なぜトヨタはスポーツカーを復活させた? 86/スープラ 廃止から復活の理由

スポーツカーをビジネスに! 豊田社長の信念とは

 実は86の弟分となるコンパクトFRスポーツ「S-FR」の開発が進められていましたが、開発中止の理由のひとつに「ビジネスとして成立しないため」があったそうです。その後、ダイハツとの共同開発で「GRコペン」が登場しています。

 恐らくトヨタほどの規模ならば単独でスポーツカー開発をおこなう費用を捻出するのは容易いことだったと思います。しかし、世に出せてもビジネスとして成り立たなければ、いずれ生産終了となります。

 つまり、社会情勢や景気に左右されないスポーツカービジネスをおこなうためには、今までとは違ったアプローチが必要だったのです。一度消滅させてしまったスポーツカーを復活させることがいかに大変であるかを、身を持って経験してきたトヨタだからこそのアイデアでした。

GRモデル第一弾として復活した「GRスープラ」
GRモデル第一弾として復活した「GRスープラ」

 その一方、2020年夏頃に発売予定の「GRヤリス」はトヨタ独自で開発されたモデルです。「市場規模も小さいスポーツカーを継続させる」という意味では86/スープラと志は同じです。

 しかし、GRヤリスには1999年にセリカGT-FOURの生産終了以降、失っていたスポーツ4WD開発の技術/技能を取り戻すというミッションもあり、そのためには自分達の手を使ってトライする必要があったといいます。

 ただ、そこまでしてスポーツカーを作る理由はどこにあるのでしょうか。GRカンパニーの友山茂樹プレジデントはこのように語っています。

「スポーツカーはたくさん売れる物ではありません。多品種/少量生産はトヨタがもっとも苦手とする部分です。『いいスポーツカーを開発し、適切な価格で売れる力を持つ事』、実はそれができる自動車メーカーは、モノ作りの力がシッカリあると思っています」

※ ※ ※

 筆者(山本シンヤ)は以前、豊田章男社長に自身を育てた相棒であり同士である先代スープラ(A80型)と新型スープラ(A90型)に共通する味を聞いたときのことを思い出しました。

「スープラはBMWとの協力で生まれたモデル、さらに弟分の86はスバルとの協力で生まれたモデルになります。どちらも“社長”としてトヨタの工数をスポーツカーに割ることができず、結果としてこのようなクルマになりましたが、スープラ/86も『トヨタの味』になっており、そこは素直に嬉しい。つまり、成瀬さんが育てたメンバーが今もその味を受け継いでいるのです」

「ガソリン臭くて、燃費が悪くて、音がいっぱい出る……そんな野性味あふれたクルマが好き」と語る豊田社長だからこそ、「スポーツカーを継続させる」ことへのこだわりこそが、現在のトヨタのスポーツカーラインナップに表れているのです。

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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6件のコメント

  1. でもスープラは中身ほとんどZ4だよね。乗り心地やエンジン特性にスープラらしさを出すんだったら、せめてスタートアップ音くらいBMWのじゃなくオリジナルにすべき。

  2. モリゾーの次の社長になってもスポーツカーを維持出来るかだと思う。
    出来ないなら、単純に今はモリゾーのオモチャを自前で開発出来ないから他社から買って、少し弄って「共同開発です!」って言っているだけ。

    スープラが「基本以外は独自開発」ならなんでウインカーレバー左なんだよ。
    おかげでZ4にはあるのにスープラにはMT無いし。

    • MTはスープラには無用の長物、ウインカーも文句言う人間が対応すれば良いだけのこと。
      バカにはそれがわからないのだ。

  3. 私スープラ、妻ラパン、息子86
    我が家のスポーツカー率66,6%

  4. 自前なのはないけどな。今度のGRヤリスくらいか。

  5. 金銭面の問題でスープラの皮を作ったZ4を作る羽目になったのだから、「トヨタはスポーツカーを作れないので他社に丸投げした」も間違ってはいない。

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