“実験都市”「Toyota Woven City」ついに始動! トヨタグループやダイキン、ダイドーなども参画、様々な「カケザン」で共創を! 居住も同日から開始へ

2025年9月25日にトヨタは静岡県裾野市で建設を進めてきた“実験都市”「Toyota Woven City」のオフィシャルローンチを行いました。今後、人々が実際に生活するリアルな環境を舞台に、未来のモビリティや新たなサービスを開発・実証するための“テストコース”であり、この日をもって本格的な実証実験が開始されます。

“実験都市”「Toyota Woven City(ウーブン・シティ)」がローンチ、実証開始へ

 トヨタ自動車(以下、トヨタ)が静岡県裾野市で建設を進めてきた“実験都市”「Toyota Woven City(ウーブン・シティ)」が、2025年9月25日にオフィシャルローンチを迎えました。

 これは、人々が実際に生活するリアルな環境を舞台に、未来のモビリティや新たなサービスを開発・実証するための“テストコース”であり、この日をもって本格的な実証実験が開始されます。

 ローンチに際しては、関係者を招いたイベント「Woven City Official Launch Weaving the Future:Day 01」が開催され、モビリティカンパニーへの変革に向けた大きな一歩を踏み出しました。

“実験都市”「Toyota Woven City(ウーブン・シティ)」がローンチ、実証開始へ
“実験都市”「Toyota Woven City(ウーブン・シティ)」がローンチ、実証開始へ

 同日開催されたイベントにおいて、トヨタの代表取締役会長であり、Woven Cityの “Master Weaver” を務める豊田章男氏も登壇し、Woven Cityが目指す未来への期待感を次のように話しました。

「私の役割は、この町の世話を焼くのが大好きな『自称町内会長』といったところかと思っております。勝手に町内会長を名乗っている近所のおじさんだと思ってください。

 また、ここは町というよりも『未来のためのテストコース』です。

 その意味では、私はコースの管理人でもあります。しかし、『あれはダメ、これはダメ』と規制する管理人ではありません。

『あれをやってみたい』『これをやってみたい』と、誰よりも大きな声で提案する人間でありたいと思っています。

 ウーブン・シティで起こしていくのは『カケザン』です。

 カケザンは1社だけでは成り立ちません。最低でも2社が必要です。2つ以上あれば、いくらでも掛けることができます。

 ただ、『1』を掛けても物事は大きくなりません。1ではダメなんです。ですが、『2』でいいんです。

 皆さん。さあ、皆さん、もっと笑顔になってください。みんなで笑顔の『2(スマイル)』を掛けてまいりましょう。

 笑顔の未来を紡いでいける気がしてまいりました。皆さん、どうでしょう?」

「Woven City Official Launch Weaving the Future: Day 01」に登壇した豊田章男会長
「Woven City Official Launch Weaving the Future: Day 01」に登壇した豊田章男会長

 Woven Cityの構想が初めて公にされたのは、2020年に米国で開催されたテクノロジー見本市「CES」でのことです。

 その2年前の2018年のCESで「モビリティカンパニーへの変革」を宣言したトヨタが、その具体的な取り組みとして発表したこの壮大なプロジェクトは、自動車メーカーが創る“スマート・シティ”として世界中から大きな注目を集めました。

 狙いは、人々の暮らしを支えるあらゆるモノやサービスが情報でつながる時代を見据え、この街で技術やサービスの開発と実証のサイクルを迅速に回し、新たな価値とビジネスモデルを生み出し続けることにあります。

 この構想の起点について、ウーブン・バイ・トヨタ株式会社(以下、WbyT)でSenior Vice Presidentを務める豊田大輔氏は、2011年の東日本大震災とそれに伴う生産移転の歴史があったことを説明。

 またその移転の際に、トヨタ自動車東日本株式会社 東富士工場の従業員の言葉が、未来へとつながるこのプロジェクトのきっかけとなったことを明かしています。

 なお今回9月25日のローンチイベントの数日前には東富士工場で働いていた従業員をWoven Cityに招待し、様々な思いを共有したといいます。

トヨタ自動車もWoven Cityでいくつかの実証実験を行う
トヨタ自動車もWoven Cityでいくつかの実証実験を行う

 そして構想発表後、トヨタはWbyTと共に開発を着実に進め、2021年2月23日には地鎮祭を執り行い、建設を開始しました。

 このWoven Cityは、単なる未来都市のモデルケースではありません。

 豊田大輔氏が「モビリティを拡張し、未来の当たり前を発明するためのテストコース」と説明するように、その本質は実証実験の場である“Living Laboratory”にあります。

 ここで言う“モビリティ”とは、クルマのような物理的な移動手段だけを指すのではありません。

 豊田大輔氏は、「モビリティの本質は、物理的な移動だけでなく、人の心の移動…感動をもたらすことでもある」と語ります。

Senior Vice Presidentを務める豊田大輔氏

 WbyTは、そのPurpose(存在意義)を「幸せの量産:移動の未来を拓き、よりよい明日を届ける」ことと定め、Vision(目指す姿)として「モビリティの定義を拡げ、人の可能性が拡がる社会へ」を掲げています。

