スズキが「“新”キャリイ」を公開! 驚異の「100万km」も走れるすごい“耐久性”も確保! 既存のキャリイユーザーにも嬉しい「新たな軽トラ」e-キャリイをイベントで披露
スズキは2025年10月12日、浜松工場内の特設会場で催されたユーザー参加型イベント「GSX-S/R Meeting 2025」において、BEV(バッテリー電気自動車)仕様の軽トラック「キャリイ」(以下、電動キャリイ)の展示を行いました。どのような車両なのでしょうか。
「バッテリーリーンな電動車」の実現
スズキは2025年10月12日、浜松工場内の特設会場で催されたユーザー参加型イベント「GSX-S/R Meeting 2025」において、BEV(バッテリー電気自動車)仕様の軽トラック「キャリイ」(以下、BEVキャリイ)の展示を行いました。
同モデルは、2025年5月21日から23日にかけて行われた「人とくるまのテクノロジー展2025」で初めて公開されたもので、農家におけるBEV軽トラックの利便性や、V2H(ビークル・ツー・ホーム)システムを通じて太陽光発電エネルギーを有効活用する使い方を検証する目的で開発された実証実験用のクルマです。

2025年度中には、農業を営む使用者に一定期間貸し出す形の実証実験が、静岡県浜松市、静岡県湖西市、愛知県豊川市、そして熊本県阿蘇郡の各地で開始される予定です。
スズキはこの実証実験を通して、BEVキャリイの潜在的な需要や、BEVの電池を利用した太陽光発電エネルギーの自産自消について確かめ、国や地域、使用者の状況に応じた最適なエネルギー効率で、過剰にバッテリーを搭載しない「バッテリーリーンな電動車」の実現に向けて、パートナー企業と開発を進めていくと発表しています。
BEVキャリイについて、スズキのBEVソリューション本部 BEV商品企画部B・C企画課で工学博士の主任を務める高橋修司さんは次のように説明します。
「BEVキャリイは、既存のEVとは異なる考え方を持つ車両です。
基本的にはガソリン車のキャリイをEVへコンバージョンしたもので、パートナー企業であるエリーパワーさんが開発した住宅用蓄電リチウムイオンバッテリーをそのまま搭載できるようにしています。
家庭用の蓄電池は市場規模が大きいため、そこと共通化を図ることで価格を抑制する狙いがあります。BEVは四輪も二輪も高価になりがちなので、市場の母数を増やして手の届きやすいものにしたいと考えています。
車体はガソリン車がベースで、エンジンを下ろしたスペースに自社で内製したモーターを積んでいます。モーターは荷台に積まれたバッテリーの下に配置する構造です。これらのパワートレインは、将来的には四輪と二輪で共通化できればと考えています。
展示車両ではバッテリーが見えるようにあえて透明なカバーにしていますが、もちろん既存のクルマと同じ荷台にすることも可能で、最大積載量や最低地上高も変わらず、これまで同様の使い勝手を提供できます。
充電コネクターはCHAdeMO規格を採用しており、V2Hシステムでの使用を想定しているため、99%はご自宅での充電になると考えています。
航続距離は非公表ですが、満タンで100km弱走行できれば、農業などの用途には十分対応できると見ています。
また、買い物などの日常使いも想定しており、弊社で言えば軽自動車の“アルト”のようなクルマへの採用も可能で、相性は非常に良いと思います。
もちろん、配送業向けの“エブリイ”といった軽バンへの転用も十分に考えられ、できるだけ多くの市場で利用できるようにすることがコストを抑える鍵となります。
軽自動車ですから、“200万円を切る”という価格を目指さなければなりません。また、現在ガソリン車のキャリイをお使いのユーザーの車両をコンバージョンするサービスなども検討しています。市販化を望む声も多く頂いていますので、目標達成に向けて研究を続けていきます」。
リユース価値の向上で車両価値を高める
電動キャリイには、スズキの一部の二輪車にもリチウムイオンバッテリーを供給する「エリーパワー」がパートナー企業として参加しています。
同社の代表取締役社長 兼 COOの河上清源さんは、搭載されるバッテリーの技術について次のように語ります。
「電動化されたキャリイは、クルマを走らせるだけでなく、停止中に家庭用電力の代わりとして使う点が重要で、毎日充放電が行われます。
クルマは走りたい時にしか走りませんが、定置用として使われると充電回数はクルマとして使うよりも長くなります。そのため、実はクルマ用の電池よりも、定置用として過酷な使い方をされる電池のほうが、はるかに寿命が長くなければなりません。
寿命を持たせる分、電気自動車で使われる高エネルギー密度の電池より少し重くなりますが、その代わりに寿命はクルマの5倍から10倍程度になると考えられます。
例えば、毎日100km走ると仮定すると、1万回の充放電で100万km相当の寿命になる計算です。四輪の場合、走行距離10万kmを目安に乗り換えを考えるオーナーさんが多いと思いますが、そうなるとバッテリーを交換することはまずないということになります。
また、弊社は使い終わったバッテリーをリユースし、定置用として利用する技術も持っています。電気自動車の電池の再利用には様々な取り組みがありますが、やはり寿命の長いバッテリーでなければ他の用途への転用は難しいです。その点が、今回のプロジェクトにおける実証試験のポイントの一つになると考えています。
バッテリーの寿命が長ければ、クルマとしての価値を維持できるため、値崩れもしにくくなると想定できます。スズキさんのクルマ、特に軽トラックは整備性が良いので、研究中のパワートレインをキット化できれば、比較的簡単にコンバージョンすることも可能でしょう。
総走行距離の想定を短くすればバッテリーを小型化できますが、寿命を短くしたからといって、極端に小さくなったりコストが安くなったりするわけではありません。それならば、やはり長寿命のバッテリーの方がメリットが大きいのです。私たちはこれからも、こうしたコンセプトのもとで超寿命化を進め、リユース価値の向上や環境負荷の低減に取り組んでいきます」。
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今回のBEVキャリイで示された、住宅用蓄電池との連携によるコスト削減や、移動手段に留まらないエネルギーインフラとしてのクルマのあり方が、今後の市販車開発にどのように反映されていくのか、その動向が注目されます。
Writer: くるまのニュース編集部
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