なぜ日本市場は後回し? スバルが新型「レガシィ」を北米優先で発売するのか
初代「レガシィ」から進化し続けたスバルのGT思想とは?
このような状況のなか、歴代レガシィと現行レヴォーグを改めて試乗する報道試乗会がスバルによって開催されました。通常の報道試乗会は新型車が中心で、過去のクルマを試乗するのは珍しいことです。
主催したスバルによると、「2019年は初代レガシィの誕生から数えて30周年です。スバルのGT思想(グランドツーリング思想/長距離を快適に移動するクルマ造りの考え方)の進化を改めて体感してもらうために、このような機会を用意しました」といいます。
個人的には「スバルのGT思想の進化をアピールするなら、現行レガシィも北米と同じ新型にフルモデルチェンジするべき」と思いましたが、初代「レガシィツーリングワゴンGTタイプS2(1993年式)」に試乗すると、意外に良くできたクルマであることがあらためて分かりました。
この初代レガシィは、スバルが中古車を購入して、その価格以上の金額を投入してレストアしただけあって、ボディの疲労はほとんど感じません。乗り心地にも粗さはありませんでした。低速では硬めで速度が高まると快適になる感覚は、現在のスバル車とも共通しています。
操舵感は、ステアリングホイールを回し始めたときの反応が現行スバル車に比べると鈍めで、車線変更をするときはボディの重さを感じますが、それでも高速道路や峠道を不安なく走れました。
また、設計の古いターボ車の場合、アクセルペダルを踏み込んだ後に若干の時間を経過してから動力性能が高まる傾向が見られます。
試乗した初代レガシィは、このターボのクセも上手に抑えていました。排気量が2.5リッター前後の自然吸気エンジンに近い感覚で運転できました。このようにレガシィは、初代モデルから、スバルのGT思想に基づいて快適な乗り心地と余裕のある走行性能を兼ね備えていたわけです。
さらに4代目「レガシィツーリングワゴン 2.0iアドバンテージライン(2008年式)」にも試乗しました。この4代目から、レガシィツーリングワゴンとB4のボディサイズが拡大されて、3ナンバー車になっています。
4代目レガシィの登場は2003年なので、実質的に16年前のクルマですが、違和感なく運転できました。初代レガシィで感じた操舵したときの反応の鈍さも解消されています。
また、取りまわし性は現在のクルマよりも優れています。3ナンバー車といっても全幅は1730mmに収まり、水平基調のボディによって、前後左右ともに視界が良好です。混雑した街中や駐車場では、現行「インプレッサスポーツ」よりも運転しやすいと感じました。
このほか4代目レガシィでは、横滑り防止装置やカーテンエアバッグも採用され、安全性を高めています。いまでは進化したアイサイトも含めて、優れた安全性はスバル車を支える大切な柱になっています。
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レガシィツーリングワゴンのDNAを受け継いだレヴォーグは、2019年10月24日から一般公開される東京モーターショー2019で、新型モデルのプロトタイプが世界初公開されます。
レヴォーグは、現在では欧州やオーストラリアでも販売されていますが、2014年の発売当初は国内専用車として日本市場向けに開発されたモデルでした。
いまでもレヴォーグは国内市場を重視し、スバルが大事に育てているモデルといえるでしょう。そのため、新型モデルの世界初公開も日本でおこなわれるというわけです。
2020年に登場するといわれている新型レヴォーグは、新しいプラットフォームや新エンジンが採用され、性能が大きく向上するようです。新型レヴォーグがどのようなモデルに進化するのか、期待したいです。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
あのスキンヘッドのアメリカ俳優がCM出演した頃のレガシィーとは別物だな!
水平対向のヘッドの低さを利用してエンジンルームにスペアタイヤを収納してたスバル1000が懐かしい