なぜ山口県でクルマの撮影が多くおこなわれる？

　海外で撮影されるイメージが強い新型車のCMですが、じつは日本国内においても美しい風景と共に多くのCMが作られています。

　とくに2000年以降、本州の西端に位置する山口県でクルマのCMなどが撮影されることが増えています。一体どんな理由があるのでしょうか。

　2020年8月1日に全国で放送が始まったトヨタ「カローラツーリング」のCMをはじめ、これまで多くの自動車のCMのロケ地に使われてきたのは、2000年11月に開通した山口県下関市（開通時は山口県豊浦郡豊北町）にある「角島大橋」です。

　映画「四日間の奇蹟」（2005年）やドラマ「HERO特別編」（2006年）のロケ地として使われて以降、角島大橋は一躍有名になり、クルマのCMに使われる機会も増えました。

　山口県は本州の最西端エリアにあることから夕日の美しさも素晴らしく、白い砂浜と透明度抜群のエメラルドグリーンの海が絶景を作り出しています。

　これまで角島大橋で撮影されたクルマは、レクサス「GS450h」、トヨタ「アリオン」「カローラツーリング」、日産「デイズ」「ノート」、ホンダ「NSX」、スズキ「スイフト」、三菱「ギャランフォルティス」に加え、カー用品においてもコムテックのドライブレコーダー「HDR-352GHP」など多岐に渡ります。

　筆者（加藤久美子）は山口県下関市の出身で、角島大橋の近くに住んでいる友人も何人かいます。

　角島大橋でとあるクルマの撮影を目撃した友人は「公開前の新型車だったようで、角島から橋を渡って国道191号線まで戻ってくるとすぐにシートをかぶせたりして外から見えないようにしていた」と教えてくれました。

　角島大橋のあるエリアは本州の最西端で夕日がとても美しい場所なのですが、夕日をバックにしたCM映像を見ることはほとんどありません。これはなぜでしょうか。

　下関市観光政策課に聞くと、「角島大橋は地域住民のための生活道路で、橋を利用して通勤、通学している島民も少なくありません。それで、朝夕の通勤通学時間に橋を通行止めにするような撮影は避けていただくようお願いしています」

　角島大橋だけではなく、山口県にはほかにもクルマのCM撮影によく使われる場所があります。

　近年とくに多いのが山口県美祢市にある秋吉台カルストロードで、ラリーに挑戦する若者を描いた映画「OVER DRIVE」（2018年）にも登場しました。

　日本最大のカルスト台地である秋吉台を縦貫する道は緩やかな起伏のあるカーブが連続しており、異世界感たっぷりの風景のなかでドライブを楽しむことができます。

　秋吉台カルストロードでは、ダイハツ「キャスト」やホンダ「NSX」「N-BOX」、日産「デイズ」「ノートe-POWER」などのCM撮影がおこなわれ、角島大橋とセットで使用される場合が多いようです。

　なお、2020年7月2日にも新型自動車の撮影がおこなわれました。山口県美祢市は撮影に際して、午前2時から午前7時に、旧管理事務所前から大正洞前（秋吉台カルスト展望台・科学博物館前は通行可能）を通行止めすると告知していました（告知では2020年7月1日の予定でしたが雨天のため7月2日に順延）。

　地元の人に聞いたところ、実際の撮影は明け方におこなわれたそうで、通行止めの影響はほとんどなかったようです。車種は明らかにされていませんが、どんなクルマのCMが流れるのか楽しみです。