BYD新型「軽ハイトワゴン」登場! SNSで“賛否両論”の新型「ラッコ」を“冷静に”ひも解く! 試乗して見えたBYDの「本気と課題」とは
BYDの新しい軽BEV「RACCO(ラッコ)」が発売しました。このクルマが「どこが本当に凄くて、どこがまだ未完成なのか」、そして「BYDはどのような現実的な計算と覚悟を持って日本に挑んできたのか」。客観的な事実と実際の走行フィーリングに基づき、冷静に紐解きます。
【結論】新型「ラッコ」をどう見るか
ハンドリングは街乗りレベルでは「数値ほど圧倒的な低重心感」を感じにくい所があります。ステアリングを切ってからの回頭性は良いのでノーズ自体はスッと入るものの、ロールの発生がワンテンポ遅れて付いてくるため、連続する不整路や交差点では意外と車体がグラグラとふら付く挙動が気になりました。
ただ、ワインディングのような道だと前述のふら付きとは少し変わってきます。クルマ的にはコーナーで腰高感が出そうと思われるでしょうが、中高速域でのステア特性とロールの追従性が上手くバランスし始め、S字コーナーでもロール量が自然で、見た目以上に一体感あるコーナリングを披露します。
良く言えばスーパーハイト系らしからぬ「前席優先のドライバーズカー」と言えますが、このクルマがファミリーや送迎などで果たすべき役割を考えると、乗り心地や静粛性のスイートスポットはもう少し前後・低中速域で広く取るべきだと感じます。
ラッコの価格設定および保証内容は、かなり攻めた内容です。価格は「200」が214.5万円で補助金(約15万円)を適用すれば200万円切り。「300Plus」が239.8万円、そして試乗車の「300Premium」が249.7万円となっています。
他社の軽スーパーハイトワゴン(ガソリン車)の上級カスタムグレードが250万円近くのプライスである現代において、大容量バッテリーを積んだBEVが実質230万円台で手に入る価格インパクトは極めて大きいでしょう。残価設定ローンを活用すれば、かなりリーズナブルな価格で購入可能ですが、5年残価率(50%)は保証ではないので注意が必要です。
保証は6年または15万kmに加えて、最も気になるバッテリー保証は8年または16万km(有償延長保証で最長10年20万kmまでカバー)を用意しています。

このようにラッコを冷静に見ていくと、ハードは優秀ですが、改善点や伸び代はある……というのが本音です。
まず挙げられるのが「すり合わせ技術の洗練」です。EPSのステアリング手応え変化の滑らかさや、回生ブレーキの初期立ち上がりフィーリング、そして低速域での揺り返しや前後席での乗り心地のバランシングと言った適合の部分に関しては、まだまだ改善すべきポイントはあると思います。
次に、徹底的にシンプルな「ベーシックグレード」の提案です。現状は豪華装備の「300Premium」が売れ筋の約8割を占めていますが、過疎地や地方の日常の送迎・買い物の足として割り切る層向けに、先進装備や航続距離を絞ったモデルがあるといいなと。例えばラストワンマイルを支える「航続150km・150万円前後」のモデルなどを用意すれば、見え方も変わると思います。
また逆の提案ですが、日本の軽スーパーハイトワゴンでは「カスタム系」が絶大な人気を誇っています。そこで例えば、BYDの高級ブランドである「ヤンワン」や「デンザ」のような威風堂々としたフロントフェイスを落とし込んだ「ラッコ・カスタム」などが展開すれば、ドレスアップ市場でも強い支持を得られるはずです。
そろそろ結論にいきましょう。
課題はいくつかありますが、1作目にしてこの完成度は正直ビックリしました。これからの熟成と進化に大いに期待したい一台と言えます。
そんなラッコに勝算はあるのでしょうか。筆者はそれでも一筋縄ではいかないと思っています。実は軽自動車のユーザーはメーカーとの信頼関係が登録車よりも強く、実際に他社からいいクルマが登場したとしても、そう簡単には“鞍替え”をしないと言います。
そこは嗜好品ではなく庶民の足だからこその特徴なのかもしれませんが、そんなユーザーのハートを動かすための“何か”が必要となるでしょう。筆者もその答えは明確に持っていませんが、BYDがそれを見つけた時に本当の意味で“黒船襲来”となるのかもしれません。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
























































































