自動車保険の「等級」とは?
自動車保険では「ノンフリート等級別料率制度」をもとに等級が設定されており、この「等級」によって、保険料の割増引率が決まります。事故を起こさなかった人は等級が上がることで保険料が安くなり、事故を起こした人は等級が下がることで保険料が高くなるという仕組みで、それぞれの契約者間の保険料負担の公平性を保つための制度です。等級は一時的なものではなく、車を乗り換えたり保険会社を変えたりしても引き継ぐことができるほか、同居の家族であれば名義を変えて引き継ぐことも可能です。
自動車保険の「等級」とは?ノンフリート等級について
自動車保険では、「ノンフリート等級別料率制度」という仕組みが採用されており、事故の有無やその内容に応じて「等級」を決定し、その等級に応じた保険料の割増引率を適用しています。この仕組みは所有・使用する車が9台以下の場合に適用され、ノンフリート等級は車ごとに等級が適用されます。
一方、所有・使用する車が10台以上となる場合は、「フリート契約制度」が採用されています。法人・個人を問わず、フリート契約となる場合は所有・使用する車全体で、事故歴などをもとに料率が決定される仕組みとなっています。
自動車保険のノンフリート等級は一般的に1〜20等級まであり、1等級がもっとも保険料が高く、20等級がもっとも安くなります。共済組合などの一部では、22等級まで設定されている会社もあります。
自動車保険の「等級」の仕組みは?
ノンフリート等級は1等級から20等級まで設定されていますが、自動車保険を初めて契約する場合は、6等級からスタートします。1年間事故がなければ、翌年は1等級上がり、保険料の割引率も大きくなります。
一方で、事故を起こして保険を使うと等級がダウンするため、割引率が下がったり、等級によっては割り増しになったりします。ダウンする等級は事故の内容や件数によってことなりますが、「3等級ダウン事故」「1等級ダウン事故」「ノーカウント事故」のいずれかに分けられます。
等級は事故が発生する度に、事故ごとにカウントするため、保険期間の1年のあいだに複数回の事故を起こしてしまうと等級が大きく下がり、翌年の保険料は高くなってしまいます。
また、事故を起こした契約者と無事故の契約者との保険料負担が不公平となることを避けるため、事故を起こして保険を使った契約者は、次の契約から一定の期間は無事故の場合より低い割引率が適用されます。
この期間を「事故有係数適用期間」といい、具体的には、事故を起こしていない15等級の人と、事故を起こして等級ダウンした15等級の人とでは、同じ15等級でも異なる割引率が適用されます。
なお、自動車保険には「等級情報交換制度」という制度があり、各損害保険会社は日本損害保険協会を通じて、等級や事故有係数適用期間などの契約情報を共有しています。等級が下がり過ぎてしまったからといって、保険会社を変えて新たに契約したとしても、契約者情報や車のナンバーなどから、本来適用すべき等級が特定されるため、等級のリセットはできません。
この制度があることで、本来の等級を引き継ぐことができ、それぞれの契約者が負担する保険料が公平に保たれています。
根岸 潤
事故をすると「等級」はどのくらい下がる?
自動車保険を使って保険金の支払いを受けた場合、等級が下がるかどうか、下がる場合は何等級下がるのかは、前述したとおり、その事故の内容によって異なります。
自動車保険で保険金の支払いを受ける事故は、「ノーカウント事故」「3等級ダウン事故」「1等級ダウン事故」の3種類に分けられますが、それぞれどのような場合に、適用されるのかみていきましょう。
「ノーカウント事故」
ノーカウント事故とは、単独事故などで自分のケガの治療費のために人身傷害保険からのみ保険金が支払われた場合や、被害事故で対人・対物賠償や車両保険の支払いがなく弁護士費用特約やファミリーバイク特約などの特約のみを利用した場合などが該当します。
ノーカウント事故は事故件数にカウントしないため、翌年の等級は無事故の場合と同様に1等級上がります。
POINT
- 単独事故を起こし、自分のケガの治療費について保険を利用した場合
- 弁護士費用特約やファミリーバイク特約など、特定の特約のみを利用した場合
「1等級ダウン事故」
1等級ダウン事故は、車両保険を利用した事故のうち、火災や台風、洪水などの自然災害によるものや、飛び石や盗難、落書きされてしまったなどの場合です。
POINT
- 火災や台風、洪水などの自然災害で、自分の車の修理のために保険を利用した場合
- 走行中の飛び石で損傷したフロントガラスを修理するために保険を利用した場合
「3等級ダウン事故」
3等級ダウン事故とは、「ノーカウント事故」「1等級ダウン事故」のいずれにも該当しない事故のことで、ほかの車と衝突し、相手の車の修理費のために対物賠償保険を使った場合や、単独事故を起こしてしまい、自分の車を修理するために車両保険を使用した場合などが該当します。
POINT
- ほかの車と衝突し、相手の車の修理費のために保険を利用した場合
- 人にぶつかりケガをさせてしまい、相手の治療費などのために保険を利用した場合
- 単独事故を起こしてしまい、自分の車の修理のために保険を利用した場合
1回の事故で複数の保険金が支払われた場合は、どうなるの?
