車外放出「ありえない」 警察も車も騙すシートベルトの「たすき着用」 誤った着用取り締まれない訳
正しい状態でシートベルトを使用すれば、車外への放出は「まずありえない」
適切な状態でシートに座り、シートベルトを肩と腰骨の3点を通して正しく着用していれば、横転するような激しい事故でも車外に放出されることはまずありえません。
今回、シートベルトメーカー、自動車メーカー、イタルダ(交通事故総合分析センター)、交通事故鑑定の専門家それぞれに聞いてみたところ、全員一致で「正しい状態で着席し、正しい状態でシートベルトを締めていれば、クルマが横転したり落下したりするような激烈な事故でも、車外に放出されることはまずありません」という答えが得られました。

しかし、シートの背もたれを過度に寝かせていたり、肩ベルトが上半身から離れているなどの間違った着用をしていると、事故で衝撃を受けた際、サブマリン現象(体が滑り落ちてシートベルトから抜けて足もとに落ちる)が発生して、命に係わる状態になる危険性も十分にあります。
イタルダの調査結果によると、シートベルト非着用の乗員では、運転者、同乗者とも車外放出の発生率は13%以上と高くなっています。一方、シートベルト着用者では車外放出の発生率は運転席で1%(1例)、同乗者ではゼロです。
横転する、しないに関わらず、シートベルトを装着していた同乗者が車外放出された例はゼロ件となっています。
また、危険な使用例として、クリップなどでベルトを緩めて使っている人がプロドライバーのなかにもいますが、こちらも当然ですが本来の拘束力は発揮できません。
危険な状態でシートベルトを使用していると、事故の衝撃を受けた際、シートベルトから抜け出した体が凶器となって同じクルマの乗員に致命傷を負わせたり、車外に放り出された体がほかの事故を誘発する危険性もあります。
さらにシートベルトの拘束力が発揮されない状態では、エアバッグの効果も発揮されないだけでなく、エアバッグにより怪我を負うケースも考えられるのです。
シートベルトの正しい着用は自分のためだけではなく、同乗している大切な家族や友人、お客さんの命をも守ることになります。クルマに乗る人は全員、シートベルトを正しく着用してください。
Writer: 加藤久美子
山口県生まれ。学生時代は某トヨタディーラーで納車引取のバイトに明け暮れ運転技術と洗車技術を磨く。日刊自動車新聞社に入社後は自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。公認チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。