 このビジョンを実現するため、Woven Cityでは「人」「モノ」「情報」「エネルギー」という4つの領域でモビリティの拡張に取り組みます。

 これは、従来の自動車のテストコースが車両の性能を試す場であったのに対し、Woven Cityは人々の生活全体に関わるモビリティを検証する、より広範なテストコースであることを意味します。

 この実験都市のコンセプトは、「ヒト中心の街」「実証実験の街」「未完成の街」という3つの柱で構成されます。

 常に進化し続けることを前提とし、技術のためではなく、あくまで人々の幸せのためにテクノロジーを活用するという思想が根底にあります。

様々な実証実験が行われるWoven Cityの現状
様々な実証実験が行われるWoven Cityの現状

 Woven Cityの仕組みの中核を担うのが、「Inventors(インベンター/発明家)」と「Weavers(ウィーバーズ)」と呼ばれる人々です。Inventorsは、新しいプロダクトやサービスを開発・実証する企業や個人を指します。

 一方、Weaversは、この街に住む人々や訪れる人々であり、Inventorsが生み出したものを実際に試し、その使い勝手や感想といったフィードバックを提供する役割を担います。

 この両者が互いに“共創”し、発明とフィードバックのサイクルを繰り返すことで、未来の当たり前が紡ぎ出されていくのです。誰もが発明家マインドを持つことが、この街の心臓部と言えるでしょう。

 今回のオフィシャルローンチ時点で、計20のInventorsの参画が決定しています。

 特筆すべきは、初のアーティストInventorとして、シンガーソングライターのナオト・インティライミ氏が加わったことです。

 同氏は今後、Woven Cityで音に関する実証を行う予定であり、ローンチイベントではこの街のテーマ曲となる Woven City Anthem「Woven City」を初披露しました。また、サウンドシンボルのプロデュースも決定しています。

多様な業種の企業がInventorとして名を連ねている
多様な業種の企業がInventorとして名を連ねている

 その他にも、多様な業種の企業がInventorとして名を連ねています。

 ダイキン工業株式会社は「花粉レス空間」や「パーソナライズされた機能的空間」に関する実証実験を実施。

 実際に公開された「パーソナライズされた機能的空間」では、音や匂い、室内温度をコントロールすることでリラクゼーション可能な空間づくりを目指すといいます。

 日清食品株式会社は新たな「食文化」創造に向けた食環境の構築とその影響の検証を行い、今回はそのなかで健康を意識したハンバーガーを試食。

 一般的な商品より油感は少ないものの、ボリュームも十分でハンバーガー・ポテト・コーラをあわせても547カロリーとなるなど抑えめです。

 ダイドードリンコ株式会社は自動販売機を通じた新たな価値創造を目指すほか、UCCジャパン株式会社は2025年9月26日から「上島珈琲店Woven City」をオープンし、コーヒーが人々の創造性や生産性に与える影響を実証するといいます。

 教育分野では株式会社増進会ホールディングス(Z会グループ)がWoven City内に保育園をオープンし、室内のカメラにより子供の動きを解析することでデータ活用による先進的な教育スタイルの実現に挑むようです。

 また共立製薬株式会社はペットと人の「より良い共生社会のあり方」を探り、Woven Cityに入居する犬と共存するライフスタイルを模索していくとしています。

 さらに、インターステラテクノロジズ株式会社は、Woven City内での実証ではありませんが、トヨタやWbyTが持つものづくりのノウハウや人的リソースの提供を受け、ロケットの製造体制強化を進めます。

多様な業種の企業がInventorとして名を連ねている
多様な業種の企業がInventorとして名を連ねている

 これらに加え、株式会社豊田自動織機、株式会社ジェイテクト、株式会社アイシン、株式会社デンソーなど、トヨタグループ12社もInventorとして参画し、それぞれの専門性を活かした実証に臨みます。

 トヨタ自身も、様々なサービスに活用できるバッテリーEV「e-Palette」や、電動小型三輪モビリティによるシェアサービス「Personal Mobility Vehicle (PMV)」、自律走行ロボットがシェアカーを自動搬送する「Summon Share」といった実証テーマを掲げています。

 また、WbyTはモノの移動を簡単にする配送プラットフォーム「Smart Logistics」の実証を進め、将来的にはクリーニングやストレージサービスなど、生活を支えるサービスへと展開していく計画です。

 こうした「カケザン」をさらに加速させるため、スタートアップや起業家、大学・研究機関などを対象としたアクセラレータープログラム「Toyota Woven City Challenge – Hack the Mobility -」の募集も9月8日より開始されました。2025年10月14日まで、世界中からWoven Cityで試したいアイデアを募っています。

【画像】これがトヨタの「実験都市」です(30枚)

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