廃止決定!? 埼玉の「最狂・最狭路線バス」が凄かった! 狭すぎて「枝葉がボキッ!」&「終点バック」の合わせ技 “リミット”迫る異例づくしの西武観光バス「倉尾線」に乗る 〜果てなき路線バスの旅〜
知らない道路をひたすらたどり、ふだん行くことのない街の素性を知り、そして見たことのない景色に出会える。それが「路線バスの旅」の魅力です。今回は「西武観光バス」の激狭経路を通ることで有名な「G14 倉尾線」に乗ってきました。
運転士さんに話を伺うと… 衝撃の事実が発覚
長沢バス停は林道入口の700mほど手前の藤倉地区にあります。まだ県道区間ではあるものの、ほぼ林道のような狭さです。
ちなみにこの先の林道 二子山線は後でクルマで走ってみましたが、運転に自信がないなら絶対におすすめしません。
今回の取材で小鹿野町まで乗ってきた全長5m×全幅2mの大型SUVでは通行困難の狭さで、泣きそうになりながらバックで引き返しました。一応群馬県境の矢久峠までは歩きで70分くらいですが、時期によってはクマ出没が懸念されます。今回は雨ですし、クマ対策も万全ではありません。歩いての県境越しは諦めました。
なかなかの秘境にある長沢バス停。もちろん飲み食いができるお店や商店はゼロです。簡易的な公衆トイレはあり、群馬方面へハイキングする場合には重宝するでしょう。ただ、登山届を提出する場所は周囲には見当たりませんので、ハイキングや登山でバスを利用する場合は確認したほうが良さそうです。
すぐ左には川があります。せせらぎが聞こえます。自然たっぷりのなか、深呼吸したくなります。
折り返しまでは3分ほどあります。小鹿野役場からの540円の運賃を精算し、運転士さんに「折り返しに乗ります」と告げて一度降り、撮影を済ませて再びバスに乗ります。

まだ少し時間があるので、乗客の利用状況などはどうなっているのか、運転士さんに話を伺いました。
「地元の方も最近では乗らなくなっちゃいましたので、(終点長沢まで来る人は)ほとんどいないです。もともとは結構いたんですよ。20〜30年前くらいは子どもたちもいっぱいいましたしね。
(少子化という)そういう世の中ですから。まだ子どもたちも何人かはおられるみたいですが、町のスクールバスで移動するようになり、このバスには乗らなくなりましたね。残ったお年寄りの人も乗らなくなり、近頃はめっきりです。たまに2、3人いますけれど、それくらいですかね」。
今回担当してくださった運転士さんは大ベテラン。かなり狭い道ですが、難なく運転しているように見えました。やはりプロは緊張しないのでしょうか。
「そりゃあ、気を遣いますよ。気を抜いたらこすっちゃうので、緊張感はありますよね」。
そりゃそうですよね…。恐怖感なく運転していただき、本当にありがとうございます。
軽い取材を終え、一番前の席に座ろうとしたとき、運転士さんから驚きの一言がありました。「この路線、そろそろ無くなるみたいなんです」。
えーっ。事前情報はありませんでした。もしかして今回が最初で最後の乗車になるかもしれません。
倉尾線はもともと利用客の少なさから、埼玉県から小鹿野町に対し、補助金が交付されて運行していたようです。しかし、小鹿野町も廃止を検討していたらしく、2024年の交通計画案では「新たな公共交通サービスの導入を検討」としています。
今のところ西武観光バスの公式発表はまだで、後日電話で取材したところ、「まだ確定ではありません」とのことでした。

バスは行先表示を「小鹿野役場」に変えるとともに折り返しの準備を進め、小鹿野役場に向かって復路を進みます。路線廃止というあまりの衝撃に、今まで通ってきた狭隘路すら忘れてしまいました。
逆方向から乗ってみても、やっぱり狭すぎです。往復で乗ってみて、いちばん狭いところは「日尾〜長久保入口」の間であることがわかりました。
復路は運転席に近い座席を取ったため、運転の様子がわかります。カーブミラーをよく確認しつつも、見通しが悪いため、運転士さんは体勢を変えながら先の様子まで気を遣っています。とても安全運行です。
往路とは違い下り坂なので、ハンドル左のレバーを倒し、リターダー(補助ブレーキ)を使いながら下っていきます。がらんどうの車内にリターダーの「ジー」という音が響きます。
再び合角ダムを通り、先程の狭い県道の側道、トンネルを抜け、299号まで来ました。小鹿野役場まではもう少し。降りる準備をするため、荷物をまとめていると、小鹿野の市街地に入ってきました。まもなく終点の小鹿野役場です。
ここまでの往復で、やはり乗客は筆者のみ。利用客不足は相当に深刻なようです。運転士さんに「ありがとうございました」と告げて精算し、降車。回送になったバスを見送ります。もうこの景色は二度と見られないかもしれません。
ちなみに西武観光バスでは「G13 志賀坂線」も存続の危機に瀕しています。小鹿野エリアから西武観光バスが撤退するのも、時間の問題かもしれません。貴重な秘境バス路線はこうして静かに消えてゆくのです。
※ ※ ※
幾度ものカーブを超え、ダムを超え、枝葉をこすりながら到着した終点バス停ではバック駐車という異例づくしの倉尾線。すでに廃止のタイムリミットが迫っています。乗れるのは今のうちなのは間違いありません。
バス旅で必要なのは、ちょっとの勇気と思い切り、そして運賃だけ。整理券を手に取り、シートに腰をかければ、知らない地名のアナウンスとともに、見たことない景色が車窓に映ります。
旅に出るのに、あえての「路線バス」という選択。正式廃止になるまでに、一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか。






























































































