「いつかはクラウン」現代ニーズ合わず? アルファード&ハリアーが取って代わる65年目の現状

トヨタを代表する「クラウン」は、2020年で誕生65周年を迎えました。2018年6月に15代目へとフルモデルチェンジした現行モデルは、発売当初こそ爆発的に売れましたが、最近では落ち込み気味だといいます。トヨタが誇るクラウンに何があったのでしょうか。

今年で誕生65周年! でも販売で苦戦するワケとは

 トヨタが誇るセダンとして長きに渡り愛されている「クラウン」ですが、直近では苦しい販売状況だといいます。かつて「いつかはクラウン」とまでいわれた日本を代表するセダンに何が起こっているのでしょうか。

誕生65年目を迎える15代目のトヨタ「クラウン」
誕生65年目を迎える15代目のトヨタ「クラウン」

 1955年に登場した初代クラウンは、トヨタが独自で開発した日本初の本格的乗用車として誕生し、トヨタの乗用車基準となる仕様を確立すると同時に国産乗用車にも大きな影響を及ぼしたクルマです。

 その後は、国産メーカーからさまざまなセダンが登場するほか、海外ブランドの日本進出など、クラウンと同等もしくはそれ以上の高級セダンが乱立。また、同時に国産セダンもグローバル化とともにモデルチェンジの度にサイズが大きくなっていきました。

 しかし、クラウンは日本市場専用の高級セダンとして歩み、2018年6月に15代目へとフルモデルチェンジした現行モデルでも、日本の道路事情を考慮した全幅1800mmを維持するなど伝統を守り抜いています。

 一方で、現行クラウンは日本市場専用でもガラパゴス化することなく、車載通信機DCMを全車に標準装備し、トヨタにおける初代「コネクティッドカー」という形で先進性をアピール。

 また、ドイツのニュルブルクリンクサーキットを走り込んで開発したサスペンションやボディ剛性など質の高い走りを実現したことで、トヨタ自身が「TOYOTA史上、最高に楽しいクルマ」と謳うほどでした。

 現行クラウンについて、チーフエンジニアの秋山晃氏は、次のように説明しています。

「15代目のクラウンで、最初にお伝えしなければならないのは、クラウンをひとつの方向に絞ったということです。

 これまではショーファー向けの『マジェスタ』や法人ユースの『ロイヤル』、パーソナル向けの『アスリート』と、価値観の異なるバリエーションを揃えてまいりました。

 しかし、これ自体がクラウンの保守的なイメージをぬぐえない一因であると考え、今回は『次世代リーダーを魅了する究極の1台』という方向に凝縮、デザインや走り、安全性能の進化はもちろんのこと、今回はクルマの機能を拡張するコネクティッド技術を採用し、『初代コネクティッドカー』として生まれ変わりました」

※ ※ ※

 その結果、現行クラウンは2018年6月からの発売1か月後の受注台数は3万台となり、当初の販売目標4500台の約7倍を販売。同年12月まで月間平均6000台を推移していました。

 2019年に入ると、新車効果は薄れつつあるなかでも同年秋頃までは月間平均3000台を維持して販売していましたが、それ以降は月間2000台を下回るようになり、2020年上半期(1月から6月)では新型コロナウイルスの影響もあり、低迷したままです。

 現行クラウンに販売動向について、首都圏の販売店スタッフは次のように話します。

「最近では、これまでクラウンに乗られていた法人のお客さまが『アルファード』に流れているケースが見られます。

 セダンよりもミニバンのほうが使い勝手が良いという面や、後席での移動時における室内空間のゆとりやラグジュアリーさなどにより、アルファードに人気が集まっているようです。

 また、直近では近年のSUVブームもあり新型『ハリアー』に注目が集まっていますので、クラウンはますます厳しくなるかもしれません」

 一方で、地方の販売店スタッフは次のように話します。

「現在もクラウンは定期的に売れております。会社の経営者や地主のお客さまなど歴代クラウンからお乗り換えされる場合や、輸入車から戻ってこられることもあり、いまでも『いつかはクラウン』というブランドは健在なように感じます」

※ ※ ※

 このように、長い歴史のなかでも伝統を守り抜いてきたクラウンですが、ミニバンやSUV人気というトレンドと、セダン自体の市場が縮小傾向にあることにより、かつてほどの勢いは保てないようです。

 しかし、そのセダン市場においては、ほかの国産セダンよりは売れ続けているのも事実といえ、今後のクラウンは、主役ではなく影からトヨタを支える存在になりつつあるのかもしれません。

【画像】渋すぎる!65周年を記念して販売されたクラウンの特別仕様車!(24枚)

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