中国産の新型「“格安”SUV」登場!? 約130万円も安い「スーパーハイブリッド」実際どう? 上質インテリアもイイ「BYDシーライオン6」とは

BYD日本法人は2025年12月1日、新型SUV「BYD SEALION 6(以下、シーライオン6)」を正式発表しました。どのようなモデルなのでしょうか。工藤貴宏が実際に試乗し解説します。

コスパ最強SUV!?

 それにしても、これには参りました。中国の自動車メーカー「BYD」の日本最新モデルとなる「シーライオン 6」に関して。何が凄いかって「価格」「装備の充実度」そして「走りの感触」の3つです。

 まずはシーライオン6について説明しておきましょう。BYDと聞けば多くの人はEV(電気自動車)をイメージすると思います。これまで日本にはEVしか導入していなかったので、それも当然のことでしょう。もともとバッテリーメーカーが会社の出発点ですしね。

 しかし、BYDの正体はそれだけではないのです。実はエンジンを積んだ「プラグインハイブリッド」も作っていて、昨今は中国国内でもエンジンを積まない純粋なEVに対してのプラグインハイブリッドの比率がグングン上昇中。エンジンもしっかりやっているというわけ。

中国産の新型「“格安”SUV」!?
中国産の新型「“格安”SUV」!?

 参考までにお伝えしておくと、同社が初の量産プラグインハイブリッドカーを発売したのは2008年。それは三菱「アウトランダーPHEV」が世に送り出される4年も前のことで、なんとプラグインハイブリッドカーの市販はBYDが世界初。

 つまりBYDは新エネルギー車(EV+プラグインハイブリッド)の販売台数で世界ナンバーワンであるだけでなく、プラグインハイブリッドカー(同社は「スーパーハイブリッド」と呼ぶ)のパイオニアであることを知れば、イメージが変わるのではないでしょうか。ちなみに同社のプラグインハイブリッドカーの累計販売台数は740万台を超えるとか。“74万台”じゃないですよ!

 そしてプラグインハイブリッドカーといえば欠かせないのは超高効率のエンジン。何を隠そうシーライオン6に積むエンジンの熱効率43.03%にもなり、世界トップ水準。これも凄すぎる。

 噂によるとBYDはEV化に舵を切ってエンジンの新規開発を止めた自動車先進国の自動車メーカーの優秀なエンジニアを募り、彼らにエンジンを開発させているとかいないとか。そんな話を聞いて「エンジン開発を辞めて本当にいいの?」と意識が高いメーカーの動きが心配になるのは筆者だけでしょうかね。

 さて、ずいぶん話が脱線しちゃいましたがこの記事のシーライオン6の“驚き”でした。

 まずは価格。現時点で日本へ導入されているシーライオン6のFFモデルの価格は、398万2000円。車格はDセグメントSUVなのでライバルといえばトヨタ「ハリアー」をはじめトヨタ「RAV4」、マツダ「CX-60」、三菱「アウトランダー」あたり。参考までにそれらのプラグインハイブリッドモデルはベーシックグレードを用意するアウトランダーがもっとも安くてベーシックグレード「M」であれば約530万円。

 しかしシーライオン6のFFモデルはなんと400万円を割り込む398万2000円。安い。なんという安さ。

 参考までに、少し車体サイズが小さくて、4WDでターボエンジンを積むけれどハイブリッドではない「スバル・フォレスター」の最安グレード「SPORT」の価格は404万8000円から。シーライオン6のFFモデルはプラグインハイブリッドなのにそれより安いんだから、これは衝撃すぎるってものです。加えて補助金もつくから、実際にはもっと安い感覚で買えてしまう。価格破壊すぎる。

 でも「安いだけではねぇ……」というのは当然の話。というわけで次の驚きは「装備の充実度」。

 装備リストをみると、15.6インチのタッチ式ディスプレイ(回転はしない!)を組み合わせたカーナビをはじめガラスサンルーフ、電動テールゲート、前席パワーシート、前席シートヒーター&ベンチレーションそしてプレミアムブランド「Infinity」のオーディオまで標準装備。

