スズキ新型「ちいさな高級SUV」イービターラ! FFは「大人になった“スイフトスポーツ”」!? “外車感”もある全長4.3m級の「新モデル」どんなクルマ?

2026年1月16日に発売されたばかりのスズキのBEV「e-VITARA(eビターラ)」。どのようなモデルなのでしょうか。山本シンヤ氏が一般公道で試乗し、解説します。

大人になったスイフトスポーツ

 軽自動車を中心に「小さなクルマ」を得意とするスズキですが、時々その枠を超えたフラッグシップモデルが登場します。

 古くはスズキ初の小型車乗用車として1965年に登場した「フロンテ800」。1995年にカルタスの上級モデルとして発売された「カルタスクレセント」。更に2009年に初のDセグメントに参入した「キザシ」。そして、今回紹介するスズキ初のBEV「eビターラ」になります。

 eビターラはインドで生産され、日本やヨーロッパをはじめとするグローバルで販売するスズキの“シン”世界戦略車ですが、「スズキらしさ」と「スズキらしからぬ」がミックスされたモデルになります。

 ちなみにトヨタとの協業の1つでもあり、トヨタ向けは「アーバンクルーザー」(デザインが異なる)と呼ばれて海外で発売されています。

 すでに昨年クローズドコース(袖ヶ浦フォレストレースウェイ)でチョイ乗りをしていますが、今回はリアルワールドでの試乗です。

スズキ新型「ちいさな高級SUV」イービターラどんなモデル?
スズキ新型「ちいさな高級SUV」イービターラどんなモデル?

 エクステリアはツルンとしたデザイン(空力を意識)したBEVが多い中、多角形・多面体構造のカクカクとしたデザインで、「ハスラー/クロスビー」の兄貴分でちょっとハイテク感がプラスされた印象です。

 ボディサイズは全長4275mm×全幅1800mm×全高1640mmとスズキしては巨体(!?)ですが、世のBEVの中ではコンパクトな部類に入ります。

 ボディカラーは質感の高さを感じる5色を用意していますが、個人的にはジムニーに設定されるフリスクブルーやシフォンアイボリーなどの明るい色も似合うと思いました。

 インテリアは奇をてらわないシンプルなデザインでスズキらしからぬ(失礼)仕立ての良さと質感に驚きますが、加飾のダークシルバーはセンスいいですが、ピアノブラックはギラつかせすぎかな…‥と。ダイヤル式のシフトはトヨタ「bZ4X」/スバル「ソルテラ」と同形状なのは、協業の証でもあります。

 表示分割ができるセンターモニターや表示レイアウト複数選択できるメーターなどは良く考えられていますが、気になる所もいくつか。

 先進性をアピールするため物理スイッチは最小限で各種操作はセンターのタッチパネルで行ないますが、設定の階層が深くて操作性が困難です。

 物理スイッチを極力減らしたい気持ちは解りますが、せめて頻繁に使いそうなエアコンAUTOやシートヒーター、回生ブレーキ調整(3段階)などは直感的な操作レイアウトもしくはショートカットが欲しいです。

 個人的にはエアコンやシフト周りのスイッチの割り当てに改善代があるように感じました。その辺りを開発陣に伝えると「認識はしていますので、今後の開発に活かしたい」との事でした。

 フロントシートに座るとガラス面積の大きさも相まって開放感があると同時に、ボンネット形状から車両感覚がつかみやすいのは嬉しいポイントです。

 ただ、リアシートの足元は2700mmのホイールベースが効いており十分以上のスペースですが、ルーフライニングの形状(シェードをしまうため)の影響で頭上スペースは170cmの筆者でギリギリ。

 更にブラック基調のインテリアカラーとウィンドウ面積が小さいので閉塞感が強めで、せっかくのスペースが活かし切れていないのは勿体ない。個人的には明るめのインテリアカラーだと印象は変わるかな……と。

 パワートレインはアイシンと共同開発したeアクスルを搭載。駆動方式はFF(128kW)と4WD(128/48kW)の2つ、FinDreams Battery(BYDの子会社)製のバッテリー(リン酸鉄)は49(X)/61(Z)kWh)の2つが用意されています。ちなみに今回の試乗車はFF/4WD共にZでした。

 その印象は良くも悪くも“普通”です。常用域でアクセル開度が少ないシーンでは、操作に対していい意味で “間”を持たせているのか、モリモリ湧き出るトルク感ではなくじわじわ湧き出るようなトルク感で、ガソリン車から乗り換えても違和感ないと思います。

