ピーク時から「半分以下」に激減! なぜ「ガソリンスタンド」は30年で3万軒も消えた? “赤字3割超”の苦しい実態と“給油難民”を増やさないための対策とは
長年運転しているドライバーは、ここ数年でガソリンスタンドが減ったと感じているかもしれません。実際、ガソリンスタンドは「30年で半分以上減少」しています。一体なぜなのでしょうか。
6万軒以上あったガソリンスタンドが30年で3万軒以下に!? 理由は?
近年、ガソリンスタンドは減少しています。もともとガソリンスタンドだった場所が、中古車販売店や飲食店になっているのを見たことがある方もいるのではないでしょうか。
なぜガソリンスタンドが減少しているのか、現在も営業中の店舗は存続させるためにどのような対策をしているのか見ていきましょう。

ここ30年、ガソリンスタンドの軒数は毎年減少しています。平成6年度末(1994年度末)は6万421軒ありましたが、令和6年度末(2024年度末)は2万7009軒。3万軒以上も減少しているのです。
以下のグラフと数値は、「資源エネルギー庁」が公表している平成元年度末(1989年度末)から令和6年度末(2024年度末)までのガソリンスタンドの軒数です。

平成元年度末:5万8285軒
平成6年度末:6万421軒
平成11年度末:5万5153軒
平成16年度末:4万8672軒
平成21年度末:4万357軒
平成26年度末:3万3510軒
令和元年度末:2万9637軒
令和6年度末:2万7009軒
上記の通り、平成6年度末(1994年度末)の6万421軒をピークに毎年減少しています。
資源エネルギー庁が公表している「地域の燃料供給を支えるSSの重要性とSS経営を巡る現状について」によると、ガソリンスタンドを運営している97.3%は中小企業。そのうち、70.1%は1軒のみ運営している中小企業です。ガソリンスタンドを複数運営しているのは27.2%にとどまります。
また、黒字経営は62.9%、赤字経営は37.1%となっており、3割以上のガソリンスタンドは赤字です。
なお、2022年の小売業の売上高営業利益率は平均2.1%ですが、ガソリンスタンドの営業利益率は平均1.3%のため、黒字だからと言って経営が安定しているわけではありません。
資源エネルギー庁は、「過疎地等における中長期的な燃料供給網構築に関する調査」の結果をもとに、「SS運営上の課題」として以下を挙げています。
・燃料油の販売量減少
・従業員の確保
・施設や設備の老朽化
・粗利益の減少
・施設や設備の維持コスト捻出
・後継者の不在
・地下タンク規制強化への対応
・運転資金
特に、「燃料油の販売量減少」はガソリンスタンドにとって大きな課題です。近年は、ハイブリッド車を中心に低燃費のクルマが増えており、電気自動車も普及しています。そのため、単純に以前よりも給油する回数が減っています。
SS(サービスステーション)業界では、「ワンオーナー・ワンSS」という言葉があります。これは、「1人のオーナーが運営するガソリンスタンドの数は1軒」という意味です。また、ガソリンスタンドは家族経営の店舗が多く、後継者がいない場合は、廃業せざるを得ません。
長年営業している店舗では耐用年数に応じて地下タンクを入れ替える必要がありますが、費用が約2000万円かかるため、入れ替え時期を機に廃業する方もいます。
このように、ガソリンスタンドの経営には課題が多く、地方では過疎化が進んでいます。
資源エネルギー庁では、ガソリンスタンドの数が3カ所以下の市町村を「SS過疎地」として定義しており、令和7年3月31日時点で381市町村がSS過疎地です。また、「居住地から最寄りSSまで15km以上の市町村」は、291市町村となっています。
たとえば、令和7年3月31日時点で埼玉県の東秩父村や大阪府の豊能町にはガソリンスタンドが1軒もありません。観光地として有名な北海道のニセコ町は1軒のみ。都心部からそれほど遠くない、東京都狛江市や神奈川県逗子市でも3軒しかないのが現状です。
SS過疎地に住んでいる場合、ガソリンや灯油の入手が容易ではなくなります。
ガソリンスタンドは住民にとって大切な場所であり、災害時などは燃料供給拠点になるため、1軒もないという状況は避けたいところです。
このような状況を受け、近年はSS過疎地対策として、以下の地域で「公設民営」のガソリンスタンドが作られ運営されています。
・宮城県七ヶ宿町(七ヶ宿セルフSS)
・長野県阿智村(そのはらSS )
・奈良県川上村(かわかみSS )
・和歌山県すさみ町(江住SS)
上記のほかにも、岡山県津山市阿波地区や高知県四万十市大宮地区などでは、地域住民の共同出資で合同会社を設立してSSを運営しています。
ガソリンスタンドにカフェが併設されているのを見たことがある方もいるでしょうが、資源エネルギー庁が公開している「SS過疎地対策ハンドブック」でも油外ビジネスが推奨されています。
カフェやコインランドリーなどを併設して油外収入を増やすことで、持続的経営を目指すのが目的です。
※ ※ ※
ガソリンスタンドは年々減少しており、安定した経営が難しい状況です。
しかし、地域住民の協力によって存続している店舗があるように、重要なライフラインでもあります。
普段は価格で給油する店舗を選びがちですが、地域のガソリンスタンドを守るためにも、次回の給油は近所で行うといいかもれません。
Writer: マツ
2022年からフリーのWEBライターとして活動開始。上場企業からの依頼で、SEO記事を中心にVOD・通信系(WiFi・光回線など)などのジャンルを執筆して経験を積む。現在も企業が運営する複数のメディアで記事を執筆。読者に役立つ内容を、わかりやすく執筆することを心掛けている。

























