日本の小型スポーツカーを牽引 ハチロクでもお馴染みトヨタ「レビン/トレノ」の軌跡
16バルブDOHCの4A-Gエンジン採用で、胸のすく高回転を味あわせてくれた「レビン/トレノ」
カローラとスプリンターのFRレイアウトシャーシに2T-G型DOHCエンジンを搭載したレビン/トレノですが、1983年(昭和58年)5月のカローラ/スプリンターのフルモデルチェンジにより、E80系のセダンと5ドアハッチバックはFFレイアウトに変更。四代目となるレビン/トレノには先代TE71型のシャーシを流用したFRレイアウトの2ドア、3ドアの2タイプが発売されました。
E70系までは2T-GEU型エンジンを搭載した3ドアハッチバックのみがレビン/トレノの名称を与えられていましたが、E80系では1.5リッターSOHCの3A-U型エンジン搭載の3ドアハッチバックモデルもレビン/トレノとなったことで、従来のようにDOHCエンジン搭載車を呼称で判別することができなくなります。
そのため、DOHCエンジン搭載車の車両型式のAE86型を「ハチロク」、SOHCエンジン搭載車のAE85型を「ハチゴー」と呼ぶようになりました。
外観面においては、レビンの2ドア車では当時のトヨタの人気車種「ソアラ」同様の固定ヘッドライト、トレノの3ドア車は「セリカXX」のようなリトラクタブルヘッドライトを採用。
最高出力130ps/6,600rpmを発揮するトヨタ初の1.6リッター16バルブDOHC「4A-GEU型」を採用したAE86は、古典的なTE71型のシャーシゆえに路面追従性は高くありませんが、限界の低さを逆手に取ればドリフト走行の練習にも適していたことから、多くのレーシングドライバーがスポーツドライビングの基本を学んだといわれています。
伝統のFRからFF駆動へと切り替えられた5代目レビン/トレノ
1987年(昭和62年)5月、レビン/トレノはFF化されたAE92型(1.5リッターエンジン搭載車はAE91型)にモデルチェンジされ、2ドアのみの展開となります。AE86型2ドアのレビンも“ミニチュアソアラ“と呼ばれていましたが、AE92型レビンではさらにソアラに似た外観が与えられ多くのユーザーから支持を得ました。
先代と同様に、レビンは固定ヘッドライト、トレノにはリトラクタブルヘッドライトを採用した5代目モデルでは、最高出力120ps/6,600rpmの4A-GE型NAエンジン仕様の他、スーパーチャージャー付の「GT-Z」をラインナップ。最高出力は145ps/6,400rpmまで高められています。
1989年(平成元年)5月のマイナーチェンジでは、NAの4A-GE型エンジンの圧縮比を高めたことで、最高出力140ps/7,200rpmまで高出力化。同時にスーパーチャージャーモデル「GT-Z」も高圧縮化することで、最高出力165ps/6,400rpmまでパワーアップされました。
熟成が図られた6代目モデル/歴史を閉じた最後の7代目モデル
1991年(平成3年)6月に、レビン/トレノはAE101型(1.5リッターエンジン搭載車はAE100型)にモデルチェンジされました。非連続可変バルブタイミング機構を吸気側カムシャフトに装備した1.6リッター20バルブDOHCヘッドを搭載する同モデルは、純正で4連スロットルを装備することでNAながら最高出力160ps/7,400rpmを発揮。16バルブのスーパーチャージャー付エンジン採用車も最高出力を170ps/6,400rpmまで高めました。
またスーパーチャージャーモデルのGT-Zには、サスペンションがストロークする際に発生するキャンバー角変化を抑えてグリップ力や操縦安定性を高める「スーパーストラットサスペンション」や「ビスカスLSD」が標準装備されるなど、速く走るための車として十分な装備を奢られています。
1995年(平成7年)6月、レビン/トレノはフルモデルチェンジされ7代目のAE111型(1.5リッターエンジン搭載車はAE110型)が誕生しましたが、このモデルからトヨタが伝統的に使用していたスポーツグレード名称「GT」は廃止されました。
搭載される4A-GE型エンジンは制御方式の変更やスロットル径拡大、燃焼室形状変更、高圧縮比化などの改良により最高出力は165ps/7,800rpmまで高められ、83年から続いた4A-G系エンジンの熟成が完了しました。
1997年(平成9年)のマイナーチェンジでは4A-GE型エンジン搭載車に6速MTが採用され、よりスポーツドライブに適した車になりましたが、2000年(平成12年)8月にコンパクトスポーティークーペの販売不振を理由に、1972年から続く歴史に幕を閉じることとなります。
【了】