なぜスバルは「スポーツ車両」開発に注力!? モータースポーツで鍛えられる「クルマと人」づくり… 5年目の現状は?

2026年4月に開催されたS耐第二戦鈴鹿で、スバルがモータースポーツ活動で鍛える「クルマ」「人」づくりの現状を探りました。

スバルのS耐参戦目的は?その結果はどのように車両開発に繋がっている?

 スバルのスーパー耐久参戦(以下S耐)は5年目に突入しマシンも3代目となります。
 
 なぜスバルは、モータースポーツに注力するのでしょうか。そして今後はどのような展開を見据えているのでしょうか。
 
 2026年4月に開催されたS耐第2戦鈴鹿で、この活動のキーマンとなる本井代表に話を聞きました。

なぜスバルはモータースポーツに注力? 新たなスポーツ車両開発も視野に
なぜスバルはモータースポーツに注力? 新たなスポーツ車両開発も視野に

 スバルは2022年からS耐にBRZ CNF concept で、ST-Qクラスと言われるメーカーの開発車両が参加するクラスに参戦を開始しました。

 2024年中盤からWRX S4ベースのSUBARU High-Performance X Future concept(ハイパフォX)にチェンジ。

 そして2026年からはクロストレックをベースにした、SUBARU HIGH PERFORMANCE X version II」(ハイパフォX2)という進化させたマシンにチェンジして参戦を開始しています。

 スバルは社内にテストドライバーという専門職がおらず、開発エンジニア自らがステアリングを握りテストを日々繰り返しています。しかし普通に運転できるだけではテストドライバーとしての意味をなしません。

 車両の限界値を引き出す能力や、どのような状態でどのような症状が発生するのか、など同じことを繰り返せる再現性も重要になります。

 そのためには運転技術を磨く必要があることから、設立されたSDA(スバルドライビングアカデミー)。ここでは日々運転技術の研鑽を積み、テストドライバーとしての能力向上に磨きをかけています。

 そのSDAが母体となり、さまざまな部署のエンジニアが自ら名乗りをあげて参加しているのが、S耐に参戦するTeam SDA Engineeringです。

 S耐ではプロドライバーの技術や、車両の開発能力も重要になるため、プロドライバーの井口卓人選手と山内英輝選手も参加し、プロが感じるマシンの挙動や感性をフィードバックしています。

 スバルがS耐に参戦する理由としては、モータースポーツを起点としたもっと良い車作り。さらに車1台を開発できるエンジニアの人材育成も兼ねています。

 これまでのS耐参戦の結果も出始めており、BRZで参戦していたことで得られた技術を「SUBARU Sport Drive e-Tune」というアップデートという形でユーザーに提供。

 内容としてはMT車向けのスロットルセッティングや、AT車向けのトランスミッション制御を組み込むことでスポーティーに、ドライバーの意のままに車両を操りやすくするというもの。

 さらに、S耐マシンで行っていた制御や、バランスドエンジンを組み込んだ、SUBARU BRZ STI Sport TYPE RAを販売するなど、まさにモータースポーツを起点とした開発された車両がユーザーに届くという、S耐参戦目標が徐々に芽吹いています。

 そんなS耐参戦も5年目となり、今年からはクロストレックをベースにした、SUBARU HIGH PERFORMANCE X version II」(ハイパフォX2)に。

 このハイパフォX2は、2025年のジャパンモビリティーショーで展示された、パフォーマンス-B STIコンセプトと同じ思想で作られ、スバルが持つ既存のアセットを活用した車両作りが行われています。

 昨年まで参戦していたWRX S4ベースのSUBARU High-Performance X Future concept(ハイパフォX)の知見を盛り込み、ホワイトボディの状態からボディ補剛を行うなど、よりレーシングカーらしい強靭なボディを手に入れています。

 エンジンはハイパフォXからのキャリーオーバーのFA24水平対向4気筒ターボエンジンを搭載。最大出力は364馬力、最大トルクは375N/m。燃料はST-Qクラス共通のエネオス製E20低炭素燃料を使用。ミッションは6MTでドライバーズコントロールデフ(DCCD)を組み合わせています。

 片側50mmほど拡幅したボディに合わせ、ロアアームやアップライトもワイドボディ用に専用品を制作しています。

 また、ハイパフォXに引き続き、スバル航空宇宙カンパニーと協力し、前後ドアやリアウイングに再生カーボンを利用しています。

スバルのS耐では人材育成も大切なテーマのひとつ
スバルのS耐では人材育成も大切なテーマのひとつ

 ハイパフォX2についてTeam SDA Engineeringの本井代表は次のように説明しています。

「去年までのハイパフォXではネガな部分をいかにポジティブにしていくか。という観点で車両作りが行われていました。

 今年の車両はそのネガな部分を最初からポジティブにした状態で車両作りを始めているので、ベースラインが非常に上がっています。

 プロドライバーからも高評価を得ています」と、ベースの段階で車両が良い状態になっているとのこと。

 車両の速さとしては、今まで目標としているST-2クラスを上回り、さらに速いST-TCRクラスを目標していますし、ある程度の速さは見出せるようになっています。

 今回のレースに向けて改善点を盛り込んでいますが、その効果もしっかり発揮されていて、良い結果に結びついています。

 その中でエンジニアの成長目標として、速さや開発の目標点に向かって、複数のシナリオから考えられるようになると良いなと思っています。

 というのも、量産車においても、必要要件を満たすためにはどのような方法で解決していくのが良いのか。

 さまざまな方法を考えられることに繋がっていきます」

 このように、レースで速く走るためだけでなく、思考能力を豊富にすることが、エンジニアとしての進化であり、ここが車1台を開発できるエンジニアの人材育成に繋がっていく部分です。

S耐参戦から5年 今後のスバルからも目が離せない(画像は本井代表)
S耐参戦から5年 今後のスバルからも目が離せない(画像は本井代表)

 さらに人材育成について本井代表は次のように話しています。

「今までは技術部門中心で行ってきた活動ですけど、コーポレートとして、この活動を広げるための施作も考えています。

 その一つとして、現在も行っているニュルブルクリンク24時間レースや、全日本ラリー、TGR GR86/BRZ Cupへのディラーメカニックの派遣というものを、S耐の現場でも取り入れようということも検討しています。

 さらにBRZで参戦していたことで得られた知見を元に開発を行った、SUBARU Sport Drive e-TuneやSUBARU BRZ STI Sport TYPE RAというプロダクトアウトを、今後はもっと多く行えるようにしていきたいと思っています」

※ ※ ※

 このS耐の活動がきっかけになったとも思われる、スバルの新部署「スポーツ車両企画室」が4月に開設されました。

 前戦のS耐もてぎ大会では、このスポーツ車両企画室の概要や、新たな全日本ラリー参戦車両を開発中であることが発表されています。

 既存のアセットを活用して車両開発が行われているハイパフォX2や、もう間もなく登場する全日本ラリー向けの車両など、スバルが保有する技術や、S耐やラリーで開発される新たな技術や各種制御が生かされた量産車が登場するのは、そう遠い未来ではないのかもしれません。

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Writer: 雪岡直樹

1974年東京生まれ。フォトスタジオアシスタントを経てフリーランスのフォトグラファーへ。雑誌やWeb媒体の撮影を担当。自動車雑誌の撮影と並行してユーザーインタビューやイベントレポートを担当することで、ライターとしても活動。国内最高峰のレース「SUPER GT選手権」を長年取材。新車情報やレースレポート、イベントレポートなどを雑誌やWebに寄稿する。

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