7年ぶり全面刷新! アウディの新型ステーションワゴン「A6アバント」どんなモデル? 仕上がりは「4気筒でもいい」と思える「上級グランドツアラー」
アウディ ジャパンは2026年6月25日、新型「A6」およびステーションワゴンモデルとなる新型「A6アバント」を発売しました。どのようなモデルなのでしょうか。今回は山本シンヤ氏がA6アバントに試乗し、レポートします。
7年ぶり全面刷新のステーションワゴン
アウディの中核を担うミドルサイズ・エグゼクティブモデル「A6」が7年ぶり全面刷新を遂げ世代交代、2026年6月より日本国内でも販売がスタートしました。ちなみに1968年に誕生した「アウディ 100」から数えると通算で9代目、「A6」という名称に改められてからは6代目にあたります。
ボディタイプは伝統のフォーマルなセダンに加え、圧倒的な美しいスタイルと実用性を兼ね備えたステーションワゴン「アバント」の2タイプを用意していますが、今回はステーションワゴン好きの筆者(山本シンヤ)がアバントに特化した紹介をしていきます。
世界的SUVブームが続く今、ステーションワゴンというボディタイプは一時的に市場の陰に隠れた存在となりました。
しかし、全高の低さがもたらす物理的な走行安定性や低 空気抵抗、そしてSUVに引けを取らない高い荷室の積載性を兼ね備えたステーションワゴンは、日本の都市部のタワーパーキング事情や長距離移動を伴うライフスタイルに対して、今なお最も合理的な解答の1つだと、筆者は考えています。
ちなみに欧州市場では、現在もステーションワゴンの需要が高く、全体のおよそ8割を占めているといいます。そのうち半数以上がアウディの本拠地であるドイツで販売されていることからも分かる通り、高速道路網アウトバーンを低重心で安定して駆け抜けるワゴンスタイルは、根強い支持があります。
日本ではセダンとアバントの販売比率はややアバントが上回る展開のようで、直近では選択肢が狭まりつつあるワゴンファンとって大本命の登場と言えるかもしれません。
アウディの歴史を振り返ると、3代目アウディ 100で確率した「空力性能の追求」がブランドのアイデンティティとして掲げられてきました。更に5代目からは、従来の質実剛健なイメージからスタイリッシュでエレガントな路線へと劇的な変貌を遂げましたが、今回の9代目では、その伝統的な空力性能と現代的なエモーショナルデザインをより高次元で融合しています。
ちなみに空力性能はアウディA6史上最高レベルで、Cd値はセダンが0.23、アバントでも0.25となっています。フロントバンパー脇のエアカーテンや、シングルフレームグリル内部に仕込まれた可変シャッター、アンダーボディを完璧に覆う整流パネルなど、とにかく細部に至る空気の流れの制御が徹底されています。

デザイン面では、ステーションワゴンながらシューティングブレイク並みにアバンギャルドで攻めた造形が印象的です。
荷室容積を最優先するオーソドックスで箱型なワゴンとは一線を画し、大胆に寝かされたリアゲートの角度や、力強く張り出したリアフェンダーの造形がエモーショナルな色気を漂わせています。
ホイールベースは先代を踏襲しつつもオーバーハングを前後ともに伸ばすことで全長を50mm拡大し、全高を10mm下げることで、伸びやかなのはもちろん縦置きエンジンの黄金比プロポーションを実現。フロントだけでなくリアの斜め後方から見上げた際の立体的で複雑なボディラインは、今の言葉を使うと「エモい」仕上がりです。
ちなみにライトも特徴の1つで、フロントには発光パターンをユーザーの好みに応じてカスタマイズできるデジタルライティングを採用。リアには左右の端に配置された印象的なブレーキライトを組み合わせることで、夜間の視認性とブランドアイコンとしての主張を両立させています。
インテリアは最新のハイテックコックピットを採用。メーターパネルからセンターディスプレイまでが美しい弧を描いて一体化された「MMIパノラマディスプレイ(OLED採用)」がインパネ中央に鎮座し、さらに助手席前には「パッセンジャーディスプレイ」も用意。
エアコンやナビゲーション、オーディオといった操作の大部分はタッチパネルへと統合されていますが、アダプティブクルーズコントロールの操作系は物理的な操作レバーが残されています。デザイン的には先に出た「Q3」ほどではありませんが、デジタルとアナログの良さを絶妙なバランスで融合させた設計と言えるでしょう。
ちなみにオプションで用意される「スマートパノラマガラスルーフ」には、PDLC(高分子分散型液晶)技術が用いられており、ボタン操作ひとつでガラスの透明度を瞬時に切り替えることができます。物理的なサンシェードを排除できたことで、後席乗員の頭上空間(ヘッドクリアランス)が大きく広がるという実質的なメリットも生み出しています。
メカニズムはどうでしょうか。パワートレインは、先代に設定のあった6気筒モデルは見送られ、効率性と性能を極めた4気筒ユニットへと全車集約されています。
ガソリンは2リッター直4ターボ(TFSI)で200kW(272PS)/400Nm、ディーゼルは2リッター直4ターボ(TDI)で150kW(204PS)/400Nmを発揮。この2つのパワートレインには強化された48Vマイルドハイブリッドシステム「MHEV plus」を組み合わせています。
