異例のミッドシップ4WD!「GRヤリス Mコンセプト」S耐岡山で初陣、「神に祈る時間」克服へ
トヨタの「GRヤリス Mコンセプト」が2025年10月のスーパー耐久 岡山で実戦デビューしました 。ベースのGRヤリスが抱える「神に祈る時間」という課題 を克服するため、「ミッドシップ4WD」という異色のレイアウトを採用したコンセプトカーです。
ついに実戦デビュー!「GRヤリス Mコンセプト」がS耐岡山で初出走!
トヨタが開発を進めてきた「GRヤリス Mコンセプト」が、2025年10月25日・26日に開催される「スーパー耐久シリーズ in 岡山」でついに実戦デビューを果たします。
このマシンは、WRC(世界ラリー選手権)をルーツに持つGRヤリスが抱えていた特有の課題を克服するため「ミッドシップ4WD」という異色のレイアウトを採用したコンセプトカーです。
開発のきっかけとなった「神に祈る時間」とは何だったのか、その詳細に迫ります。

WRC生まれのGRヤリスが抱えた「神に祈る時間」の悩みとは
GRヤリスは、「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」の象徴ともいえるスポーツカーです。
WRCで鍛え上げられたこのクルマは、フロントエンジン4WDというパッケージを採用しています。
このレイアウトは、WRCのレギュレーションが欧州市場向けの小型ハッチバックをベースとすることを前提としており、車内空間を確保するためでもありました。
しかし、このフロントエンジン4WDパッケージは、「止まる・曲がる・走る」という機能がフロントに集中する特性を持っていました。
その結果、フロントタイヤへの負荷が非常に大きくなり、リアタイヤの3倍もの頻度で交換作業が発生するという課題も。
さらに、ステアリングを切っても意図した通りに曲がらない「アンダーステア」も誘発。
この現象こそが、開発陣やドライバーの間で「神に祈る時間」と呼ばれる、コーナリング中の課題となっていました。
課題克服への挑戦。モリゾウ選手の「ミッドシップにしよう!」
この「神に祈る時間」を減少させ、車両の重量バランスを改善するために、新たな挑戦が始まりました。
それは、トヨタ社内にも知見がなかったという「ミッドシップ4WD」の開発です。
その第一声は、2021年のS耐(スーパー耐久)の現場でモリゾウ選手(豊田章男会長)から発せられた「ミッドシップにしよう!」という言葉です。
狙いは、車両の重量物であるエンジンを車体の中央に配置すること。これにより、前後の重量バランスや駆動力バランスを改善し、タイヤマネジメントの向上と旋回性能の向上を目指しました。

1.6Lから2.0Lへ。ドライバーの声を反映した「Mコンセプト」の進化
開発はレイアウト変更だけに留まりませんでした。
2023年1月にはフィンランドで試作1号車(1.6L)が完成。
しかし、モリゾウ選手や佐々木雅弘選手が試走した際、ニュルブルクリンクを戦うためには、より軽くて速い2.0Lエンジンが必要であると痛感したといいます。
このドライバーからのフィードバックをもとに改善が進められ、2.0L化が決定。
一方でトヨタのエンジン開発といえば、2024年1月に開催された「東京オートサロン2024」で明かされた2つのエンジン(小型化、高出力、低燃費が特徴)が話題です。
この2つのエンジンは、「敵は炭素」「(日本の自動車産業の)550万人の仲間を守る」というメッセージのもとトヨタが掲げるマルチパスウェイ戦略に沿ったもの。
東京オートサロン2024で豊田会長は「エンジンを作り続けましょう!」と呼びかけ、カーボンニュートラルに向けた現実的な手段として「まだまだエンジン技術に磨きがかけられる」と語っています。
そして、2025年1月に開催された「東京オートサロン2025」で、「GRヤリス Mコンセプト」のお披露目と共に新開発2.0Lエンジン(G20E)を搭載することが明かされました。
S耐岡山で実戦デビュー。ミッドシップ4WDの新たな挑戦
東京オートサロン2025での披露後もさらなる改善が加えられ 、ついに2025年10月のS耐 岡山のテスト走行にて、S耐仕様の「GRヤリス Mコンセプト」が初出走を迎えました。
実車を見ると従来のGRヤリスとは大きくことなり、とくにボディ後部が大きくワイド化されているのがわかります。
パッケージ的には、重量物が車体の中心に寄ったことで、旋回性能は格段に向上し、課題であった「神に祈る時間」を生むアンダーステアも減少の兆しを見せているといいます。
また、GRヤリスやGRカローラで鍛えた4WDシステム「GR-Four」をミッドシップと組み合わせたことで、4WDの強みである加速性能をいかに引き出すかという新たな挑戦も始まっています。
一方でこのマシンは、ドライバーへの技術的な要求も高く、より上級者向けの車両になったようです。
実際に運転した印象について佐々木選手は「コースの全域でまだ不安な部分があります。メカ的な心配というより乗り方次第でも気になる部分が変わってくるという感じです。ただ最初から完璧なら現状のようなテスト開発をしていないので、いまできるだけ不安要素を潰していく感じですね」とコメントしています。
果たして、S耐 岡山の予選・決勝ではどのような走りを見せるのか。モータースポーツの現場で生まれ、鍛えられ続ける「GRヤリス Mコンセプト」。その挑戦はまだ始まったばかりです。
Writer: くるまのニュース編集部
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