 ちょっと盛り込みすぎくらいの内容で、シート表皮こそ本革ではなく合皮だけど、装備水準的にはライバルたちの上級グレードに匹敵する水準だ。ちなみにインフォテイメントシステムはアプリを追加することで車内にてカラオケができ、マイクはディーラーオプションとして用意している。

 もちろん先進安全装備だって充実。カタログを見る限り「あればもっといいな」と思うのは後方の衝突被害軽減ブレーキとアクセル踏み間違い防止機能くらいである。
それでアンダー400万円ってなんというコスパの高さ。国産車なら安く見積もって「プラス200万円」という勢いだ。やりすぎじゃないだろうか。

 そして3つめの凄さは「走りの感触」。これが悪くないのだ。むしろ“けっこういい”である。

 ハイブリッドのシステムは基本的に三菱に近いタイプで、走行はあくまでモーターが中心。エンジンは発電機となることが追い。ただ高速領域や負荷の状況によってはエンジンのパワーも駆動力として使うようになっています。
 モーター最高出力は145kWでだいたい197ps。そして300Nmだから、ガソリン自然吸気エンジンであれば排気量3リッターレベルのトルクを発生する。車両重量は2トン弱とはいえ、動力性能は刺激的な速さこそないものの十分以上でスルスルと加速していくのが好印象です。

 モーター駆動中心なので加速感はEVに近い。躾もスムーズで「苦しゅうない」だし、文句のつけどころは全く見当たらない。

 そのうえで強調しておきたいのは、コーナリングもなかないいという事実。ハンドルを切れば素直に気持ちよく向きを変え、旋回中の安定感やコーナーとコーナーの“つながり”のリズムだってしっかりとれるから好印象。ひとことでいえば、動きにちぐはぐな部分やギクシャクがないのです。

 しいて言えば「乗り心地にちょっとだけ突き上げ感がある」というのが気になるところですが、これはタイヤの空気圧調整(わずかだけ下げる)で収まるかもしれないですね。そんなレベルです。

 シーライオン6の最大のパンチ力は価格が安いこと。そう筆者は考えます。しかし値段が安いだけのクルマだと「単なる安物」であり、クルマ好きにとっては「安物買いの銭失い」となってしまう。しかしシーライオン6はしっかり中身が伴っていて、いうなれば「コスパ最高!」。実際に乗ってみてそんなことを実感しました。

 なかには「中国車は信頼性が不安」と感じる人もいるかもしれませんが、BYDの新車保証は6年/15万kmと長い(ロードサービスも無料で付帯)し、さらにバッテリーと高電圧部品に関しては8年/16万kmまで保証。すなわち新車で買って6年までなら、何の不安もなく乗れるということです。それは知っておいていいでしょう。

ちなみに1充電でのEV走行距離は100km。そしてハイブリッドモード(外部充電なし)での燃費はWLTCモードで22.4km/L。日本仕様は使用燃料がハイオクではなくレギュラーガソリンというのもポイントですね。

 昨今、政治においては関係が悪化傾向にある日中ですが、民間レベルの交流や商品となれば話は別。世界中の自動車市場で日本車を脅かす存在となりつつあるメーカーの状況を知るためにも「いいものはいい」と素直に認めることが大切だと思います。

 もちろん、中国車の現状をしっかりと理解したうえで「日本の企業を応援し、日本の雇用を守るために日本車を買う」というのもまたひとつの考え方でしょう。セキュリティを懸念するのもリスクに対する考え方次第です。それはそれで否定することではありません。

 ただ、漠然と「欧州車ならいいけど、中国車はダメ」というのは少し違うかな、と筆者は思うのです。

【画像】超カッコイイ! これが中国産の新型「“格安”SUV」です! 画像を見る(87枚)

実績500万人超!お得に車売却(外部リンク)

画像ギャラリー

Writer: 工藤貴宏

1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。執筆で心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はマツダ CX-60/ホンダ S660。

新車不足で人気沸騰!欲しい車を中古車で探す

【NEW】自動車カタログでスペック情報を見る

トヨタ プリウス月1.3万円台〜(外部サイト)

【2025年最新】自動車保険満足度ランキング

最新記事

メーカーからクルマをさがす

国産自動車メーカー

輸入自動車メーカー