伝説のトヨタ「パンダトレノ」に最新「GRヤリス」の1.6L“3気筒”エンジン搭載! ターボを外してNA化!? 名機「4A-G」の代わりとなるか?「スゴいAE86」正体は?
「FUJI 86/BRZ STYLE 2025 with 頭文字D」(2025年9月13日開催)に出展したTOYOTA GAZOO Racingブースでは、3台の「AE86」が展示されました。なかでも「AE86 G16E コンセプト」にはスゴいエンジンが搭載されていました。
「スゴいAE86」の正体は?
2025年9月13日、「FUJI 86/BRZ STYLE 2025 with 頭文字D」が富士スピードウェイ(静岡県小山町)で開催され、多くのファンが来場しました。
そんな同イベントに出展したTOYOTA GAZOO Racing(以下、TGR)のブースでは、3台の白黒2トーンの「AE86」型「スプリンタートレノ/カローラレビン」が並んでいました。
一見すると普通の“ハチロク”に見えるのですが、実はすごいモデルだったのです。

「H2」というステッカーが貼られた車両は、トヨタが研究開発を進める水素エンジン車「AE86 H2 コンセプト」(スプリンタートレノ)、もう1台の「EV」というステッカーが貼られた車両も同じくトヨタが研究開発を進めるBEV(バッテリー電気自動車)の「AE86 BEV コンセプト」(カローラレビン)です。
これらの2台は多くのイベントなどで展示や走行を行っているため、知っている人も多いかもしれません。
今回はさらにもう1台、ボディサイドに「G16Eエンジン車(実験用)」(スプリンタートレノ/いわゆるパンダトレノ)と書かれた車両が展示されていました。ボディ下部の「GTV TWINCAM16」のステッカー部分には小さくGとEが追加され、「GTV TWINCAM G16E」となっています。
なんとこのG16Eエンジン車(AE86 G16E コンセプト)には、「GRヤリス」などに搭載されている1.6リッター直列3気筒ガソリンエンジン「G16E」が搭載されています。トランスミッションは5速MTです。
ただし、GRヤリスのエンジンはターボですが、AE86 G16E コンセプトではターボが取り外され、美しい曲線を見せるエキゾーストマニホールドが装着されていました。
TGRの担当者に話を聞きました。
「日本も今後カーボンニュートラルの観点から、エタノール系のガソリンが入ってくると思われます。その時に現状のエンジンのままでは対応できなくなってくる可能性もあります。
それらに対応できるようにするため、スーパー耐久の場で3気筒エンジンやエタノール系の燃料に対応する技術を研究しています。
このAE86 G16E コンセプトは、その一環としての開発という意味合いもあります」
このように、将来の技術開発という観点から、AE86に3気筒エンジンを搭載して実験を行っているとのことです。
「環境や将来のためという観点もありますが、AE86に搭載される『4A-G(4A-GE)』というエンジンがどんどん数が少なくなってきています。
とても楽しいエンジンということは分かっていて、ヘリテージパーツとしてシリンダーヘッドやシリンダーブロックの開発も行っています。
それと並行して、GRヤリスなどで活躍している3気筒エンジンを搭載しても楽しいということを、ユーザーの皆さまにお伝えするために活動しています。
今はコンセプトモデルという形ですが、今後エンジン単体で販売するにはどうしたら良いのか、研究や検討もこのAE86 G16E コンセプトで行っています」(TGR担当者)
AE86などに搭載された名機4A-Gですが、劣化や環境性能など、今後のことを考えると次のパワーユニットが必要となることも考えなくてはいけません。そのために、多くのユーザーに人気の高いAE86にG16Eエンジンを組み合わせてみたというわけです。
G16Eエンジンは3気筒ということもあり、4気筒の4A-Gエンジンに比べて軽量であること、もともとG16Eはターボと組み合わせて使うことを念頭に開発されているため、ターボを外したNA仕様として使っても余力があるそうです。
展示されたAE86 G16E コンセプトの車重は980kg、搭載されるG16Eエンジンは最高出力83.8kW(114PS)、最大トルク160Nm(16.3kgf・m)となっており、軽量ボディに必要十分なパワーとトルクがあることが分かります。
ナンバーも付いていて、公道を走行することが可能。前出の担当者によると、街中でもトルクフルな特性で、とても乗りやすい車両に仕上がっているとのことでした。
過給器の有無に関わらず、G16Eエンジンをユーザーやショップに販売できれば、今後の可能性も広がっていきます。そのための仲間作りもこの研究を通して行っているそうです。
また、スポーツユニットとしてさまざまな車両に搭載することも考慮し、縦置き・横置き問わず使えることも想定しているほか、耐久性もありチューニングベースとしても活用することを考えていると言います。
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トヨタとTGRは将来を見据え、水素やBEVだけでなく、ガソリンエンジンも含めた「マルチパスウェイ」での研究開発を推し進めています。
今回披露された3台のAE86は、あらゆる可能性の中から未来のスポーツユニットを見出すという、TGRの挑戦を象徴していると言えそうです。
Writer: 雪岡直樹
1974年東京生まれ。フォトスタジオアシスタントを経てフリーランスのフォトグラファーへ。雑誌やWeb媒体の撮影を担当。自動車雑誌の撮影と並行してユーザーインタビューやイベントレポートを担当することで、ライターとしても活動。国内最高峰のレース「SUPER GT選手権」を長年取材。新車情報やレースレポート、イベントレポートなどを雑誌やWebに寄稿する。





























































