給油並みの速さで「バッテリー交換」! いすゞとファミマが「エルフEV」実証を開始、横浜市で
いすゞ自動車とファミリーマートは、バッテリー交換式「エルフEV」を用いた配送実証を神奈川県横浜で開始しました。EV最大の課題「充電待ち時間」を、給油同等の短時間交換で解消する画期的なシステムです。24時間稼働のコンビニ配送を変える新たな挑戦とはどのようなものなのでしょうか。
充電待ちの「ダウンタイム」を解消せよ
2025年11月27日、いすゞ自動車とファミリーマートらは、神奈川県横浜市にてバッテリー交換式「エルフEV」を用いた配送実証実験の出発式を開催しました。
EV普及の課題である「充電待ち時間」を解消する画期的なシステムとはどのようなものなのでしょうか。コンビニ配送の現場で始まる新たな挑戦をレポートします。

いすゞ自動車とファミリーマート、伊藤忠商事、そして横浜市の4者は、バッテリー交換式EVトラックを用いた配送実証実験の出発式を横浜市内で執り行いました。
世界的にカーボンニュートラルへの動きが加速する中、物流業界でも商用車の電動化は急務となっています。
しかし、24時間体制で稼働し続けるコンビニエンスストアの配送業務において、電気自動車(BEV)の導入には大きな壁が立ちはだかっていました。それが、充電に要する「ダウンタイム(稼働停止時間)」の問題です。
この課題を解決すべく、今回導入されたのがバッテリー交換式の小型トラック「エルフEV」です。
最大の特徴は、車両の左右両側から同時にバッテリーパックを交換できるシステムを採用している点。
これにより、従来のディーゼル車における燃料給油とほぼ同等の時間でエネルギーの補給が完了するため、充電のために車両を止める必要がなくなります。
11月20日に行われた出発式では、実際にバッテリー交換のデモンストレーションが披露されました。
専用のステーションに入庫したエルフEVに対し、自動化された機器がバッテリーを交換。
その所要時間はわずか7分程度で完了し、満充電となった車両はすぐさま次の配送へと出発することが可能です。
今回の実証実験では、改造を施したバッテリー交換式のエルフEVが計3台配備されました。
これらの車両は、横浜市内にあるファミリーマート約80店舗へのルート配送を担います。
実証の主な目的は、現場での業務効率化と車両運行の継続性が保てるかの検証です。
従来のBEVトラックでは、配送の合間に長時間の充電時間を確保する必要があり、オペレーションが複雑化する懸念がありました。
しかし、バッテリー交換式であれば、ドライバーは給油感覚でステーションに立ち寄るだけで済み、運行スケジュールへの影響を最小限に抑えることができます。

ファミリーマートの物流本部長を務める大野泰氏は、同社が掲げる環境目標「ファミマ eco ビジョン 2050」に触れ、2030年までに配送トラックからのCO2排出量を2017年度比で30%削減する目標に向け、今回の実証が重要なマイルストーンになるとの期待を寄せています。
発式では各社の代表者が登壇し、それぞれの視点から今回のプロジェクトへの熱い思いを語りました。
いすゞ自動車の南真介社長は、コンビニ配送特有の過酷な稼働条件において、充電時間の短縮がいかに有効であるかを強調しました。
その上で、今回の取り組みを通じて見えてくる課題を一つずつクリアし、単なる実験で終わらせるのではなく、「実証」から「実用」のフェーズへと確実に進めていく姿勢を鮮明にしました。
将来的には、特定の用途に限らず、他社とも連携しながら汎用的なバッテリー交換の仕組みを構築していく構想も明かしています。
また、開催地である横浜市の山中竹春市長も、市内のCO2総排出量の約2割を運輸部門が占めている現状を指摘しました。
24時間稼働が必須の配送車における脱炭素化は、環境に優しい未来社会を実現するための大きな一歩であると評価しています。
今後、バッテリー交換式エルフEVは、物流業界が抱える「環境対応」と「効率化」という二律背反の課題に対し、この新たなソリューションがひとつの答えとなるのか、今後の運用実績に大きな注目が集まっています。
Writer: くるまのニュース編集部
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