“いまは脇役”トヨタ「マークX」販売終了か マークII後継で主柱を期待も時代の波に勝てず
マークXは2019年中に生産終了の可能性が高い
マークXのカタロググレードとGRスポーツは今でも購入可能ですが、販売店では「マークXは2019年中に生産を終える可能性が高い」といいます。
この背景にあるのは、2022年から2025年にかけて、トヨタの全店が全車を併売する体制に移行することです(東京都内はすでに全店が全車を扱っています)。
全店が全車を扱う時には、車種の数も絞ることになり、そこにマークXもリストラされる車種に含まれるわけです。
マークXはマークIIの後継となるために「オジサングルマ」のイメージも強いですが、やり方次第では魅力的なスポーティセダンに仕上がったと思います。ボディサイズが適度で、後輪駆動を採用しており、素性の良い運転感覚を備えていたからです。先に述べたGRスポーツやGRMNも、マークXの基本性能が優れているために成り立ちました。
過去を振り返れば、2004年にマークIIがマークXへ発展した時点で、売れ行きが下がり始めていました。
マークIIが全盛だった時代は、セダンが実用的な乗用車の基本形でしたが、1990年代にミニバンや背の高いコンパクトカーが普及を開始すると流れが変わります。セダンはミニバンなどに空間効率では対抗できず、売れ行きを下げていきます。
そこでセダンの価値が改めて問われました。セダンはミニバンに比べると背が低く、重心も下がり、後席とトランクスペースの間には隔壁があってボディ剛性を高めやすいです。
これらの要素から得られる走行安定性と乗り心地、つまり安全と快適がセダンの新しい価値です。そこに外観のカッコ良さ、運転の楽しさという付加価値も与えたのがマークXでした。
ミニバンでは得られないセダンのメリットを問い直すクルマ
このように考えると、マークXはマークIIの単なる後継車種ではありません。安全で快適、カッコ良くて運転が楽しいという、ミニバンでは得られないセダンのメリットを問い直すクルマでもありました。
レクサスには、ミドルサイズの後輪駆動セダンとして「IS」がありますから、マークXはそのトヨタブランド版として発展させると良かったでしょう。
「今では走行性能が進化したから、後輪駆動でも前輪駆動でも関係ない」という意見もありますが、運転感覚とか楽しさでは依然として違いがあります。
そして今のセダンは、感覚とか楽しさが重要なカテゴリーになりました。従ってマークXのような後輪駆動のセダンは、今後も求められるでしょう。
トヨタには、改めてチャレンジして欲しいものです。
【了】
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
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