バスの「非常ブレーキボタン」ってどんなもの? 「イタズラ厳禁」だけど“非常時”にはかなり有効! 日野新型「セレガ」に採用された「画期的システム」EDSSの安全性を検証

日野自動車の新型大型観光バス「セレガ」に採用された「EDSS」とは、どのような機能なのでしょうか。

いざというときに悲惨な事故を防ぐ「画期的機能」

 日野自動車の大型観光バス「セレガ」は高速路線・観光バス車両の定番として、さまざまなバス事業者に導入されている、定番モデルとなっています。
 
 2026年5月には、20年ぶりにデザインを一新した大幅マイナーチェンジモデルが発売されました。
 
 新型では先進安全装備が強化されたこともトピックですが、このうち「EDSS」とは、どのような機能なのでしょうか。試乗会で体験してみました。

 セレガは1990年に初代が登場後、大型観光バスの定番モデルとして全国の事業者に導入されています。

 従来の旧いスタイルの車両から一新し、1990年代の乗用車のトレンドに則った流麗でスタイリッシュなデザインを採用したことで、バス車両の近代化を図りました。

 現行型は2005年8月に発売された2代目です。初代セレガと初代の大幅改良モデル「セレガR」のデザインを踏襲しつつも、さらにスタイリッシュさを引き上げています。生産はいすゞとの合弁会社「ジェイ・バス」が担当し、いすゞでは同型のモデルが「ガーラ」として販売されています。

 今回、登場から約20年越しの大幅刷新が実施されました。新型モデルでは「ドライバーが安全・安心に運転でき、乗客も安心して乗りたくなるバス」を目指して開発され、デザインの一新のほか、ドライバビリティの向上、さらに最新の安全装備を多数採用しました。

 風を受け流すデザインのフロントフェイスや、新採用したルーフ一体型の門型スポイラー「シャープエッジルーフ」の採用のほか、インテリアのカラーコーディネートの一新などを図っています。

 パワートレインは、8.9リッター直列6気筒ディーゼルターボエンジン「A09C」に変わりはありませんが、トランスミッションは新たに12速AMTのみへと変更し、低燃費タイヤとの組み合わせや空力性能の向上で、燃費とドライバビリティの向上も図っています。

日野の大型観光バス「セレガ」大幅マイナーチェンジモデルに採用の「EDSS」乗客用ボタン
日野の大型観光バス「セレガ」大幅マイナーチェンジモデルに採用の「EDSS」乗客用ボタン

 さらに、新型セレガの大きな進化点として、先進安全装備のアップデートもトピックとなっています。

 日野では安全に関する技術を開発して市場投入を積極的に進めており、2006年には現在の衝突被害軽減ブレーキの礎となる「PCS(プリクラッシュセーフティシステム)」を世界初商品化するとともに、2010年には大型トラックと大型バス全車に標準装備化。

 さらに、「EDSS(ドライバー異常時対応システム)」も2018年に大型バスに世界初採用するなど、安全に関する技術の投入は枚挙にいとまがありません。

 いっぽうで、日野によると近年、バスによる重大事故が相次いでいることや、バスを営業運転できる「大型二種免許」の保有者が高齢化していること、人手不足により快適に運転できるバスが求められているなどといった背景があるといいます。

 そうしたことから新型セレガでは、出会い頭警報、左折巻き込み警報、車線変更警報などを含む「サイトアラウンドモニターシステム」を標準装備化し、安全性を向上しました。

 また、「TSR(標識認識システム)」には、制限速度を超えて走行している場合、ドライバーに減速を要求する「ISA(標識連動型車速制御システム)」を組み合わせ、クラストップレベルの安全性を確保しました。

日野の大型観光バス「セレガ」大幅マイナーチェンジに採用された「EDSS(ドライバー異常時対応システム)」。ドライバーモニターで自動作動した様子
日野の大型観光バス「セレガ」大幅マイナーチェンジに採用された「EDSS(ドライバー異常時対応システム)」。ドライバーモニターで自動作動した様子

 今回、新型セレガの試乗会で、バスの安全運行の核となるEDSSの機能を体験することができました。

 まずEDSSとは先述のとおり、ドライバー異常時対応システムの略称です。乗用車にも近年採用が進んでいるもので、運転士が体調不良などの急病時に、安全に車両を緊急停止させる機能となります。

 乗用車の場合は、ハンドル付近に設置されたセンサーで運転手の開眼や姿勢の変化などを認識し、急病の可能性があると停止する機能となります。新型セレガにも、ドライバーモニター機能が備わっており、運転士の異変に応じてEDSSの機能が働きます。

 また、運転席にある運転士用の非常ブレーキボタンを押して停止させることも可能です。客を乗せたまま、営業運転の継続が難しいほどの体調不良が発生した際にも安心です。

 さらに、しばしば起こる事故としては、運転士の運転がおかしいことに乗客が気付き、なんとか操作を代わって停止させるといったこともあります。

 そうした場合に備え「非常ブレーキ」ボタンを客室側にも設置。乗客の手元にあれば、素早く停止させることが可能で、衝突事故を軽減することが可能です。

 日野のテストコースで実際に試します。まず乗客側のスイッチでEDSSを作動させます。

 非常ブレーキのボタンは、運転士の異常に気づきやすい最前列シートの上部に設置されており、誤操作防止のためのカバーが取り付けられています。ボタンを押すと、車内には警告ブザーとともに、前方の天井にあるフラッシャーランプが赤く点滅し、その3秒後にブレーキとクラクションの吹鳴、ハザードとブレーキランプの点滅が行われます。

「3秒間」の猶予があるのは、いたずらや誤操作による押下があっても、解除できるためで、運転士の手元にあるスイッチを操作すれば解除することが可能です。もちろん、不必要なときに非常ブレーキボタンを押すことは難く禁じられています。

 続いてドライバーモニターによるEDSSの作動です。運転士は急に体調不良に襲われ、正しい運転姿勢が維持できなくなり、また目線も前方を向いていません。しばらく惰性で走行が続けられますが、車線を逸脱。このままだと事故に発展します。

 するとEDSSが運転士の異常を察知し、警告ブザーと天井のフラッシャー、クラクションとハザード・ブレーキランプの点滅が作動し、ブレーキがかかりました。異常が認識されると猶予の時間はなく、すぐに作動します。これは運転席の非常ブレーキスイッチでも同じ動作となります。

 また、新型セレガのEDSSは「車線維持式」を採用しています。単に急ブレーキで停止するだけではなく、標準装備されている車線逸脱防止支援システムと組み合わせており、緊急停止時であっても車線内に留まるように停止することが特徴です。

 このように、新型セレガに採用されたEDSSは、非常時の際に、運転士や乗客だけでなく、周囲の交通への安全も配慮した新しいシステムへと進化しました。

 訪日外国人の増加など、観光バスの需要も高まるいっぽうで、バス事故が増えるなか、EDSSがバス事故の減少にどれほど貢献できるか、期待が高まります。

【画像】「非常時だけ」押して! これがバスの「非常ブレーキボタン」です(30枚以上)

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