1回の事故で、「3等級ダウン事故」に該当する複数の保険金が支払われた場合や、「1等級ダウン事故」と「3等級ダウン事故」など異なる内容の事故があった場合は、重複して適用されるのではなく、ダウンする等級の多いものが適用されます。
たとえば1回の事故で、相手の車の修理費と自分の車の修理費のために保険を利用した場合、相手の車の修理費は対物賠償保険のため3等級ダウン事故、自分の車の修理費も車両保険を利用するため3等級ダウン事故となりますが、この場合でも1回の事故であるため「3等級ダウン事故」が1件とカウントされます。
なお、ノーカウント事故は事故回数にカウントしないため、ノーカウント事故だけが複数回発生した場合は等級ダウンせず、翌年は1等級上がります。
根岸 潤
同じ等級でも割引率が違う?事故有係数と無事故係数について
自動車保険の等級制度には「事故有係数」と「無事故係数」があり、事故を起こして保険金が支払われた契約とそうでない契約とでは、同一の等級でも割引率が異なります。
「3等級ダウン事故」または「1等級ダウン事故」によって保険金が支払われると、その翌年度の契約から一定の期間は「事故有係数適用期間」となり、その期間は「事故有」の割引率が適用されます。3等級ダウン事故であれば3年、1等級ダウン事故の場合は1年の適用期間となります。
また、1年の保険期間内に1等級ダウン事故と3等級ダウン事故が発生した場合は事故有係数適用期間が「4年」となるなど、複数の等級ダウン事故があった場合は、事故有係数適用期間も加算されます。
しかし、複数回の等級ダウン事故を起こして、6等級以上の等級ダウンが発生しても、事故有係数適用期間は最大6年となります。たとえば事故有係数適用期間が5年のときに3等級ダウン事故が発生すると、等級は3等級ダウンとなりますが、事故有係数適用期間はプラス1年の「6年」になります。
なお、事故有係数適用期間についても、等級と同様に引き継がれるため、契約の車や保険会社を変えたとしてもリセットすることはできません。
自分の「等級」の調べ方は?
現在の自分の等級を調べるには、いくつかの方法があります。
まず、保険証券で確認する方法です。契約時に発行された保険証券には、保険期間や補償内容などのほか、現在の等級や事故有係数についても記載されています。手元に保険証券がある場合には、最もかんたんに確認することができます。
最近では保険証券を紙ではなくWeb上で発行してもらうよう選択できる場合や、そもそも紙の保険証券が発行されない保険会社もあります。この場合は、契約者専用ページやマイページなどで、24時間365日いつでも確認することが可能です。
保険証券を紛失してしまった場合や、マイページへのログイン方法がわからなくなってしまった場合は、保険会社や担当の保険代理店に電話で問い合わせることが必要です。証券番号がわかる場合は証券番号を伝えるとスムーズですが、わからない場合は契約者名のほか、車のナンバーなどを伝えるといいでしょう。
自動車保険の「等級」の引継ぎについて
自動車保険の等級は、車を買い替えたり、保険会社を切り替えたとしても引き継ぐことが可能です。等級の引継ぎについて、それぞれ状況で詳しく見てきましょう
・車を買い替えた場合
車を買い替えた場合は「車両入替」の手続きをおこない、以前の車との保険料の差額を追加支払いまたは返還を受けることで、これまでの等級のまま契約を続けることが可能です。
・保険会社、共済を切り替えた場合
保険会社、共済を切り替える場合にも、これまでの等級を引き継いで新たに自動車保険を契約することが可能です。ただし「共済」から引き継ぐ、「共済」へ引き継ぐ場合には注意が必要です。教職員共済や都市職員共済などでは引継ぎができなかったり、問題なく引き継げる場合でも、事故有係数適用期間の扱いが違かったりと各保険会社・共済で対応が違うので、切り替え前に必ず確認してください。
・一時的に車を手放す場合
一時的に車を手放すことになった場合や長期の海外渡航をする場合は、加入している自動車保険が7等級以上あるば「中断証明書」を取得することで引き継ぐことが可能です。「中断証明書」を取得しておけば、将来また新たに車を取得する際や帰国してまた車に乗ることになった際に、中断時の等級から再開することができます。
根岸 潤
セカンドカーの「等級」について
自動車保険に加入する際、通常であれば6等級からのスタートになりますが、すでに自動車保険を契約している人で、その契約の等級が11等級以上であれば、7等級からスタートすることができるセカンドカー割引(複数所有新規)という仕組みがあります。
セカンドカー割引を適用するためには、現在契約している1台目の等級が11等級以上であることのほか、1台目の車と新しく契約しようとする2台目の車が、いずれも自家用普通乗用車や自家用系四輪乗用車などの自家用8車種に該当すること、それぞれの契約の記名被保険者が同じであるか、配偶者、同居の家族であることが必要です。
なお、1台目に契約している保険会社と2台目で契約する保険会社が異なっている場合でも、セカンドカー割引は問題なく適用が可能です。
いわゆる純新規契約として6等級からスタートする場合は、2022年10月現在4%の割増となるところ、7等級からのスタートとなれば34%の割引率が適用されますので、同居の家族で2台目以降の車を新しく取得する場合は、すでに持っている車の等級を確認してみるといいでしょう。
まとめ
自動車保険の等級は、事故を起こした契約者と無事故の契約者との保険料負担の公平性を保つための保険料の割引制度です。等級は事故の件数と内容に応じて決定され、事故を起こして保険金の支払いを受けると等級が下がるため保険料が上がり、事故を起こさなければ等級は上がるため保険料は安くなります。
等級を正しく理解し、自身の将来の支出を想定できるので、しっかりと把握していきましょう。
※契約の詳細や支払い条件などは、保険会社によって異なる部分があります。詳細については、契約中・契約予定の保険商品の必ず「パンフレット」、「契約概要」、「注意喚起情報」、「ご契約のしおり・約款」等を必ずご確認下さい。
※本記事の情報は、2022年10月現在の情報になります。
以前加入していた大手保険会社よりも3割くらい安かったのと、事故時の対応の早さに利点を感じました。後ろからぶつけられた事故があったのですが、私も走行していた為2:8の過失になると警察の方からも想定されましたが、結果1.5:8.5に割合が減りました。お相手の方への連絡も早かったようで、ストレスなく終えることが出来ました。
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