伝統と革新のフレンチスポーツ アルピーヌ「A110リネージ」とパワフルな「A110S」はどちらを選ぶべきなのか

意のままのハンドリングで爽快なドライビング

 搭載するエンジンは、1.8リッター直列4気筒ターボの「M5P」型になる。

 これはメガーヌR.S.(ルノー・スポール)に搭載しているエンジンと基本的に同型だが、出力・トルクは252ps・320Nmと抑えられている。ちなみにメガーヌR.S.は279ps・390Nm、メガーヌR.S.トロフィーは300ps・400Nm、そして新たに登場したA110Sは、292ps・320Nmというスペックとなる。

 組み合わされるトランスミッションは7速EDC(DCT)。ラテン系のクルマらしく、パドルシフトはステアリングコラムに直付けされた大型パドルを採用する。

アルピーヌ「A110リネージ」
アルピーヌ「A110リネージ」

「D」ボタンを押し、クルマを発進する。

 アイポイントは低く、這うようなスタイリングを持つこのようなスポーツモデルの場合、往々にして乗り心地は二の次になりがちなのだが、A110は荒れた路面の街乗り時でも、一切我慢が必要ない。足はよく動き、細かいギャップをいなしていく。とかくスポーツカーにありがちな、視点の上下動がないために、長い時間運転していても疲れが少なく感じる。

 A110の本領を発揮するのは、やはりワインディング。ある程度のロールを許容しながら、それでも4輪の接地感を常に保ったまま、コーナーをヒラリヒラリとクリアしていく。

 ガチッと踏ん張るドイツ車的スポーティさではなく、あくまでもボディの軽さをベースにした往年のフレンチスポーツの味。これはルノー・スポール(R.S.)モデルの味ともまた異なるもので、なんというのか、そのスポーティさのなかに艶がある。

 コーナー手前でブレーキングをおこないつつ、左手側の大型パドルを引きシフトダウン。軽やかにノーズが入っていき容易くクリッピングポイントに付く。そこからアクセルペダルを撫でるように踏み込んでいくと、お尻のあたりがムズムズするような、ミッドシップ(MR)レイアウトのモデルらしい感覚も味わえる。

 いや、これはテールハッピーという印象ではなく、ある程度のリアの滑りを許容してくれるMRらしい味。思い出したが、この感覚はポルシェの初代「ケイマン」を彷彿とさせるものだ。現行型「718ケイマン」では感じられないので、ある意味どこか懐かしい感覚でもある。

 252馬力/320Nmのエンジンは、スペック的にはそれほどパワフルというものではないが、このA110の軽さとマッチしていると思う。もちろん追い込んでいけばそれに応えてくれるポテンシャルはあるのだが、シャカリキになって運転しなくても、A110は十分にそのスポーツ性を楽しめる。こういった味付けはフランス人の得意とするところだろう。

 日常の街乗りでも我慢することなく、いざワインディングに持ち出せば意のままのハンドリングで爽快なドライビングを可能とするA110。

 もちろん2シーターモデルだから、フロントボンネット下とリアに荷室スペースがあるとはいえ、2人乗車しながらキャディバッグは積載できないし、ポルシェ「911カレラ」のように、手持ちのブリーフケースをリアシートにさっと置いて2人でドライブデート、的な芸当もできない。ちょっと疲れたからシートバックを倒して小休憩、なんてことも難しい。

 クルマにいろいろな要素を求める人は、それこそミニバンでも買えばすむ話だろう。2人でゴルフに行くなら、キャディバッグは先に送ってしまえばいい。休憩するなら、クルマを降りて喫茶店でコーヒーでも飲めばいい。

 そういう意味では、A110は相当贅沢な1台といえるのではないだろうか。

※ ※ ※

 先日、アルピーヌ「A110S」の試乗会が筑波サーキットで開催された。サーキットというクローズドのフィールドで考えると、40馬力アップしてシャシも固められているA110Sのほうが走りやすく、そして速いのは確かだった。タイムアタックを考えると、ノーマルエンジンのA110は、ちょっと物足りなく感じたところもある。

 ただ、ある程度のロールを許容しながら、ヒラヒラと軽やかに、そしてリズミカルにワインディングのコーナーをクリアしていく感覚は、こちらA110リネージに分がある。A110Sをまだサーキット以外で試してはいないが、A110と比べたら街乗りでの乗り心地は硬めに感じるだろう。

 どちらにせよA110とA110S、いざ購入しようとなれば相当悩ましい選択になるのだが、どちらを選んでも十分に満足感は得られるだろう。これはアルピーヌというブランドの世界観が、すでに確立されているという何よりの証拠でもある。

アルピーヌ「A110リネージ」
アルピーヌ「A110リネージ」

ALPINE A110 LINEAGE
・車両価格:844万4000円
・全長:4205mm
・全幅:1800mm
・全高:1250mm
・ホイールベース:2420mm
・トレッド前/後:1555mm/1550mm
・車両重量:1130kg
・エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ(M5P)
・排気量:1798cc
・駆動方式:MR
・変速機:7速DCT
・最高出力:252馬力/6000rpm
・最大トルク:320Nm/2000−5000rpm
・サスペンション前/後:ダブルウイッシュボーン/ダブルウイッシュボーン
・ブレーキ前/後:Vディスク/Vディスク
・タイヤ:前205/40R18、後235/40R18
・0−100km/h加速:4.5秒
・最高速度:250km/h
・JC08モード燃費:14.1km/L

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