都営バス“最強”の秘境路線「上成木行き」終点はどんなところ? “最果てバス停”はトンネル抜けたら「すぐ埼玉」 超のどかな「梅76」系統に乗る 〜果てなき路線バスの旅〜

知らない道路をひたすらたどり、ふだん行くことのない街の素性を知り、そして見たことのない景色に出会える。それが「路線バスの旅」の魅力です。今回は「都営バス」の秘境路線、「梅76」系統に乗って、最果てのバス停まで行ってきました。

都バスの秘境路線!? 「梅76」系統に乗ってみた!

 街で見かける路線バスの路線網は、毛細血管のように全国各地に張り巡らされ、都市間を結ぶだけではなく、大通りから1本入った生活道路や狭隘な路地、鉄道のない僻地、山奥の秘境を走る路線も数多くあります。
 
 バス停をひとつずつ辿りながら路線バスで目的地を目指す旅は、“直行の旅”ではなく、クルマや鉄道旅行では一瞬で見逃してしまう「その土地の素顔」を知ることができます。
 
 地元の乗客に溶け込み、観光客としてではなく、「その町の日常」にそっとお邪魔しているような感覚は、他の移動手段ではなかなか味わえません。
 
 今回は、東京都民の“アシ”である都営バス(東京都交通局)で、ほぼ埼玉県の「秘境」に行ける路線に乗ってきました。

 都営バスは主に東京23区内のJR山手線内を中心とし、荒川の西側や江戸川区の広い範囲で運行していますが、実は多摩地域の一部でも運行しています。

 西武拝島線の東大和市駅や同・新宿線の花小金井駅、JR青梅線の青梅駅や河辺駅などでも乗ることができ、ネットワークは23区内ほど密集してはいないものの、青梅街道を中心に地域輸送を担っています。

 さて、その路線のひとつである「梅76」系統は、青梅駅と宮ノ平駅の中間にある「裏宿町」から青梅駅を通って市内中心部を巡り、その後成木街道を通って、終点「上成木(かみなりき)」バス停まで向かう路線です。

 バス停を地図で辿っていくと、途中までは市街地ですが、JR青梅線から北に進むとどんどん山の中に入っていきます。

 終点の上成木バス停は、「都営バス最高地点」という異名を持つ最果てのバス停で、標高は300mと少しです。都営バスで「東京タワー(333m)」のトップデッキ(250m)よりも高いところに行けるのは驚きです。しかも埼玉県まで歩いていける地点にあります。

 果たしてどんな旅ができるのか。暖かい晴天に恵まれた2026年2月27日、旅(とバス)好きのくるまのニュース編集部員Nが乗り通してきました。

都営バスの秘境路線 「梅76 上成木行」に乗って終点へGO!
都営バスの秘境路線 「梅76 上成木行」に乗って終点へGO!

 青梅駅に降り立ったのは7時30分頃。駅前のバス乗り場は2つしかなく、都営バスは交番の前にあります。梅76以外にも青梅駅を通る路線は多く、バスを待つ10数人程度の通勤・通学客の姿も見えます。

 何本かのバスと、それに乗っていく通勤・通学客を見送ったあと、梅76がやってきました。車両は青梅支所所属のH878号車(三菱ふそう「エアロスター」・2PG-MP38FK)。車両は23区内のとさほど変わりませんが、フロントには「後のり」の表示が目立ちます。

 多摩エリアの都営バスは、都心部のように前扉から乗って支払い、中扉から降りる均一運賃ではなく、後ろ(中扉)から乗り、降りるときに前で運賃を支払う方式となっているためです。

 ICカードのタッチを忘れずに、後ろの扉から乗ってみます。さきほどのバス停の人の多さとは裏腹に、梅76には誰も乗りませんでした。

 7時47分定刻に出発した時点で、乗客は結局筆者(くるまのニュース編集部員N)ひとりだけでした。ちなみにこの路線は1日4本のみ。これを逃すと次は10時39分です。

 駅を出ると旧青梅街道を走ります。古くからありそうな瓦葺きの金物店や呉服店なども立ち並び、かつての宿場町の面影を感じます。

 最短ルートではない旧街道を巡れるのも、バス旅ならではでしょう。そしてこうした歴史ある商店が残っているのも、もしかすると今のうちかもしれません。写真はそこそこに車窓を楽しみ、景色を脳裏に焼き付けておこうと思います。

「昭和レトロ商品博物館」という施設が見え、もう途中下車して寄り道したくなりました。

 バス旅の魅力は、途中で見つけたスポットに立ち寄れることもひとつありますが、その気持ちを抑えつつ、乗り続けます。

 バスはそのまま東青梅駅まで東に進み、青梅市役所を経由して東青梅駅北口に回ります。ここからいよいよ成木街道に入っていきます。車内は数人の乗客が乗ってきました。

「次は終点 上成木です」のアナウンスが聞こえてきた
「次は終点 上成木です」のアナウンスが聞こえてきた

 青梅駅出発から約20分。駅前のにぎわいは徐々に薄れ、ぽつりぽつりと建物が少なくなっていきます。「聖明福祉協会前」バス停で数人が降りると、あたりはすっかり山道になってきました。

 窓に映る自然たっぷりの景色に対し、23区内と同じ車内アナウンス、座席にある都営バスのマスコットキャラクター「みんくる」の組み合わせが、いよいよ違和感を発揮してきました。

 そして「黒沢」バス停をすぎると、トンネルに突入します。都営バスが郊外のトンネルに入っていくのは、やはり違和感しかありません。ここは「新吹上トンネル」で、吹上峠を通過します。旧トンネルも隣にあるようで、心霊スポットとして有名なんだとか。

 トンネルを抜けると成木8丁目という交差点に当たります。この交差点は「2回」通ることになります。

 どういう意味かわからないと思いますが、まず交差点で左ルートに進み、都道193号線を進んでバス停を2つ通過したあと、「北小曽木」バス停でUターンするのです。

 Uターンせずにそのまま進めば、終点の上成木までサクッとショートカットできるのですが、大型車ではすれ違いが難しい狭さです。

 成木8丁目の交差点に戻り、青梅駅方面から見て右ルートの都道53号線に進みます。Yの字の経路をたどることになります。

 バスはそのまま成木川に沿うルートを通り、カーブもかなり増えてきました。気がついたら乗客は私ひとりだけになっていました。

「落石注意」の看板もあり、低速ギア固定でエアロスターの力強いエンジンが響き渡ります。山道を走っていることを実感しました。

 普通の都営バスなら、信号に次ぐ信号でストップアンドゴーばかりですが、巧みなハンドルさばきで山道をぐいぐいと止まらずに進んでいきます。

 青梅駅出発から約30分、「次は終点、上成木」のアナウンスが聞こえてきました。

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