このシステムはオルタネーター兼スターターによる補助に加えて、トランスミッション側に電動パワートレインモジュールを配置したことで、状況に応じてEV走行に加えて最大230Nmに達する強力なモーターアシスト、更には高効率なエネルギー回生を行ないます。
フットワークは新世代の内燃機関用プラットフォームである「PPC(プレミアム・プラットフォーム・コンバッション)」に、「アダプティブエアサスペンション」と四輪操舵システム「オールホイールステアリング(リアステア)」を組み合わせています。
ちなみに日本仕様は全てアウディ伝統の全輪駆動システム「クワトロ」の設定となります。
リアステアは車速60km/h未満では逆位相(最大5度)、60km/h以上では同位相(最大2度)操舵されることで、実用域の取り回しと高速走行時の安定性を両立させています。
今回はA6 アバントのガソリン車に試乗。アクセルを踏み込むと、MHEV plusのモーターアシストがシームレスに立ち上がり、約2トンに迫る巨体を力強く、かつスムーズに加速させます。
230Nmのモーターアシストは、ストップ&ゴーの多い日本ではもう少し走り始めでアシストしてほしい所はありますが、常用域からの再加速などのシーンではターボとの連携で見事な黒子としてシッカリ機能しており、ドライバビリティ向上にも一役買っています。正直、乗る前はパフォーマンス面でやや心配があったものの、実際に乗るとスペック以上に力強く走ってくれるので、「これならば4気筒でもいいかな」と。
アクセルを全開近くまで深く踏み込んだ際には4気筒エンジン特有のビート音がかすかに届くものの、日常的な加速や巡航状態では、エンジン音もロードノイズも極限まで遮断された驚異的な静粛性です。
この辺りはフロントのウインドシールドとフロントサイドガラスに加え、リアガラスにも重厚な遮音ガラス(アコースティックガラス)の効果も大きいはず。これは弟分となるA5とは明確な差があると感じました。
高速道路では驚きは直進安定性です。高度に計算された空力ボディとクワトロシステム、さらに高速走行時に自動的に車高を20mm下げるエアサスペンションの統合制御により、本当に路面に吸い付くように「矢のように」真っすぐ走り抜けます。
横風や路面のうねりに遭遇しても車体はフラットな姿勢を崩さず、ステアリングからは雑味は伝えないけど緻密なフィードバックが伝わってきます。
この走りの質感は、メルセデス・ベンツのような重厚でガッチリとした手応えとも、BMWのようにアドレナリンを煽る俊敏でスポーティな動きとも異なります。乗り込むほどに安心感が増し、長距離を走れば走るほど心が落ち着いていくような、上質な快適性に満ちています。
ちなみに高速道路時の燃費は約17km/Lで、巨体の4WDワゴンとしては極めて優秀な数値でしょう。
街乗りや一般道にステージを移すと、今度はこのクルマのもう一つの顔である「扱いやすさ」が際立ちます。
全幅や全長は堂々たるサイズですが、低速域で後輪が前輪と逆位相に切れるリアステアの効果により、交差点の曲がり角や狭い路地での取り回しは驚くほど軽快です。その印象はワンサイズ小さなA4やA5に乗っているかのような「手の内感」で、巨体を持て余すような感覚はありません。
ただ重箱の隅を突くと、転舵から直進状態に戻る時にある舵角から直進側にやや強引に戻そうとする制御は気になりました(ステアリングを切る方向は問題なし)。
乗り心地は大径タイヤ装着にもかかわらず、エアサスペンションが路面の細かい突起やギャップを柔らかくいなし、しなやかに路面を捉え続けます。PPCプラットフォームを採用した初期のモデルで感じられたような熟成不足感は見事に解消されており、熟成された足回りのセッティングを体感できます。
走行モード「アウディ・ドライブセレクト」は「コンフォート」を選ぶと足回りはさらにしなやかになりますが、路面によってはややボディの揺り返しが大きく、街乗り限定。
「ダイナミック」に切り替えると足回りが引き締まり、エンジンレスポンスも鋭くなりますが、A6のキャラクターから考えると少しスポーティに寄りすぎで、この領域は「S」や「RS」のモデルに委ねたほうがいいかなと。
個人的にはA6は快適性と引き締まり感の塩梅が絶妙な「バランス」が最もこのクルマの魅力を引き出せる選択だと感じました。
そろそろ結論にいきましょう。直近で乗ったコンパクト系アウディはVWと走りの差が少なく“デラックスVW”のような感じで正直ガッカリする所もありましたが、新型A6は「さすがアウディ!」と言う仕上がりだと感じました。個人的にはA5が持つスポーティなアジリティに上質なラグジュアリーと圧倒的な静粛性を足し合わせたような、「上級グランドツアラー」と呼びたい所です。
それに加えて、過度な主張(昔よりはありますが)や道具感に偏ることなく、クリーンで先進的、かつどこかクールな知性を感じさせるデザインと佇まいは、同セグメントのメルセデス・ベンツ「Eクラスワゴン」やBMW「5シリーズ ツーリング」とは異なるアウディ独自の世界観がシッカリと築き上げられていると感じました。
アウディは現在「電動化戦略」を軌道修正していますが、A6の仕上がりから「内燃車も本気」である……と。
最後に、価格(消費税込)はガソリンが927万、ディーゼルが940万とそれなりに高額ですが、内容を考えるとコスパはいいと思っています。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。














































