じ乗り心地は得られない。

 ラフロードを走るのを最大の趣味としている人だったり、その姿や伝統と一緒に暮らしたい人であれば、ラングラーを選ぶのがいいかも知れない。けれど、街中は当たり前のように快適に過ごしたいし、野山にはたまにしか行かないという人なら、ラングラー以外のJeepを選ぶのが正解だと思う。これらのJeep達だって、わりと荒唐無稽に思える結構なところまで走っていけるのだ。

 日常、ときどき冒険。そういうスタイルだってたっぷりとJeepならではのロマンを堪能できるのだから。

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【画像】Jeep3兄弟の悪路走破性を確認する(25枚)

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