便利なだけではない! クルマの「オートライト」が義務化される理由とは
オートライト機能、一択にならない理由とは
一方で、自動的に点灯/消灯してくれるオートだけにしない理由はなんなのでしょうか。
それは、消したい状況ではヘッドライトを消せるようにするためです。たとえば夜間の停車中に、走行中と区別するなどの理由でヘッドライトを消してスモールランプにするシーンがあります。
そんなときに、オートしか選べないとヘッドライトを消すことができませんが、スモールランプのスイッチを設けることでヘッドライトを消すことができます。また同様に、オフにすればすべてのライトを消すことも可能です。
ただし、一旦スモールランプやオフにしても、暗い状況でクルマが走り出すとオートへと復帰してヘッドライトが点灯します。走行中にヘッドライトをオフにすることはできません。それが2020年からはじまるオートライト義務化のポイントでもあるのです。
今後、発表される新型車の多くは、マツダ3のようなスイッチが多く採用されていくことになるでしょう。また、輸入車などは回転式のスイッチではなくプッシュボタン式スイッチとして、ドライバーの操作後は自動的にオート状態に戻るタイプが増えていくかもしれません。
ちなみに、メルセデス・ベンツにはヘッドライトのオフスイッチがありません。理由は夜間でも全てのライトを消したまま走行するのを防ぐためですが、日本車でも欧州向けなどは同様にオフスイッチのない車両も存在します。
ヘッドライトを点灯して自分の存在を知らせることは、事故防止に有効です。警察庁は、2012年から2016年の5年間における死亡事故発生状況を分析しました。
結果、「日没時刻と重なる17時台から19時台に多く発生している」、「薄暮時間帯には、自動車と歩行者が衝突する事故が最も多く発生しており、なかでも65歳以上の高齢歩行者が死亡する事故が多くなっている」などが明らかとなりました。
オートライト機能は、トンネルや暗がりの山道、高架下など昼夜関係なく作動します。そのため、運転手による操作の手間が省けることから、運転に集中することができ事故やトラブルなどの回避に繋がるといえます。
【了】
Writer: 工藤貴宏
1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。執筆で心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はマツダ CX-60/ホンダ S660。
ヘッドライトの点灯について、自車の存在を知らせる大切な役割もありますが、別の角度からの興味深いデータがあります。
自動車技術会の論文のなかに引用されているデータですが、歩行者死亡事故について下記の記載があります。
「昼間は自動車から見て『右から左への横断』と『左から右への横断』の割合がほぼ同等であるのに対して、夜は『右から左への横断』の割合が多くなり約70%を占める」
この論文では対向車のヘッドライトのグレア(蒸発現象)によるものであると推定しています。
上記引用文のとおり、ヘッドライト点灯が原因の一つとなって、歩行者の認知が遅れ、人命が奪われているという事実もあります。
ヘッドライト点灯が交通安全の万能薬ではありません。
横断歩道前での停車時など、状況に応じて消灯することも事故を減らしていくことに寄与すると思います。