トヨタ新型「コンパクトカー」がスゴイ! リリースに掲載されていない「見えない改良点」も明らかに! “デザイン刷新”の裏で「基本性能を底上げ」していた「アクア」の進化について開発陣に聞いてみた

トヨタ「アクア」が異例のデザイン刷新を含む大幅改良を実施しました。今回の改良ではデザインとともに、EPB採用や制御見直しなどで「走りの上質さ」を徹底追求。またリリースにも掲載されていない進化についても、自動車研究家・山本シンヤ氏が開発陣に聞いてみました。

デザインだけじゃない! リリースに掲載されていない進化とは?

 トヨタ「アクア」の一部改良について、TNGA世代のトヨタ車の改良が目に見えない部分、つまり走りの改良が主であることが多い中で、アクアの改良はデザインも大きく変わっている点が目を引きます。

 なぜここまで変える必要があったのか、開発者へのインタビューを通してその意図が明らかになりました。

開発陣に聞いて分かったリリース以外の改良点とは?
開発陣に聞いて分かったリリース以外の改良点とは?

 エクステリアの大胆な変更について、開発者は「市場の反応は我々の意図とは違っていたのは事実です」と認め、「『違いが良く解らない』『燃費があまり変わらない』と言う意見が多かったですね」とコメントしました。

 燃費については、スペック上の変化は小さいものの、実用燃費では雲泥の差があるのですが、なぜそのような評価になったのかを考えると、「従来モデルで狙った上質感/先進性/スムーズさを『クルマ全体でしっかり表現できていたのか』と言う部分に課題があったと思っています。そのやり残した事をもう一度見直したのが、今回のモデルになります」と説明しました。

 フロントマスクがプリウスとの共通性が高い点については、「意識的に寄せた部分はあります」とし、アクアが「本当に誰でも買えるハイブリッド」をコンセプトにプリウスの弟分として登場した経緯から、「改めてその立ち位置を明確にする想いもありました」と述べました。

 これは、初代が北米市場で「プリウスC」と呼ばれていたこともあり、ある意味での“原点回帰”とも言えます。

 インテリアについては、マイナーチェンジでできることが限られる中、「上質さや品質の高さを感じる内装を追求しました」とのこと。

 従来モデルではコストの問題で採用できなかった電子パーキングブレーキ(EPB)も搭載されており、これは「従来モデルユーザーからの声が多かったアイテムの1つですね」と導入の背景を語りました。

 さらに、「今回電子プラットフォームを一新、TSSも3.0にバージョンアップさせています」と補足しました。

 走りの変更についてのアナウンスはないものの、乗ると違いが明らかであり、パワートレインは従来モデル以上に電動車感が増している点について尋ねると、開発者は「従来モデルはバイポーラ型のバッテリーの初採用でしたので、安全を考慮してマージンを持って使っていました。ただ、他車種での実績から『もう少し電力・パワーを引き出せるよね』と、制御を見直しました」と説明。

 スペックの変更はないものの、過渡領域の出力を引き上げたことについては、「それをエンジンの始動・停止時の“繋ぎ”に使うことにしました。その結果、EV走行の粘りとハイブリッド走行のスムーズな協調ができたと自負しております」と語りました。

 静粛性の向上については、「EPBへの変更で、従来足踏み式ブレーキのブラケットがあったダッシュパネル側の開口部がなくなり、エンジンからの入力を遮蔽できた事が大きいですね」と、意外な改良点を挙げました。

 フットワークについては、バネ上の動きが抑えられた優しい乗り心地と、よりスムーズなハンドリングで“いいクルマ感”が増していることに対し、「EPB追加に伴う質量バランスの対応とパワートレイン制御見直しにより駆動の出方に合わせて、ショックアブソーバーとEPSを再チューニングしています」と説明。

「走りの方向性は従来モデルと同じく『より上質、よりスムーズ』ですが、結果として基本性能の底上げができたと思っています」とし、さらに従来モデルではZグレードのみに採用していたスウィングバルブ付ショックアブソーバーを新型では採用を止めた理由として、「新型はそれがなくても狙いの性能が出せるようになった」ためと述べました。

 また、ブレーキにはスムースストップブレーキが採用され、誰でもスムーズに停止できるようになったことについては、「アクアは高齢の方や初心者など運転に不慣れな方が選ぶことも多いので、『運転をサポートしてあげたい』と言う想いから採用しました」と語り、「高級車に先行して採用された技術ですが、『ストップ&ゴーの多い街中で走る機会の多いアクアにこそ必要なアイテム』と言う想いから、少しコストをかけてでも採用すべきと判断しました」とコメントしました。

 今回の改良でGRスポーツの設定が無くなったことについては、「現時点では『市場の動向を見て判断しますので、今後にご期待ください』としか言えませんが、GRスポーツは専用のエクステリアや専用の走りのチューニングが必要なので、通常モデルと同時開発が難しいんですよね(意味深)」との回答にとどめました。

 今回の改良は、見た目の変更にとどまらず、走る・曲がる・止まるの性能も着実にレベルアップしており、まさに大幅改良にふさわしい内容となっています。

 新型アクアは、プリウスと合わせて「ハイブリッド専用車“群”」としての再出発と言えるのかもしれません。

【画像】超いいじゃん! これがトヨタ新型「低燃費コンパクトカー」です!(30枚以上)

“クルマ”の未来、ここで全部分かる! モビショー最新情報はこちら

画像ギャラリー

Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

【NEW】自動車カタログでスペック情報を見る!

新車不足で人気沸騰!欲しい車を中古車で探す

最新記事

メーカーからクルマをさがす

国産自動車メーカー

輸入自動車メーカー