ホンダ「“2人乗り”スポーツカー」に注目! 9000回転まで「めちゃ回る」スゴい“自然吸気”エンジン搭載の希少FR“ハンドリング”マシン! 精悍ボディも超カッコいい「S2000」とは

ホンダ創立50周年を記念したFRスポーツ「S2000」は、生産終了から15年以上を経ても、今なおその価値は上がり続けています。どのようなクルマなのでしょうか。

今こそ復活に期待したいホンダの名車「S2000」

 ホンダ創立50周年を記念し誕生したホンダ「S2000」は、同社にとっても希少な存在のスポーツカーです。

 その価値が今、あらためて高まっています。

精悍ボディも超カッコいい!
精悍ボディも超カッコいい!

 S2000は、1999年4月に本田技研工業創立50周年を記念し、「S800」以来となるFRレイアウトを採用して登場しました。

 発売当初の価格は338万円からで、手の届くピュアスポーツとして設定されています。

 その特徴は、ロングノーズ・ショートデッキの美しいプロポーションと、オープンボディながら高い剛性を実現した「ハイXボーンフレーム構造」にありました。

 心臓部は、自然吸気(NA)エンジンとして驚異的な9000rpmを許容する2リッター「F20C型」VTECエンジンです。

 これに組み合わされるのは、専用開発の6速MTのみでした。

 その歴史の後半、2005年に国内仕様のエンジンは2.2リッターの「F22C型」へと変更。最高出力は初期型の250PSから242PSへとわずかに低下しましたが、中低速トルクを増強し、扱いやすさを向上させました。

 2007年に「タイプS」が登場した後、2009年6月に10年間の歴史に幕を下ろしています。

 S2000の生産終了について、ホンダは公式に具体的な理由を発表していません。

 しかしメディアなどでは、その背景に複数の要因があったと分析されています。最大の要因は、2000年代後半に市場の主役がミニバンやSUVへと移行し、2シータースポーツ市場が世界的に縮小したことです。

 さらに、2008年のリーマン・ショックが趣味性の高いクルマの販売に深刻な打撃を与えました。

 また、年々厳しくなる排ガス規制や衝突安全基準、特に歩行者保護要件などに対応するには、プラットフォームからの再設計が必要で、莫大な開発コストが見込まれたことも指摘されています。

 S2000は専用設計の部分が多く、ホンダには他にFRプラットフォームを持つ車種がなかったため、コスト分散が困難でした。限られた販売台数のS2000のために新たなFR基盤を開発するより、主力車種に経営資源を集中させることは、企業として合理的な判断だったと考えられています。

 現在、S2000の中古車は「希少」な状態へと移行しつつあります。

 状態の良い個体は年々減少し、海外での人気を理由とした輸出も影響しています。相場は広く、おおむね250万円から1000万円超にまで及び、中心価格帯は450万円から650万円前後です。

 後期型(AP2)やタイプSは特に人気で、前期型(AP1)に比べ100万円以上の価格差がつくことも珍しくありません。市場は、新車価格を上回る低走行のノーマル車と、カスタムが施された個体とで完全に二極化しています。

 維持のハードルも低くはありません。内装の樹脂パーツなど一部の純正部品はすでに生産終了しています。

 弱点として、高回転型エンジンゆえのオイル消費や、エンジンマウント、サスペンションブッシュの経年劣化などが挙げられ、これらのリフレッシュには相応の費用が必要です。

 SNS上では、S2000に対する熱量の高い声が溢れています。FRスポーツの王道を行くロングノーズ・ショートデッキのデザインは「時代を超えて美しい」と再評価されています。

 また、9000rpmまで吹け上がるNAエンジンの官能的なサウンドと加速感は、もはや失われた芸術と見なされ、このクルマの核心的価値として語られています。

 一方で「維持の悩み共有」も活発です。

 廃盤部品の探索や高額な整備費用といった苦労が共有されていますが、それはこの特別なクルマを維持するための「儀式」として捉えられ、オーナー同士の強い連帯感を生む要因となっています。

 S2000の復活の可能性については、内燃機関搭載のFRモデルと考えた場合、残念ながら非常に低いと考えられます。

 2025年7月には、元祖「デートカー」と呼ばれたスポーツクーペ「プレリュード」が復活しました。S2000の直接的な後継車は期待できないものの、ホンダがスポーツカーの灯を消さない意思を示したことを確認できます。

 しかし、プレリュードの登場によりブランド内での役割が明確化され、S2000のようなピュアFRスポーツが復活する可能性は、より一層低くなったと考えるのが自然でしょう。

 ただし電動化されたオープンスポーツカーという成り立ちなら、新たな需要も見込まれるかもしれません。

 とはいえそれならば、「プレリュードのオープン化」がもっとも近道といえ、その場合はやはりS2000の純粋な後継車とはいえないところです。

※ ※ ※

 S2000の価値は、過去の名車というノスタルジーの中にあるのではありません。

 デジタル化された現代において、自らの五感でエンジンを回し、マシンと対話する。その純粋で代替不可能なドライビング体験を今なお提供してくれる点にこそ、S2000を選ぶ理由が存在するのです。

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Writer: 佐藤 亨

自動車・交通分野を専門とするフリーライター。自動車系Webメディア編集部での長年の経験と豊富な知識を生かし、幅広いテーマをわかりやすく記事化する。趣味は全国各地のグルメ巡りと、猫を愛でること。

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