「MTのスポーツAWDが欲しい!」切実な声にスバルが応える!? 6速MT×左ハンドルの「カナダのWRX」試乗から見えた本気とは! “素性の良さ”は想像以上だ!
スバルファンが熱望する「MTのスポーツAWD」の復活の可能性を探るべく、カナダ仕様の6速MTを搭載した「WRX」に試乗しました。最新モデルが示す走りの素性や、気になる日本発売の行方はどうなるのでしょうか。
日本でMTのWRX復活か!?
カナダ仕様のWRXスポーツのパワートレインはWRX S4と同じ2.4リッター水平対向4気筒ターボ「FA24」ですが、出力は271hp(275ps)/350Nmと、日本仕様(275ps/375Nm)よりもトルクが低い理由は、トランスミッションに合わせたセットアップとしたからです。
また、搭載される6速MTはWRX STIに搭載されていた「TY85」(約700Nmまで対応)ではなく、「レガシィ」などに搭載されていた「TY75」(約360Nmまで対応)がベースとなっており、トルク容量の観点からスペックが抑えられているそうです。

スペック重視の人からは「何だよ!」と言われそうですが、カナダ仕様のMT車に実際に乗ると実用域は日本仕様よりもターボラグが少なく、ドライバビリティの良さが光ります。
また、MTならではのダイレクト感も相まって、小気味良さすら感じる回転フィーリングとレッドゾーンの6000rpmまでストレスなく回る伸び感など、「FA24ターボって、こんなに良かったっけ?」と思うくらい好印象。
とはいえ、重箱の隅を突くと、ゼロ発進時に若干トルクの細さやパンチの薄さを感じますが、「モッサリ→スッキリ」になったエンジン特性で帳消しです。
6速MTは軽い操作感で、シフトストロークは他社スポーツ系のそれと比べると若干長めですが、「カチっ」よりも「スコっ」といった節度感のフィーリングは、洗練されたエンジンフィールとマッチしています。ただ、クラッチは最近のクルマにしてはやや重めです。
エンジンレスポンスが過敏でないのとペダル配置もいいので、シフトダウン時の回転合わせは楽ですが、最新モデルらしくブリッピング機能はあっても良かったかなと思いました(ハイパフォX(ST-Qクラスに参戦中の開発車両)には装着されている)。
もちろん、アイサイト(ACC+ステアリング制御)も装備されているので、ロングドライブも苦になりません(30km/h以下で全車追従がキャンセルされるのはBRZのMT車と同じ)。
フットワーク系はフルインナーフレーム構造のスバルグローバルプラットフォーム(SGP)、ジオメトリー最適化のサスペンション、2ピニオン式EPSをはじめとする基本部分は同じですが、4WDシステムはMT車用のビスカスLSD付センターデフ方式AWDを採用。サスペンションのセットアップは仕向け地の嗜好に合わせたものとなっています(タイヤは変更無し)。
その走りは、AWDとは思えない「一体感」と「コントロール性」、そして「良く曲がる」という点は日本仕様と変わりませんが、ステア系は俊敏さを重視、サスペンションは硬めなのに加えて、コーナリングの“様”は日本仕様よりもより自然、かつスッキリ曲がる印象です。
この辺りはシンプルなAWDシステムによるものが大きいと予想していますが、まさに素性の良さが滲み出てくるハンドリングだと思います。
味付けのイメージ的には、スポーツとコンフォートのバランスが、日本仕様は6:4なのに対して6.5:3.5くらいのバランスで、個人的には日本の路面では日本仕様より軽快さがあるもののバネ下の重さ(若干ドタバタ)が気になりましたが、海外でのWRXのキャラクターを考えるとわかりやすさは大事でしょう。
日本仕様のWRX S4は、良くも悪くも“背伸び”をしたAWDスポーツですが、左ハンドル6速MTの海外モデルは等身大のAWDスポーツセダンといった印象です。
確かにスペック的には劣るところもありますが、そこはカスタマイズパーツでカバーできる範囲。そういう意味では、“美味しい素うどん”を食べた満足感に近いかもしれません。
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冒頭の、なぜこのタイミングで海外仕様のMTのWRXの試乗のお誘いがあったのか、ということですが、この記事を見た「スバルファンの反応を確認したい」と考えると素直だと筆者は推測します。
つまり、この仕様に近いモデルが日本でも間もなく登場する可能性があり、もちろんカナダ仕様のような素のモデルというわけにはいかず、なんらかの“プラスα”があると思っています。そして、Xデーはそう遠くないと思っています。
ちなみに2025年12月25日に、スバルは「東京オートサロン2026」の出展概要を発表していますが、ブースのイメージ画像を見るとセンターに置かれたモデルが真っ黒なシルエットとなっており、車種が判別できません。
なお、その車両の後ろのスクリーンにはWRX S4の走行シーンが映し出されていますが、ということは……。東京オートサロン2026での発表を楽しみに待ちましょう。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。





























































