三重県の駐車場で水没車の引き上げ始まる! 水没車オーナーの思いは? 費用は管理会社持ち 10月3日に全車搬出完了

2025年9月に三重県北部を襲った記録的な豪雨によって大量の雨水が流れ込み、地下駐車場「くすの木パーキング」が浸水被害に遭いました。9月29日から、水没した車両274台の搬出作業が開始。当日駐車場を利用していたクルマのオーナーに現在の状況と思いを聞きました。

274台水没の「くすの木パーキング」とは

 2025年9月12日に三重県北部を襲った記録的な豪雨によって、四日市市中心部にある地下駐車場「くすの木パーキング」に大量の雨水が流れ込み、駐車していた車両270台以上が水没する事態となりました。

 当日の雨量は1時間あたり123.5mmという猛烈なものでしたが、同駐車場に設置してある止水板の故障が今回のトラブルの原因である可能性が高いと考えられています。

三重県四日市市の駐車場で浸水被害に遭った車両(写真提供:オーナー)
三重県四日市市の駐車場で浸水被害に遭った車両(写真提供:オーナー)

 9月26日には、駐車場の復旧や今後の対策などを話し合う「四日市市地下駐車場施設復旧検討委員会」の初会合が四日市市内で開かれました。

 出席者は大学教授、国土交通省中部地方整備局、三重県、四日市市などの委員です。この委員会で国側は電動式の止水板が2021年12月に故障の報告を受けていたものの、その後の対策を放置していたことを謝罪しました。

 くすの木パーキングの管理会社である「株式会社ディア四日市」は第三セクター形式で官民一体となって平成5年3月に設立されました。

 その後、平成9年4月に国道1号下に設置する地下駐車場と中央通り地下駐車場を一体化し「くすの木パーキング」としてオープンしました。

 24時間営業で年中無休。収容台数は地下1階+地下2階合計で509台(うち障がい者等用8台)と大規模で、監視カメラは50台、Wi-Fiも完備という設備が整った駐車場です。

 商店街にも近いことから人気が高く、今回の水没車の中にはマイバッハやランボルギーニ等の超高級車の姿もありました。

水没したほとんどのクルマが「全損」扱いに

 このような中、9月29日から水没車の搬出が始まりました。ディア四日市の公式サイトには以下のように記載されています(一部抜粋)。

ーーー
・中央通り側、国道1号側ともに管理会社の費用において一括して仮置き場まで搬出させていただきます。

 搬出した車両は仮置き場において所有者の方にお引き渡しさせていただきます。

・全体の搬出には時間を要することから、搬出日時が近づきましたら所有者の方にご連絡いたします。

 本来なら、車両所有者の方にそれぞれ事前にご了解を頂くところですが、緊急性に鑑み「駐車場の供用約款」に基づき施設側で搬出することについてご理解を賜りますようお願いいたします。
ーーー

 なお、搬出されたクルマの置き場所についてはトラブル防止のために明らかにされていません。一部報道によると、10月3日に全ての車両の搬出を完了したとのことです。

 水没したほとんどのクルマが「全損」扱いになると考えられています。全損とは、廃車になることを意味しますが、冠水車(全損)の基準(一般財団法人日本自動車査定協会の中古自動車査定基準)によれば「集中豪雨や洪水などにより、室内フロア以上に浸水したもの、または、その痕跡により商品価値の下落が見込まれるもの」とされています。

 今回被害に遭った274台のほとんどが「冠水車」の基準に当てはまると考えられます。

 駐車場管理会社が補償する流れになると考えられますが、補償の交渉や説明などはまだ行われていない模様です。

 ちなみにこのような水没事故が発生した場合、一般的には任意保険の車両保険によって保険金が支払われます。

 自賠責保険(強制保険)は車両やモノに関する補償はなく、歩行者や同乗者など「人」(加害車ドライバーは除く)に対する補償になります。

 保険会社はそれらのクルマを引き上げて部品として国内流通させる、もしくは輸出するか、解体せず丸車のままで専門の輸出業者に売却(ロシアなどは日本の冠水車が人気)するケースも多数あります。

三重県四日市市の駐車場で浸水被害に遭った車両(写真提供:オーナー)
三重県四日市市の駐車場で浸水被害に遭った車両(写真提供:オーナー)

水没車オーナーの思いと補償状況は?

 水没車の所有者である「なのまさん@bananarag」に、現在の状況や愛車への思いなどを伺いました。

※ ※ ※

―― 水没してしまった愛車の車種は何ですか? いつ購入されて、どのように使われてきましたか?

 日産「ノート」です。9年ほど前に、当時は型落ちでしたが新車で購入しました。

クルマ自体は通勤やプライベートでも幅広く使用していました。9年のうち6年は名古屋に住んでいたのですが、その際も手放さず普段使いなどで使っていました。

―― くすの木パーキングにはいつからいつ頃までの予定で停めていましたか?

 9月12日18時頃から、周辺で食事をするために地下2階に停車していました。周辺の空いている駐車場をキョロキョロ探しながら運転するのは危険なので、いつもとりあえずということで利用していました。

 こちらに入ってしまえばどこかしらは必ず開いていますし、商店街にもアクセスしやすいのです。停めやすく便利という理由で利用していました。

―― 被害状況を教えてください。クルマはまだ駐車場の中にありますか?

 今現在も地下2階にあります。車内に特別高価なものは入れていなかったのですが、ETCカードが入っているのでそれは取り出したいです。

 あとは会社で使用しているリュックや作業着(制服)が入っていました。それらに関しては毀損品として会社に返却予定です。

―― 地下1階と地下2階では被害状況にどのような違いがありますか?

 地下2階は完全に水埋めになってしまい、地下1階も最上部まで水は到達してないものの、車両が浮くくらいまでは水が入っていました。

―― 補償についてお尋ねします。なのまさんのノートは、どのような補償がされる予定でしょうか? 補償などの交渉窓口はくすの木パーキング管理会社のディア四日市ですか?

 自身で車両保険に入っていたので、そちらは全損扱いでお金が少し出るようです。駐車場管理会社から、補償に関しての説明は今の所ありません。

 管理会社の対応は丁寧ですがおそらくその他の対応でバタバタしているのか、補償についての説明などはこれからでしょうね。

 自身で保有している車はノートのみで私の保険の契約では代車特約はなかったので、今は家族のクルマを借りて生活しています。

※ ※ ※

 管理会社のディア四日市によれば、水没被害にあった274台の所有者とはまだ全員と連絡が取れていないと言います。

※10月3日12時41分、記事の内容を一部更新しました

【画像】これが「冠水被害に遭った車両」です。画像で見る(30枚以上)

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Writer: 加藤久美子

山口県生まれ。学生時代は某トヨタディーラーで納車引取のバイトに明け暮れ運転技術と洗車技術を磨く。日刊自動車新聞社に入社後は自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。公認チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。

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