当時262万円! トヨタの「“小さめ”高級ミニバン」が魅力的! 「5ナンバーサイズ」で「アルファード顔」採用! ちょうどいいサイズに「豪華内外装」採用の「エスクァイア」は今欲しい1台
トヨタの高級ミニバン市場において、特別な位置づけを持つクルマが存在していました。それが「エスクァイア」です。「アルファード」のような高級感を持ちながら、取り回しのしやすいサイズで展開された、このモデルはどのような特徴を持っていたのでしょうか。
「アルファード」はいらないが「ノア/ヴォク」よりも高級な“ちょうど良さ”
高級ミニバンというカテゴリーには、トヨタ「アルファード/ヴェルファイア」や日産「エルグランド」などが挙げられますが、これらは大柄なボディサイズが特徴で、取り回しは容易ではありません。
一方で、かつてトヨタには、より扱いやすいサイズながら高級志向を持つミニバンが存在していました。2014年10月に発売された「エスクァイア」がそのモデルです。
トヨタはこのクルマを「新上級コンパクトキャブワゴン」として位置づけました。開発コンセプトは、5ナンバーサイズのミニバンに、ワンランク上の高級感を与え、新たな選択肢を提供するというものでした。
エスクァイアは、ミドルサイズミニバンの人気モデル「ノア/ヴォクシー」の3代目をベースとしています。
ボディやパワートレインの多くは共通でしたが、内外装には専用の装備が与えられました。ボディサイズは全長4695mm×全幅1695mm×全高1825-1865mm、ホイールベースは2850mmとなっており、全車5ナンバー規格に収まる設計となっています。
エクステリアデザインでは、特に存在感のあるフロントマスクが特徴的です。バンパー下部まで延長されたメッキの大型フロントグリルには縦フィン形状が採用され、先代アルファードを思わせる堂々とした表情に仕上げられていました。
フォグランプベゼルやウインドウモールにもメッキ加飾が施され、全体的に輝きを強調する意匠となっています。
さらにフロントエンブレムにも工夫がなされていました。中世ヨーロッパの従騎士が持つ盾と矛、紳士のスーツ姿の襟元、そして略称「Esq」の文字をモチーフにしたデザインで、特別感を演出しています。
インテリアもノア/ヴォクシーと基本的な構造は共通でしたが、インパネやドアトリムに合成皮革を採用し、ステッチによる高級感を表現。黒木目や金属調の加飾も取り入れられ、上質な雰囲気づくりがなされています。
メーターやエアコンパネルもエスクァイア専用設計とし、ピアノブラックや金属調リングを採用することで、細部にまでモダンな印象を与え、ノア/ヴォクシーから徹底した差別化が図られています。
上級グレードのシートは合成皮革を採用し、内装カラーには落ち着いた濃赤の「バーガンディ」も設定されるなど、ラージミニバンに匹敵する豪華な室内空間となっていました。
パワートレインについてはノア/ヴォクシーと全く同一で、2リッターガソリンエンジンと1.8リッターガソリンハイブリッドの2種類が用意され、駆動方式はFFが基本でしたが、2リッターモデルには4WDの設定もありました。
発売当時の価格は262万2857円から320万4000円で、ノア/ヴォクシーよりも約40万円高い価格帯に位置づけられ、さらに販売チャンネルも「トヨペット店」と「トヨタ店」という上級車を扱う店舗限定での展開となるなど、販売戦略においても差別化がなされています。

2017年にはマイナーチェンジが実施され、フロントデザインはさらに迫力あるものに変更。
また、最上級パッケージとして「Gi“Premium Package”」も新設定され、ブラウンレーザーライン加飾や「ブランノーブ」素材を用いたシート表皮など、高級路線がさらに強化されています。
このような特色を持つエスクァイアでしたが、販売面ではやや苦戦を強いられることになりました。
発売当初は順調な売れ行きを示していたものの、価格的にはアルファードのベースグレードに近く、より本格的な高級ミニバンが手に入ることから、敬遠されるようになったのです。
さらに2020年には、トヨタの販売チャンネル制度が廃止され、それまで上級店舗限定だったエスクァイアがどの店舗でも販売されることになり、特別感が薄れる結果となりました。
結局、2022年のノア/ヴォクシーのフルモデルチェンジのタイミングでラインナップから姿を消し、約8年の歴史に幕を閉じました。
しかし、現在の高級ミニバン市場では、2023年に登場した新型アルファードが人気を集めていますが、従来の「家族向け」から「ショーファーカー(送迎車)」としての需要が高まっており、さらなる高級路線にシフトしています。
そのため、最廉価モデルでも510万円からと、少し手を伸ばせば届く300万円台モデルは消滅し、ハイクラス指向となっています。
このような状況において、現行型ノア/ヴォクシーをベースにエスクァイアのような高級志向モデルが再登場すれば、手頃なサイズと価格帯で高級感を求めるユーザーから支持を集める可能性があるかもしれません。
「ちょうどいい高級さ」を持つミドルクラスの高級ミニバンに、新たな活路が見出せるのではないでしょうか。
Writer: 伊勢崎剛志
自動車販売から自動車雑誌編集部を経て、ライターとして独立。趣味も多彩だが、タイヤが付いているものはキホン何でも好きで、乗りもので出かけることも大好物。道路や旅にも精通し、執筆活動はそういった分野をメインに活動。
































