日野自動車が目指す交通安全 新型セレガの最新安全支援装置と市場の事故実態を解説
日野自動車は社会課題の解決を目指し、先進的な安全技術の開発に継続して取り組んでいます。本記事では、事業用自動車における交通事故の実態やドライバー不足といった市場状況を整理し、大型観光バス「日野セレガ」に搭載された最新の運転支援機能や異常時対応システムについて、その機能と仕組みを客観的なデータとともに解説します。
事故横ばい・運転手不足のバス業界。日野自動車が安全装備の「標準化」を急ぐ理由
自動車業界全体において、車両の安全性能向上は継続的な課題として位置付けられています。
近年、事業用自動車の交通事故件数は減少傾向が鈍化しており、新たな対策が求められる状況です。
とくに高速道路での追突や一般道での死角を起因とする事故への対応が急務となっています。
本記事では、日野自動車がこれらの市場環境や健康問題に対し、どのような方針で技術開発を進めているのか、最新の安全装備の仕組みを中心に詳しく解説します。

日野自動車は、「人、そして物の移動を支え、豊かで住みよい世界と未来に貢献する」という会社の使命を掲げています。
安全技術の開発においては、「誠実」「貢献」「共感」の3つを基本方針として設定しています。安全で環境に配慮した商品やサービスの提供を通じた社会課題の解決への取り組みや、顧客のビジネスに貢献できる品質の追求を行っています。
同社は、開発した安全技術を一部の仕様に留めず、標準化して市場へ投入する方針を持っています。時系列で見ると、2003年に大型トラクタへ車線逸脱警報装置(LDWS)などを商品化して以降、2006年には衝突被害軽減ブレーキ(PCS)を導入。その後、2010年に大型トラックおよび観光バスへのPCS標準装備化を達成しています。
2018年には、世界初となる「ドライバー異常時対応システム(EDSS)」を大型観光バスに商品化。さらに2023年には、レーンキーピングアシスト(LKA)および車線内停止型のEDSSを大型トラックに標準装備し、2024年にはこれらを大型観光バスにも標準装備化するなど、段階的に機能の拡充と適用車種の拡大を進めています。2026年に標識認識システム(TSR)や標識連動型車速制御システム(ISA)の観光バスへの標準装備化しています。

先進的な安全装置を開発するためには、市場における交通事故の実態を正確に把握することが前提となります。日本国内における交通事故全体および事業用自動車の事故件数は、2000年代前半をピークに長期的な減少傾向をたどってきました。
しかし、近年はその減少幅が鈍化しており、2021年以降は交通事故全体が約30万件、事業用自動車の事故が約2万件から3万件の間で横ばいで推移しています。
事故の発生形態を道路別に分析すると、それぞれの環境における特徴が確認できます。高速道路では、停止車両や低速で進行している車両に対する追突事故が全体の大部分を占めています。
一方、一般道路においては、交差点における出会い頭の衝突や、右左折時における歩行者および自転車との接触事故など、多様な形態の事故が混在しています。
くわえて、ドライバーを取り巻く労働環境も変化しています。警察庁の運転免許統計データを基にした推移では、大型二種運転免許の保有者数は2008年の110万人以上から減少傾向が続いており、2025年の予測値では90万人を下回る見込みです。
同時に、60歳以上および70歳以上の高齢ドライバーが占める割合が拡大しています。この結果、事業用バスの現場ではドライバー不足が課題化しており、高齢ドライバーや経験の浅いドライバーの運転操作を支援する安全技術の重要性が指摘されています。
これに関連して、ドライバーの健康状態に起因する事故件数も増加傾向にあります。バスにおいては、2015年に約130件であった健康起因の事故が、2023年には約240件にまで増加しており、乗客を輸送する車両としての対策が求められています。

市場の課題に対応するため、日野自動車は大型バスの物理的な特性に適合したシステム開発を進めています。開発担当者は音声データにおいて、「大型の車両というのはなかなかコントロールが難しい。とくに前方を見ているミリ波やカメラは、これだけの車両を安全に止めるために、だいぶ遠い距離を見なけない」と語っており、重量のある大型車両における検知精度の確保と早期の状況判断の難しさを説明しています。
また、車線維持支援に関しても「3.5m幅の車線に対して車体幅が2.5mということで、余裕しろが全然ない」と言及しており、大型バス固有の技術的課題に対応した開発が行われていることが示されています。
そうしたなかで新型セレガには、これらの課題を克服する具体的な支援装置が搭載されました。高速道路における車線逸脱事故の対策としては、「レーンキーピングアシスト(LKA)」が採用されています。
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車線逸脱防止支援機能(LDP):約60km/h以上で走行中に車線逸脱警報による注意喚起を行うとともに、ステアリング制御により車両を車線内に戻す支援を行います。
車線内維持支援機能(LTA):ドライバーのスイッチ操作により作動を開始し、ステアリング制御によって車両を車線内に維持するよう継続的な支援を行います。
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一般道路での死角に起因する事故を防ぐ機能としては、「サイトアラウンドモニターシステム(SAMS)」を装備。左右側方のミリ波レーダーが死角エリアにいる自動車やオートバイを検知します。対象物を検知するとピラー部の表示灯が黄色に点灯し、車線変更操作を行って衝突の可能性が高まった場合には、警報音とともに表示灯が赤色に点滅して注意を促します。
ドライバーの急な体調不良といった異常事態に備える機能として、「ドライバー異常時対応システム(EDSS)」が機能します。システムは、運転者や乗客が非常停止ボタンを押すか、システム自体が異常を自動検知することで作動します。作動時の自動制御方式には、以下の種類があります。
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単純停止方式:操舵は行わず、徐々に減速して停止します。
車線内停止方式:車線を維持するための操舵のみを行いながら徐々に減速し、車線内で停止します。
路肩停止方式:車線を維持しながら減速し、可能な場合は路肩に寄せて停止します(※本ガイドラインの対象外であり検討継続中)。
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EDSS作動時は、車内で非常ブザーが鳴るとともに画面表示やランプの点滅で異常を報知します。同時に車外に対しては、ホーンを鳴らし、ストップランプとハザードランプを点滅させることで周囲へ危険を知らせます。
開発担当者は、「ステアリングの操作や車線逸脱、そういったところを組み合わせることで、より精度よくドライバーさんの異常を判定して停車にもっていく」と述べており、複数のセンサー情報を統合した制御が行われています。
また、衝突安全の要となる衝突被害軽減ブレーキ(PCS)については、体験試乗を通じてシステムの作動検証が行われています。時速40kmから50kmで接近する停止障害物や、時速60kmで進行し前方を時速30kmで移動しているターゲットに対する回避動作の確認が実施されています。

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日野自動車の車両開発においては、交通事故を未然に防ぐ「予防安全」と、万が一の事故発生時に被害を軽減する「衝突安全」の連携が基本思想となっています。一定の車速と車間距離を維持するスキャニングクルーズ(FSRA)やLKAといった予防安全装置に、PCSやEDSSといった衝突安全装置が組み合わさることで、システム全体の回避率を上げる効果が発揮されます。
国土交通省が定める自動運転のレベル分けにおいて、新型セレガのシステムは「レベル2(特定条件下での自動運転機能の組み合わせ)」に該当します。
これはシステムが前後・左右の車両制御を実施するものです。大型バスは多数の乗客を輸送するという性質上、人的要因に対して電子制御による支援機能が役割を果たします。日野自動車は市場の事故データや交通環境の実態に基づき、安全支援装置の標準化を継続していく予定です。

































































































