日産のBEVセダン「N7」中国での勢いが止まらない! 8月販売は初の1万台突破! 人気の理由&オーナーの声は?

日産の中国専売BEV(電気自動車)「N7」が好調です。2025年8月には初めて月間販売台数が1万台を突破し、ますます勢いを増しています。その人気の理由やオーナーの声を探りました。

販売記録は4ヶ月連続更新! 価格と実用性のバランスが評価され人気が加速

 日産の中国専売BEV(電気自動車)「N7」は2025年8月に1万148台を販売し、4か月連続で販売記録を更新するだけでなく、初めて月間販売台数が1万台を突破しました。

 大幅な赤字による工場閉鎖や人員削減など、暗い話題が続く日産ですが、その一方で中国事業は好調です。2025年1〜8月期における中国の販売台数は39万5500台と前年同期比9.2%で下げ幅は減少傾向、8月単月では5万8700台を販売して前月比2.4%増を記録しました。

 2025年6月は少し減らしたものの、基本的に2月以降は販売台数が全体的に増加傾向にあり、それに一役買っているのが「N7」です。

日産の「N7」。8月も販売好調!(撮影:加藤博人)
日産の「N7」。8月も販売好調!(撮影:加藤博人)

 日産 N7は2025年4月に発売された中国専売のBEVです。全長4930mm×全幅1895mm×全高1484〜1487mm、ホイールベースが2915mmと「アルティマ」よりも少し大きく、開発は以前から合弁を組んでいた「東風汽車」と進められました。

 グレードはバッテリー容量58kWh・モーター出力214hpの「510」、そして73kWh・268hpの「625」の2つを主軸に、装備の異なる「Air(510のみ)」「Pro」「Max」の3種類を用意する計5モデル展開です。なお、駆動方式は全モデル共通で前輪駆動となります。

 エクステリアでは流行りのクーペ風スタイリングを取り入れ、伸びやかで先進性を感じさせます。4ドアセダンなので後部はハッチではなくトランクとなり、後端がダックテールのように仕上げている点ではスポーティさも演出しています。

フロントは左右一体型デイライトを上部に、その下の「フの字」型ユニットではヘッドライトに加え、710個のLEDセグメントで文字や模様を表示できるディスプレイも一緒に配置されています。

 N7は2025年4月に予約が開始されましたが、予約件数は開始数時間で1万件超、2025年6月上旬には累計で2万件を突破しました。

 このヒットの裏には11万9900〜14万9900元(約246万5000〜308万1000円)という安さに加え、高度な運転支援機能やフロントバンパーのLEDディスプレイ、あらゆる操作をタッチディスプレイに集約したコックピット設計といった、中国の消費者が好む要素を盛り込んだことが要因として挙げられます。これにより、これまでの日系BEVでは考えられない異例の人気に繋がりました。

 2025年8月には1万148台を販売、4月の665台、5月の3034台、6月の6189台、7月の6455台に続いて記録を4か月連続で更新しています。

同時期に発売されたトヨタの中国専売BEV「bZ3X」もN7とほぼ同じ台数で歩みを進めてきましたが、ここにきてN7が先に1万台を突破しており、その人気はとどまることを知りません。

 実際に納車されたオーナーの声を覗いてみると、先進性を備えておきながらも、航続距離や経済性といった実用面を高く評価している人が多く見受けられます。また、家族層にとってはキャビンの広さも長距離移動に一役買う要素であると評価しています。

 クルマ本体以外では、日産のディーラーで納車してもらう際の納車式や、営業担当の気配りを高く評するSNSの投稿も多く、こういった点も中国では重要視されるのだと感じさせます。

 多くの面でおおむね高評価な一方、N7の加速レスポンスは比較的優しめに調整されており、人によってはそれを遅いと感じてしまうことも考えられます。

 また、とても人気なことから納車は注文から2か月も待つ必要があるという指摘もあります。日本の感覚からすれば納期2か月はかなり早い方に思えますが、東風日産としては生産体制を増強しているとアナウンスしています。

 東風日産は公式SNSでN7に対して寄せられた数々の疑問に細かく答える企画も発売前から現在まで展開しており、こういった草の根活動で中国の消費者の信頼を集めていると言えるでしょう。

 日産はN7に続き、PHEVセダン「N6」の発売も2025年中に予定しています。これまではPHEV車種の販売に消極的だった日産ですが、2025年に入ってPHEVのピックアップトラック「フロンティア プロ」を中国専売車として発表するなど、パワートレイン戦略の転換を見せています。

 中国ではPHEVもBEVと同じく人気のため、より中国の需要に合わせるべく、これからも続々とPHEV車種を投入する計画です。合弁相手との協業を通した現地開発が各社でのトレンドとなっている今、日本メーカーにとって巻き返しの時が訪れていると言えるでしょう。

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Writer: 中国車研究家 加藤ヒロト

下関生まれ、横浜在住。2017年に初めて訪中した際に中国車の面白さに感動、情報を集めるうちに自ら発信するようになる。現在は慶應義塾大学環境情報学部にて学ぶかたわら、雑誌やウェブへの寄稿のみならず、同人誌「中国自動車ガイドブック」も年2回ほど頒布する。愛車は98年式トヨタ カレン、86年式トヨタ カリーナED、そして並行輸入の13年式MG6 GT。

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