なぜスバルは「モータースポーツ」に本気で挑むのか? 過酷なS耐とラリーで鍛えた技術が市販車を変える! 勝負の世界から生まれる「安心と愉しさ」の未来とは!
スバルはスーパー耐久やラリーといったモータースポーツに参戦していますが、なぜ過酷な挑戦を続けるのでしょうか。レース現場で磨いた技術や人材を、次世代の市販車づくりへ活かす取り組みを紹介します。
なぜスバルは「モータースポーツ」に本気で挑むのか?
これまでスバルのモータースポーツはSTI(スバルテクニカインターナショナル)が主導して展開していましたが、近年はスバル本体の開発陣の直轄で挑む活動が注目を集めています。
その代表格がスーパー耐久(S耐)のST-Qクラスと全日本ラリー選手権(JRC)への参戦です。どちらも「過酷な現場を通じたクルマづくり・人づくり」を掲げていますが、開発アプローチ、開発思想、そして目指すゴールには明確な役割分担と、見事な相互補完関係が存在しています。
世界的なスモールプレイヤーであるスバルが「数より質」で生き残り、コモディティ化を脱してブランド価値を研ぎ澄ますための二大キーワードが、「パフォーマンス(STI)」と「アドベンチャー(ウィルダネス)」です。
この2つのモータースポーツ活動は、そのブランド哲学を「技術・人・ビジネス」の三位一体で具現化する強固な両輪となっています。
S耐のST-Qクラスへの参戦は、カーボンニュートラル社会に向けた環境対応技術の構築(CN燃料の実証など)にとどまらず、次世代市販車やカスタマイズビジネスへの還元を主目的とした「ボトムアップ型」の実証実験の場です。

現在参戦している「スバル・ハイパフォーマンスXバージョン2(HiPerfX2)」は、これまでのベース車ありきの場当たり的な補強から脱却し、シミュレーション解析と実走のすり合わせを重ねた「ゼロベースの車体づくり」へとシフトしました。
ホワイトボディ段階から見直し、フロントのトルクボックス部補強やフロアからリアサブフレームを繋ぐブレースの追加によって、力の伝達経路・伝達時間・周波数をコントロールする「ダイナミック・スティフネス・コンセプト」を具現化しています。
本来、車体骨格は「衝突」と「走り」で求める要件が相反し、量産車(市販車)では何かしらの制約を受けます。しかし、HiPerfX2はロールケージで乗員保護を担保した上で、「走りの理想」を追求した実験車両です。
このアプローチによって車体骨格により本来の剛性と素直さを取り戻したことで、パーツ単体の良し悪しにとどまらず「なぜ効くのか/なぜ合わないのか」を論理的・構造的に検証できるようになりました。
例えば、かつて「効かないのでNG」とされたアイテムも、車体全体を見直したことで「今なら効く」と再登用・再評価できるなど、技術的な引き出しが飛躍的に増えています。
理屈と解析を突き詰めて準備してきたからこそ、プロドライバーからのシビアな評価に対しても「そんなはずはない、理論上はこう動くはずだ」と若手が怯まず対等に議論できる環境も生まれたそうです。
ドライバーの感覚値とエンジニアの解析値が同じ方向を向き、互いのリスペクトのもとで超高速のPDCAが回る組織文化そのものが育っています。
低炭素燃料を用いたFA24ターボはアジャイルな進化によりベース車の275ps/375Nmから375馬力/525Nmへと大幅に引き上げられ、非燃焼アンチラグやアクセルペダルダイレクト制御を採用。
駆動系もTY85型6速MTをベースにギヤ比を再構築し、DCCDの前後トルク配分を従来の41:59からリア寄りの34:66へと変更。さらにボッシュ製電子制御LSD(E-LSD)を組み合わせ、ターンイン時のアンチヨー制御や脱出トラクションを緻密にコントロールしています。
このAWD制御には次世代BEV(電気自動車)の開発チームが深く関わっており、「パフォーマンス STI Eコンセプト」などで目指す前後独立モーター電動AWDの知見を色濃くフィードバックさせています。
S耐の現場では、技術部門の成果報告会においてトップから「勝ちに、今まで以上にこだわろう」という明確な号令が下されました。単なる技術開発や人材育成を自己目的にしてしまうと、どうしても活動が内向きになり、緊張感を欠いてしまうためです。
ライバルを設定し、高い目標を掲げ、限られたルールの中で「どうやって勝つか」を必死に考える。その勝負に徹底的にこだわるプロセスをくぐり抜けて勝つからこそ、確固たる自信と本物の技術が生まれ、結果として関わった人が大きく育ちます。
そして、量産のエンジニアが「勝つために」導き出したアイデアだからこそ、レース屋の枠にとどまらない発想が飛び出し、最終的に量産車へと活きる技術として蓄積されていくのです。
2025年10月に開催された「ジャパンモビリティショー2025」で公開された「パフォーマンス STI Bコンセプト」は、メーカーが基本骨格と重要メカニズムを整え、ユーザーが購入後に育てていく「引き算のクルマづくり」を行なうモデルとして鋭意開発中ですが、その技術的裏付けもこの現場で培われています。
OTA等を通じた制御のアップデート販売など、購入後も楽しめるバリューチェーンも具体的に検討されています。

































