便利なだけではない! クルマの「オートライト」が義務化される理由とは
2020年春から義務化される「オートライト」機能。既に新型車の多くには採用されていますが、義務化されることによってなにが変わるのでしょうか。
今後、義務化される「オートライト機能」とは
最近のクルマに備わるヘッドライトには、暗くなると自動で点灯する「オートライト機能」が搭載されています。便利で安全性の高いオートライト機能は、今後義務化される装備のひとつです。
オートライトが義務化されることによって、いったいなにが変わるのでしょうか。
オートライト機能とは、クルマのセンサーが周囲の明るさを検知して、ヘッドライトを自動で点灯/消灯をしてくれる機能で、ライトの付け忘れを防ぐとともに「薄暮時」(はくぼどき)の事故を減らすことを目的としています。
2016年10月に、道路運送車両の保安基準が改正され「オートライト機能」の搭載義務化が決まりました。適用時期はもう少し先で、新型車については2020年4月以降に販売されるクルマ、継続生産車については2021年10月以降のクルマが対象です。
そんななか、2019年5月24日に発売されたマツダの新型「マツダ3」には、ヘッドライトスイッチの操作方法に関して気になる部分がありました。
マツダ3のヘッドライトスイッチが備わる場所は、ウインカーレバーの先端です。オート(AUTO)を中心に下に回せばオフに、上に回すとスモールランプ(ポジションランプ)、さらに奥まで回せばロービームというレイアウトになっています。
そのレイアウト自体は、とくに変わったものではないのですが、特徴的なのは操作後の動き。オフやスモールランプに設定すると、操作後は自動的にオートへ戻ってしまうのです。
オートとは、先述したオートライトのことで、周囲が暗くなると自動的にヘッドライトを点灯する仕組みなのですが、どうして操作後にオートへと自動で戻ってしまうのでしょうか。
マツダ3の開発者に尋ねてみたところ「もうすぐ始まるオートライトの義務化に対応しています」という答えが返ってきました。
しかし、新しい基準では単にオートライトを装備すればいいという話ではありません。オートライトの義務化と同時に、暗くなった際のヘッドライト(スモールランプではない)の自動点灯機能の採用義務も生じます。
クルマが走り始めると「まだそれほど暗くならないからスモールランプでいいや」というドライバー自身の判断は許されず、一定の暗さ(1000ルクスで街路灯が点くのとほぼ同じ程度)になったら自動的にヘッドライトをつけなければならないのです。
その機構をクルマに組み込んで機能させる必要があるので、ドライバーが任意で一時的にオフ(消灯)やスモールランプにできても、クルマが走り始めるのに備えてオートライトをデフォルト(標準設定)の状態にしなければなりません。
そこで、スモールライトやオフにドライバーが任意で操作しても、操作後(スイッチから手を離すと)自動的にオートへと戻るスイッチが組み込まれているというわけです。
ヘッドライトの点灯について、自車の存在を知らせる大切な役割もありますが、別の角度からの興味深いデータがあります。
自動車技術会の論文のなかに引用されているデータですが、歩行者死亡事故について下記の記載があります。
「昼間は自動車から見て『右から左への横断』と『左から右への横断』の割合がほぼ同等であるのに対して、夜は『右から左への横断』の割合が多くなり約70%を占める」
この論文では対向車のヘッドライトのグレア(蒸発現象)によるものであると推定しています。
上記引用文のとおり、ヘッドライト点灯が原因の一つとなって、歩行者の認知が遅れ、人命が奪われているという事実もあります。
ヘッドライト点灯が交通安全の万能薬ではありません。
横断歩道前での停車時など、状況に応じて消灯することも事故を減らしていくことに寄与すると思います。