 ただ、高速の合流などアクセル開度が高めのシーンではその間がちょっと大きく感じてしまい、BEVならではのレスポンスが感じにくいのは残念な部分です。

 ドライブモード(スポーツ/ノーマル/エコ)の差も「比べてみれば……」と言うレベルなのも勿体ない。せっかくならスポーツは「スイフトスポーツ顔負け」、逆にエコは「ケチケチだけど航続距離はこれだけ伸びます」くらいでもいいと思いました。

 ブレーキは少々硬めのフィーリングですがコントロール性は高いと感じました。ただ、回生ブレーキが強まる「イージードライブペダル(3段階に調整可能)」は最も強い設定でも減速Gはそれほど高くなく、アクセル操作のみで加減速の旨味は少なめ。ドライブモードと同じく、せっかく調整できるならメリハリを付けたほうがいいでしょう。

 この辺りはスズキ初の量産BEVと言う事で「ガソリン車から乗り換えても違和感のない」にこだわり素過ぎているような気がしました。ちなみに航続距離はFFが520km、4WDが472km(共にWLTCモード)ですが、リアルワールドでは380~400km前後かな……と。

 プラットフォームはBEV専用に開発された軽量・高剛性の「eハーテクト」を採用。サスペンションはフロント:ストラット/リア:マルチリンク、タイヤは225/55R18(試乗車はグッドイヤー製)とキザシ並み(!?)に贅沢に奢られています。

 その印象は欧州車……それもちょっと軟弱になった最新モデルではなく、ちょっと昔のオペル/欧州フォードのようなちょっと無機質だけど骨太で懐の深い乗り味と同じ“匂い”りを感じました。

 ちなみにスズキの走りを大きく変えた世界戦略車として初代となるスイフト(2004年)の走りのベンチマークはVWではなくフォード「フィエスタ」だったので、そこは今もブレていないのでしょう。

 開発陣は「FF/4WD共に同じ走りを目指した」と言いますが、実際に乗り比べると明確にキャラクターが異なります。

 FFは「より大人になったスイフトスポーツ」と言った印象です。ステアリングは重めの設定でドシっとしたフィールですが、せっかく最小回転半径5.2mと取り回し良好なのに操作性は女性ドライバーだとちょっと辛いように感じました。この辺りもドライブモードと連携できるといいのにな……と。

 ハンドリングは「君はスポーツバージョン?」と思うくらい軽快でキビキビした動きながら、リアはピターっと安定しており、ドシっとしているのに良く曲がる印象です。この辺りは4WDより100kg軽い車両重量とリアマルチリンクサスが効いているのでしょう。

 乗り心地は高速域では見事にフラット。一方常用域ではスッキリした足の動きはスポーティですが、入力が少々厳しいのとバネ上が常にヒョコヒョコ動くのは気になる所です。

 4WDに乗り換えるとFFで感じたネガがかなりのレベルで抑えられています。軽快でキビキビした印象は不変ですが、そこに“優しさ”と“しなやかさ”がプラス。例えるならば「より洗練されたキザシ」のような感じです。

 ステアリングはFFよりも軽めで滑らかな印象。ハンドリングはFFよりもキビキビ感は少し劣りますが、むしろ旋回の“様”はより素直かつ自然に感じました。この辺りは前後バランスの良さ(4輪の接地荷重が良い方向にある!?)とリアモーターが旋回をさり気なくサポート(ALLGRIP-e:走行状態に応じて前後トルク配分を自動制御)しているのでしょう。

 乗り心地はFF+100kgの車両重量が効いているようで、常用域では入力のカドが丸さとシットリとした足の動きも相まってバネ上のヒョコヒョコは最小限に抑えられています。その結果、快適性はFFよりも高いレベルにあります。更に高速域ではボディサイズやセグメントを忘れる重厚さを感じたくらいです。

 ちなみにeビターラはスズキ初となるSDV(ソフトウエアディファインドビークル)でもありますが、これを活用したアップデート(パワートレインや回生ブレーキ、そしてインフォテイメント)も期待したい所です。

 いくつか改善点はあるものの、日本にありそうでない絶妙なボディサイズ(全幅以外)、ファーストカーでもOKな遠出もできる航続距離、そして補助金を含めると現実的な値段設定(2026年3月末まで全グレード127万円)など、総じて言うと、「実に素直」、「実に真面目」に作られたスズキらしい世界戦略BEVだと感じました。

 メインマーケットは欧州市場ですが、日本市場でもスズキの新フラッグシップとしてシッカリと育てていってほしいです。決してキザシのように“隠れキャラ”にはしないように…。

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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