これまでのホンダのハイブリッドとは一味ちがう! 新型「インサイト」はどう生まれ変わった?
これまでのホンダのハイブリッドとは一味違う滑らかな乗り味
さて、そんな新型インサイトに搭載されたパワートレーンは、2018年7月に登場したホンダ「クラリティPHV」に搭載された1.5リッター直列4気筒のアトキンソンサイクルエンジンをベースに、吸気・排気システムを専用設計。世界トップレベルの最大熱効率40.5%を発揮するエンジンに、2モーターハイブリッドとなる「SPORT HYBRID i-MMD」を組み合わせた最新式です。
走行状況やドライバーの意思を考慮して、EV走行、ハイブリッド走行、クラッチ直結によるエンジン走行を自在に使い分けて走ります。さらに、ハイブリッド走行中にもECON、SPORT、NORMALの3モードが選択できるようになっています。
走り始めると、まず感じるのは従来のホンダのハイブリッドとはひと味ちがう、驚くほどの静かさ。モーターのみで走るEVモードから、どこでエンジンが始動してハイブリッドモードに切り替わったのか、よくよく注意していないとわからないくらい、自然でシームレスなのです。
それは音だけでなく、切り替わったことによる回転数の上がり方の変化など、違和感が生じがちだった部分にまで、ひと筆描きでつながるような滑らかさがあります。
クルマとして求められる要素を丁寧に実現
また、直線はもちろんカーブでもしっかりとした手応えを感じるのに、低速で交差点を曲がる場面などではスーッと軽く操作できるステアリングや、硬すぎないのに沈みすぎない足まわりの加減など、常に丁寧で上質な挙動を感じながら走れることに感心しました。
SPORTモードを選択しても、いつものホンダ車らしい元気なエンジン音や、減速時のブリッピング音などの演出はなく、そこは少し寂しいと感じるユーザーもいるかもしれません。
ただ、シャキッと決まるレーンチェンジやピタリと張り付くように弧を描くコーナリングなど、スポーティに走ろうと思えばしっかりとそれに応えてくれるのも新型「インサイト」の懐深いところです。
乗り心地に関しても、走り始めは少し硬めかなと思いましたが、速度が上がるにつれてちょうどいいフラット感になっていきます。それは後席でも変わらず、とても落ち着いて乗れる心地よさがありました。
開発者によれば、ベースとなった「シビックセダン」が、もともと操安性と乗り心地のバランスに優れていたこと。そして重いものをタイヤとタイヤの間に設置できたことが、有利に働いたのだということでした。
街角に佇んでいるだけで、目を惹く存在感。乗る人全員が心地よく過ごせる、上質な空間。そして走るシーンに応じた最良の気持ちよさと効率の良さ。そうした、いつの時代もクルマが求め続けてきたことを、ひとつひとつ丁寧に実現してきたのが、この新型「インサイト」なのだと感じました。
「クルマって、いいものだな」と心から人を満足させることが、きっと3代目インサイトに課せられた使命なのでしょう。
【了】