トヨタの精悍「“5人乗り”ハイトワゴン」がスゴい! ヤンチャ系「カクカクデザイン」×全長4m以下で「ちょうどイイサイズ」! “斬新”ドア仕様まであった「bB」に注目!
若者文化を象徴したトヨタのコンパクトハイトワゴン「bB」。なぜ市場から姿を消し、今になってその強烈な個性が再評価されているのでしょうか。
クルマを「個性のキャンバス」に変えた一台
トヨタがかつて販売していた「bB(ビービー)」は、「ユーザーが自由にカスタマイズするための素材」、すなわち「個性のキャンバス」という唯一無二の価値を追求した一台でした。
いまだに高い評価を集めるコンパクトハイトワゴンについて紹介します。

bBは2000年、初代「ヴィッツ」系のプラットフォームをベースに登場しました。約130万円からという若者にも手の届く価格で、カスタムベースとしての無限の可能性を提供しました。
なかでも2001年に追加された「bBオープンデッキ」は、斬新なコンセプトで注目されたモデルです。
ワゴンボディの後方部分を改装し、荷台をピックアップトラック化。さらに左側のドアをセンターピラーレスの観音開きとするなど、大胆過ぎるカスタマイズを施しました。
時代が早すぎたのか販売は振るわず、モデルチェンジを待たずにラインナップから消えてしまったのは残念な限りでした。
2005年には2代目へとモデルチェンジし、コンセプトを「クルマ型ミュージックプレイヤー」へと大きく転換しています。
上級グレードにはアームレストのオーディオコントローラーや9スピーカーのサウンドシステム、そして音と連動して明滅するイルミネーションが搭載され、まさに「クラブ・オン・ホイールズ」と呼ぶべき空間を演出しました。
デザインは、背の低い箱型の個性的なフォルムと、リビングのソファのような「マッタリモード」を持つシートが特徴です。
パワートレインは、1.3リッターまたは1.5リッターの直列4気筒エンジンに4速ATを組み合わせ、軽快な走りを実現していました。
最終型のボディサイズは全長3785mm(標準車)~3825mm(エアロパーツ装着車)、全幅1690mm、全高1635mmでした。搭載された1.5リッターエンジンは最高出力109PSを発揮しました。
初代の登場から16年後の2016年、後継モデルの「ルーミー/タンク」にその座を譲る形で、惜しまれつつも歴史に幕を下ろしています。
bBの生産終了の背景には、2代目へのモデルチェンジにおけるエクステリアデザインの大きな変更があったと考えられます。
初代はカスタムの自由度を高めた「素材」として、あえてシンプルな直線基調のベースデザインとすることで、熱心な支持層を獲得しました。
これに対し2代目は、箱型フォルムをベースにしながらも流麗なキャラクターラインを与えたり、前述の通りインテリアにもさまざまなカスタムアイテムを用意するなど、最初から完成したスタイルとして登場しています。
この変更は結果としてカスタムの幅を狭め、初代からのコアなファンが離れる大きな要因となりました。
また2009年から導入されたエコカー減税の対象外であったことも、bBの競争力を著しく低下させた理由となったことでしょう。
そして2016年に登場したルーミー/タンクは、両側スライドドアや優れた燃費性能を持ち、より高い実用性で市場のニーズをつかみました。
bBがこだわった「遊び」の要素は、時代の求める「実用性」の前に、その役割を終えたのです。
とはいえSNS上では、その強烈な個性から今なお根強い支持を集めています。
「こんなに尖ったデザインのクルマはもう出てこない」「唯一無二の存在感がある」など、画一的ではないスタイリングを再評価する声が後を絶ちません。
今でもカスタムベースとしての人気は高く、オーナー同士がSNSで情報交換を行う活発なコミュニティが存在します。
※ ※ ※
トヨタのラインナップにおいて、bBが担っていたコンパクトハイトワゴンの役割は、現在ルーミーが引き継いでいます。
いっぽうでbBが今なお愛されるのは、それが単なる移動手段ではなく、音楽や仲間との時間を楽しむための「最高の遊び道具」であり、ある特定の時代のカルチャーを凝縮した「走るタイムカプセル」だからです。
実用性を重視したルーミーとはまた別に、再びbBのコンセプトを受け継いだ遊び心あふれる廉価なコンパクトモデルが登場する日が待たれるところです。
Writer: 佐藤 亨
自動車・交通分野を専門とするフリーライター。自動車系Webメディア編集部での長年の経験と豊富な知識を生かし、幅広いテーマをわかりやすく記事化する。趣味は全国各地のグルメ巡りと、猫を愛でること。


























