ステランティスは2025年11月21日、フィアットのコンパクトカー新型「500 Hybrid（500ハイブリッド）」をイタリア・トリノで世界初公開しました。

　フィアットを象徴するコンパクトカー「500（チンクエチェント）」が、18年ぶりに大幅刷新され、新型500ハイブリッドとして登場しました。

　丸目ライトと愛らしいフォルムといった500らしさを継承しながら、走りの根幹となるアーキテクチャから内外装、装備、安全性まで全面的にアップデートされているのが特徴です。

　新型500ハイブリッドの最大の進化点は、電気自動車「500e」と共通の最新アーキテクチャを採用したことです。従来のガソリン500はデビューから17年が経過しており、設計自体が旧世代となっていましたが、今回の刷新によって静粛性や剛性、乗り心地、車内レイアウトなど根本的な部分が現代基準へと生まれ変わりました。

　生産は初代500の生誕地でもあるイタリア・トリノのミラフィオリ工場で実施。左ハンドル仕様はすでに製造がスタートしており、右ハンドル仕様は2026年第2四半期から生産開始予定と案内されています。

　最終的には年間10万台規模の増産体制へ拡大する計画も明らかにされています。

　ボディタイプはハッチバック、観音開き式サブドアを備えた「3＋1」、そしてカブリオレの3種類。欧州仕様では「ICON」「LA PRIMA」、特別仕様車「TORINO」といった複数のグレードが設定され、ユーザーの用途に合わせた選択肢が用意されています。

　ボディサイズは現時点で公表されていませんが、同じ最新アーキテクチャを採用する500eは全長3630mm×全幅1685mm×全高1530mmです。日本の道路や駐車環境にも適したコンパクトなサイズ感といえます。

　パワートレインは1リッター直列3気筒ガソリンエンジンに12Vマイルドハイブリッドを組み合わせた最新仕様で、最高出力は65馬力。軽自動車並みとも言える控えめなパワーですが、その非力さこそが気軽に扱える魅力につながっています。

　さらに注目すべきは、すべてのグレードが6速MTのみを採用している点です。現時点でATやDCTの設定はなく、あえてMTのみとすることで「自分で操る」走りの楽しさを残した潔い構成となっています。

　電動化が進み、MT車が急速に減少している欧州で、ここまで明確にMTを残した新型車は非常に珍しい存在です。

　エクステリアはシンプルかつ上質なディテールへ進化。内装は10.25インチモニターを中心に機能性が向上し、グレードに応じてLEDヘッドライト、ワイヤレスCarPlay／Android Auto、オートエアコン、リアカメラ、シートヒーターなど、日常での使い勝手を大きく高める装備が標準または設定されています。

　燃費性能も向上し、欧州WLTPではハッチバックで約22km／L台。都市部での短距離利用を前提にしたちょうどいい効率性を実現しており、気負わず乗れるコンパクトカーとしての魅力が際立ちます。

　65馬力と聞くと非力に思えるかもしれませんが、新型500ハイブリッドは「速さ」ではなく「気持ちよさ」を重視したモデルです。最新アーキテクチャによる快適性向上、軽量ボディ、そしてMTならではのダイレクト感が合わさることで、日常の移動そのものが楽しくなる一台に仕上がっています。

　日本導入は現時点で発表されていません。しかし、コンパクトなサイズ感、愛らしいデザイン、そしてMTのみという唯一無二の個性は日本のクルマ好きにも刺さるはず。クラシック500の精神を現代に受け継いだこの新型500ハイブリッドが、日本の道路を走る日を強く期待したいところです。