トヨタの最新型「エスティマ後継機」!? スポーティ顔の「“8人乗り”ミニバン」! 「アルファード」よりデカイし“掃除機&冷蔵庫”もついてる米国の「シエナ」どんなモデル?

かつて販売されていた「エスティマ」の後継的な立ち位置で、全長5.1mを超えるトヨタの最大級ミニバン「シエナ」。北米で絶大な人気を誇りますが、日本では正規販売されていません。はたして、シエナとはどのようなクルマで、なぜ日本で買うことができないのでしょうか。

「ミニバンのカムリ」から始まったミニバンの王者

 トヨタ「シエナ」は、北米市場のニーズに応えるために特別に設計された、トヨタのフラッグシップミニバンです。

 その歴史は1997年、当時北米で販売されていた「プレビア」(日本名:エスティマ)の後継モデルとして登場したことに始まります。

最新型のエスティマ後継機!
最新型のエスティマ後継機!

 初代モデルは、ベストセラーセダン「カムリ」のプラットフォームをベースに開発され、「ミニバンのカムリ」と称されるほどの信頼性と実用性で、北米のファミリー層の心を掴みました。

 その後、2代目(2003年〜2010年)では市場の要求に応え、ボディを全長5m超へと大幅に拡大。さらに、降雪地帯の需要に対応するAWD(全輪駆動)モデルが設定されたのもこの世代からです。

 3代目(2010年〜)では、よりスタイリッシュなデザインとスポーティな「SE」グレードの導入で新たな顧客層を獲得。後期モデルには先進安全技術「Toyota Safety Sense」も採用され、完成度を高めました。

 そして2020年に発表された現行の4代目は、シエナの歴史における最大の転換期となりました。長年親しまれたV6エンジンを廃止し、全グレードを2.5リッターハイブリッド専用車とする大胆な決断を下したのです。

 この電動化への全面移行こそが、シエナの競争力を高めると同時に、日本市場への道を閉ざす最大の要因となりました。

 現行シエナは、日本の「新幹線」から着想を得たとされる、流麗で力強いエクステリアデザインが特徴です。

 そのボディサイズは全長約5175mm、全幅約1995mmにも達し、日本のラージサイズミニバン「アルファード」と比較しても、ひと回り以上大きな堂々たる体躯を誇ります。この大柄なボディが、広大な室内空間を生み出しています。

 インテリアの最大の特徴は、運転席と助手席を隔てるように配置された「ブリッジコンソール」です。モダンな印象を与えるだけでなく、下部に大きな収納スペースを確保し、実用性も兼ね備えています。

 7人乗り仕様の2列目キャプテンシートは、最大約635mmもスライドする「スーパーロングスライド」機能を備え、リムジンのような足元空間を実現します。

 パワートレインは、全グレード共通で2.5リッターエンジンと2つのモーターを組み合わせた「トヨタハイブリッドシステムII」を搭載し、システム最高出力は245馬力を発揮します。

 燃費性能も極めて高く、FWDモデルの米国EPA複合モード燃費は36MPG(約15.3km/L)に達します。駆動方式はFWDのほか、後輪を独立したモーターで駆動する電子式オンデマンドAWDも選択可能です。

 北米のファミリーユースを徹底的に研究したユニークな装備もシエナの魅力です。最上級グレードには、センターコンソール内蔵の小型冷蔵庫(FridgeBox)や掃除機、アウトドアでも役立つ1500Wの電源コンセントなども設定されています。

 また、2025年モデルからは、ミリ波レーダーで後席の乗員を直接検知し、車内への置き去りを防ぐ「アドバンストリアシートリマインダー」が全車標準装備となりました。

 これほど魅力的なシエナですが、SNSなどでは日本での正規販売を熱望する声が絶えません。日本のオーナーからは、アルファードとは違うアメリカンなスタイルや希少性、長距離移動の快適性が高く評価されています。

 その一方で、全幅約2mというサイズは日本の道路環境では取り回しに気を使うという意見も見られます。

 では、なぜシエナは日本で正規販売されないのでしょうか。現行の4代目モデルに関しては、並行輸入も事実上不可能となる決定的な障壁が存在します。

 それは、駆動用バッテリーが日本の保安基準「UN/ECE R100-02」の安全認証を取得していないためです。

 この点は、シエナが当初から北米市場に特化して開発されたモデルであるためではありますが、これは個人や輸入業者のレベルでは対応できない問題で、メーカーであるトヨタ自身が認証を取得しない限り、日本での新規登録はできません。

 そのため、現在日本国内で目にすることができるシエナは、この法規制が問題となる前に輸入・登録された3代目以前の中古並行輸入車がほとんどです。正規販売されていないにもかかわらず見かけることがあるのは、そのためです。

 その他にも、右ハンドル仕様が存在しないことによる開発コストの問題や、国内で絶大な人気を誇るアルファード/ヴェルファイアとの市場の共食いを避けるという戦略的な理由も考えられます。

 これらの理由から、現行シエナが日本に正規導入される可能性は極めて低いと言わざるを得ません。

 もし将来的に導入されるとすれば、それは2026年以降に登場が噂される次期モデルが、開発段階からグローバルな安全基準への適合や、左右ハンドル両方に対応可能なプラットフォームで設計された場合になるでしょう。

 それまでは、シエナは日本のクルマ好きにとって、遠い北米大陸を走る憧れの存在であり続けることになりそうです。

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Writer: 佐藤 亨

自動車・交通分野を専門とするフリーライター。自動車系Webメディア編集部での長年の経験と豊富な知識を生かし、幅広いテーマをわかりやすく記事化する。趣味は全国各地のグルメ巡りと、猫を愛でること。

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