伝統と革新のフレンチスポーツ アルピーヌ「A110リネージ」とパワフルな「A110S」はどちらを選ぶべきなのか
2018年6月に日本でも登場したアルピーヌのスポーツモデル、A110。軽量な「A110ピュア」と豪華装備満載の「A110リネージ」、そしてよりハイパワーで足回りを強化した「A110S」と3種のモデルを展開しているが、今回A110リネージに試乗し、110Sとの違いを考えてみた。
世界中で好調なスポーツブランド「アルピーヌ」
アルピーヌが世界的に好調だという。ルノーグループの2019年世界販売を見てみると、アルピーヌの実績は、2018年の2094台よりもおよそ2.3倍多い4835台となっている。
ただしこれは、アルピーヌ人気が2019年になって爆発的に増えた、というよりも、アルピーヌモデルを生産するフランス・ディエップ工場の体制が整ってきたことを意味している。一時期、世界中で3000台以上のバックオーダーを抱えていたが、それもようやく解消されつつあるようだ。
2020年は世界的なコロナ禍のためにまったく先が見通せないが、それでもアルピーヌはすでに多くのファンの心を掴んでいる。
アルピーヌは2016年に復活、2017年よりA110が登場した新しいブランドだ。
日本では2018年8月にA110の限定モデル「プルミエール・エディション」が上陸、同年11月に「A110ピュア」「A110リネージ」というカタログモデルが登場している。
さらに2019年11月には、新型の高性能モデル「A110S」を発表、2020年2月からすでに納車が始まっている。
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今回試乗したのは、A110リネージの左ハンドル仕様。A110リネージはボディカラーにより価格が異なり、試乗車のグリトネールM(メタリック)は844万4000円、ブルーアルピーヌMは856万6000円となる。
A110の「ピュア」と「リネージ」というグレードの大きな違いは、車両重量が1110kgのピュアに対し、リネージは1130kgと、20kgの差があるという点。
この重量差は、ピュアにはSabelt製の軽量モノコックバケットシートが装備されるのに対し、リネージはシートリフター/リクライニングやシートヒーターが付いたSabelt製のスポーツシートになること、さらにオーディオがピュアはFOCAL製の4スピーカーなのに対し、リネージはそれにプラスしてサブウーファーが標準装備されることに由来する。
ちなみにA110ピュアは右ハンドルのみで、ボディカラーがブラングラシエ(注文生産)だと804万6000円、ブランイリゼMとブルーアルピーヌMだと826万円だ。
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全国14店舗のアルピーヌディーラーを立ち上げ、日本での人気も上々のこのモデルでも、2019年の販売台数は約350台と、まだ絶対的な台数は少ない。個人的には一般道でA110に遭遇した経験はいままで1度しかないためか、いまだに新鮮に映るし、都会の道を走行している際、やはり街行く人々の視線も感じる。
全長4205mm×全幅1800mm×全高1250mmと、低くワイドでコンパクトなボディ。短めのボンネットフードに流麗なリアセクション。ボディ中央にドライバーを配置する、まさに軽量ミッドシップスポーツモデルを象徴するスタイリングを持つ。
イマ風でありながらも、フロントの4つの独立した丸目LEDヘッドランプやボンネット中央に走るスパイン(脊柱)など、1962年に登場したオリジナルの「アルピーヌA110」のデザインアイコンが散りばめられることで、クラシカルな雰囲気をも醸し出しているのも特徴だ。新しく復活したブランドながら、往年のストーリーを纏うことができる。それこそが、このアルピーヌブランドの強みといえるだろう。
包まれ感のあるコックピットは、目の前にあるTFT液晶のメーターやシフトセレクターボタンなど非常に現代的ながら、カーボンやアルミ、ブラウンレザーを巧みに配置して、シックなインテリアに仕上がっている。ここもエクステリア同様、伝統と革新がバランス良く巧みに配置されているのに感心する。
助手席側のコンソールにあるスロットにカードキーを挿し込み、センターコンソールのスタートボタンを押すと背後のエンジンが目覚める。このカードキーが、「メガーヌ」など他のルノー車と同じデザイン/質感なところはちょっと興ざめ。もう少しオーナーの所有欲をくすぐる鍵なら嬉しいのに。
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