トランプ関税や資材費高騰で日本車メーカーはどうなる? カギは「ハイブリッド回帰」と「クルマづくりの大転換」 2025年度決算から読み解く“現在地”と“次なる一手”
自動車メーカー各社の2025年度通期決算が出揃った。米国の追加関税やEV政策の転換といった「外部環境の変化」に各社が苦慮する実態が浮き彫りになっている。決算説明会から見えてきた共通点や相違点、生き残りをかけた「クルマづくりの変化」について解説する。
「数」から「質と収益性」の時代へ
2026年5月上旬から中旬にかけて、自動車メーカー各社が2025年度の通期決算説明会を実施。そのなかで、各社間での共通点、相違点、そして変化点が浮き彫りになりました。
まず、共通点としては「外部環境の変化」への対応で苦慮したことが挙げられます。決算説明の冒頭、全社が強調したポイントでした。
最もインパクトが大きいのが、米国の追加関税、いわゆるトランプ関税の影響です。
2025年4月上旬、米国は従来2.5%だった自動車・自動車部品に対し、25%の追加関税を発動しました。
その後、同年7月下旬の日米通商交渉を経て、同年9月中旬からは15%で落ち着いているものの、アメリカでは行政と司法の間で追加関税に対する見解の相違があり、日本の自動車メーカーとしては今後も米国関税の行方が気になるところです。
米国関税による営業減益は、トヨタでは1兆3800億円、ホンダが3469億円、日産が2860億円、また日本からアメリカへの完成車輸出台数が多いマツダが1549億円、そして
スバルは2269億円でした。

2つ目の「外部環境の変化」は、資材費の上昇です。
ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー安全保障問題が深刻化して以降、資材費の上昇は続いてきましたが、直近では中東情勢により原油由来の資材が高騰するだけでなく入手が難しいケースも出てきました。そのため、代替調達の検討が始まっています。
また、今期の見通しの中で、自動車メーカー各社は「中東情勢の先行きが不透明」と強調しており、資材調達のみならず、中東向けの完成車輸出での航路と陸路を組み合わせた代替ルートによる物流コストの上昇も懸念材料になっています。
「外部環境変化」の3つ目は、第2次トランプ政権による環境政策の転換です。
燃費規制の変更や、EV購入に対する税制優遇制度の見直しなどにより、アメリカでのEV市場の成長は一気に減速しました。
そのため、ホンダは「0(ゼロ)シリーズ」の北米向けモデルの開発と販売を中止し、これによりEV関連損失で1兆4536億円を計上しています。
また、スバルは独自開発中のEV4モデルについて、導入時期を示さずに後ろ倒しすることを明らかにしたほか、マツダも独自開発EVの導入を先延ばしにすると発表。
各社とも北米市場向けの電動車では、EVからハイブリッド車への開発リソースを振り分ける戦略を打つことになりました。
次に「相違点」です。
北米での環境変化が大きい中で、アメリカから四輪事業を撤退しているスズキには直接的な影響が及んでいません。スズキとしては当面、中東情勢が懸念材料となります。
また、日産とホンダはそれぞれ通期赤字となりましたが、ここでも相違点があります。
日産は中期的な事業再生を行っており、固定費を大幅に改善するためにグローバルで生産拠点の統廃合や人員削減を進めている段階で、抜本的な事業変革の上での巨額の減益要因が生じています。
一方、ホンダは北米向けのEV事業変革が巨額赤字の主な要因であり、生産体制など基本的な事業体系については維持する構えです。
いずれにしても、日産とホンダは今期での黒字回復に向けて注力していきます。
最後に、クルマづくりに関する「変化点」です。
中国の新興勢力に見られるような、これまでの日本のクルマづくりとは大きく異なる開発コスト、開発期間、開発方法への対応が必須な情勢です。
例えば、中国で標準化されている部品の活用や、商品企画から量産までのプロセスそのものの見直し、パートナー企業のプラットフォームの活用とその完成車の中国国外輸出など、
これまで議論されてきたり、またはテスト的に導入してきた手法を本格的に取り入れるという姿勢を示したメーカーが多かったことに、少々驚きました。
きっかけは、「外部環境の変化」です。地政学的なリスクや、政治の影響によるリスクなど、外部環境が仮に変化しても勝ち残っていくために、いまこそ決断しなければならないという強い意志を示したのです。
自動車メーカーで作る業界団体の日本自動車工業会でも、2025年に掲げた「新7つの課題」の中で、クルマづくりそのものについて、例えば一部の部品や半導体などで各社共通化について検討を進めようとしている段階です。
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今回の各社決算内容、今期見通し、そして今後の戦略が明らかになる中で、日本の自動車産業界はグローバルでの産業競争力を今後も維持し、さらに発展させるためには、今まさに「待ったなし」の時期に突入していることを、自動車業界に直接関わりのない多くの人も実感したのではないでしょうか。
自動車産業はこれから、数(台数)を追う時代から、事業の質の向上に伴う収益性を追求する時代へと大きくシフトしていきます。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。

















