世界で1台!? トヨタの激レア車「RAV4リムジン」に会うためだけの旅
2019年4月の発売以来、瞬く間に人気SUVとなったトヨタ「RAV4」ですが、その生産を担当する高岡工場では、世界に1台しか存在しない「RAV4リムジン」というモデルがあるといいます。どのようなものなのか、自動車評論家(カーライフ・エッセイスト)の吉田由美さんが高岡工場に潜入取材してきました。
世界に1台しかない長いRAV4とはどのようなモデルなの?
2019年秋、富士スピードウェイで開催された「2019-2020日本カー・オブ・ザ・イヤー」の選考試乗会会場で、本命候補のひとつだったトヨタ「RAV4」の全長を長くしたバージョン、「RAV4リムジン」を初めて目にして以来、このクルマが作られたトヨタの高岡工場取材を熱望。
2020年3月に願いが叶うことになったのですが、直前に高岡工場内から新型コロナウイルスの感染者が出てしまい、取材は延期に。あれから4か月。やっと念願が叶いました。
久しぶりの新幹線。久しぶりの遠出の取材に気分はまるで遠足。名古屋駅まで新幹線で、愛知県豊田市にある高岡工場まではレンタカーで向かいます。
しかしそこですでにアクシデント発生。トヨタに行くので「ヴィッツ」を予約したはずなのに、「アップグレードしておきました」と、なぜかホンダ「フィット」になってしまったという驚きのサービス。通常ならばアップグレードされたら嬉しいのですが、今回ばかりはトヨタに行くのにホンダ車。なんとなく気まずい。
名古屋に到着後、移動の時間を考慮しても待ち合わせ時間まで少し余裕があったので、周辺で人気の「山cafe」へ。雨漏りの洗礼を受けましたが、名物の熱々オムライスをいただき大満足。
そしていざ、高岡工場へ。
まずは高岡工場の概要説明と「RAV4リムジン」の事前説明。このクルマの正式名称は「高岡RAV4リムジン」だそうです。
高岡工場は1966年操業開始。トヨタの元町工場に次ぐ2番目に歴史のある工場。敷地面積は110万平方メートル。「ナゴヤドーム」の23倍という説明を受けましたが、東京ならば東京ドームとなるところが、さすが愛知県です。
高岡工場では、「カローラ」や「プリウスα」、「ハリアー」、そしてRAV4を年間約42万台生産しています。
そして高岡RAV4リムジンのお話。工場の生産部の有志が延べ200名、プロジェクトに参加して作られました。
生産調査部主査の男沢祐二さんは、次のように話してくれました。
「皆で悩みながら苦労しながら今回、このクルマを作った理由は、まずはチャレンジしたかった。工場はクルマを生産してお客さまに届ける、みんなが持っている技能や技術でクルマが作れるのか。
次に可能性の追求です。製造が企画やデザインなどで提案できることは無いのか。作るのも大切な仕事ですが、いろいろな可能性の追求のひとつとして、いろんな提案ができればと思いました。
そして、人材育成『モノ作りは人づくり』について豊田社長もいっている改善の源で人を育てる。人材は重要ですので。
これらを踏まえて、プレス、ボディ、塗装、組み立て、品質管理、それぞれの部署が一体となって作った『高岡RAV4リムジン』です」
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ほかの話もありましたが、全部署が関われるということで今回はリムジンになったそうです。こういうクルマを作る場合、色だけ変えるということはありますが、ここまで手を加えることはあまりありません。
また、ボディ担当の城島さんは、次のように説明してくれました。
「通常のRAV4と比べて全長で80cm追加されて長くなっています。前のドアと後ろのドアの間の部分です。そのため、エクステリアのベルトラインが不自然ですが、ここがもっとも苦労した部分です。
RAV4の場合はフロントからリアに掛けてベルトラインが上がっていますが、それだとクルマとして成り立たなくなります。
これは図面もなく、手作業で作りました。かなり補強を入れているので、お相撲さんが乗っても壊れないですよ。
フロアに補強材を入れて、ボディが完成したときにリフトで上げ、壊れないことはテスト済みです。実は社内の駅伝大会で走らせるということで、走行にも耐えられるように作りました。フロントマスクはそのままですが、ボディに書かれた『RAV4 TAKAOKA』の文字は彫ったものです。これはプレスが担当しています」
そしてプレス担当の沢田さんは次のように話します。
「加工機にパネルを置いて、三次元測定機で測定し、はじめてパネルを削ってみました。先端に先の尖った小さなドリルを取り付け、回転させて作っています。
時間は結構かかりますが、我ながら良くできていると思います。1mmの鉄板の0.3mm削っています。塗装する前にも削ってみましたが、いろいろ試行錯誤し、塗装した後に削ったほうが綺麗にできることが分かりました。深さもいろいろチャレンジしましたが、パネルが動くのでとくにサイドは削るのに苦労しました」
同じくプレス担当の溝口さんは、次のように説明しています。
「キャラクターラインは、これまで一部分だけを追加で加工するということが無かったので初めてのチャレンジでした。問題は作ることより、どうやって押さえつけるか。強く押さえると変形の可能性もあったので。追加した真ん中の部分は、作ったものの、押さえつけるのが一番苦労した点です」
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