トヨタの「6速MT“高性能”FRセダン」が凄かった! 300馬力オーバー「超パワフルなV6エンジン」×走りの専用“強化ボディ”採用! めちゃ高級な「マークX」に設定の「GRMN」とは
ミドルサイズの4ドアセダンで、今でも根強い人気をもつトヨタ「マークX」には、実は幻の「6速MT仕様」が存在しました。一体どのようなクルマなのでしょうか。
「マークX」に「走りの6速MT仕様」が存在!
高級感があり居住性がよく、さらに存在感も魅力的なミドルサイズセダンですが、そのなかでもトヨタ「マークX」は高い動力性能を持つことで、既に生産終了している今でもファンが多いモデルです。
しかし、実はそんなマークXに、幻の「6速MT仕様」が存在しています。一体どのようなクルマなのでしょうか。

マークXの源流は、トヨタの中核セダン「マークII」までさかのぼります。マークIIは高級車でトヨタの旗艦モデルを担う「クラウン」と、ベーシックな「コロナ」の中間モデルに位置するものとして、1968年に登場。
以後、トヨタのラインナップで主力車種として長い歴史を重ね、販売店の異なる姉妹車「チェイサー」「クレスタ(ヴェロッサ)」とともに、セダン人気を下支えしています。
特に1980年代に登場した5代目(70系)と6代目(80系)は、非常に贅沢なつくりで品質も高く、またバブル景気も重なって大ヒット。いわゆる「ハイソカー」の代名詞として支持されます。
また、この世代は高出力のツインターボエンジンを搭載する「GT」グレードを設定し、以後は「ツアラー」と名称を変えつつ、スポーツセダンとしてのキャラクターも獲得。7代目(90系)や8代目(100系)のツアラーグレードは今も熱狂的な人気を持ちます。
そしてマークXは2004年に登場しました。「X」の名称の通り、マークIIシリーズの系譜としては10代目に数えられますが、FRセダンとしての本質を見直し、旧態依然の古いデザインやパッケージングを一新。若々しいスタイリングを備え、安全性も向上させました。
2009年には2代目が登場。さらにスポーティさに磨きをかけるとともに、デザインも精悍でダイナミックなスタイリングへと刷新。3.5リッターの高性能V型6気筒DOHCエンジンや6速ATを搭載し、「本格FRセダン」のキャラクターを際立たせました。
そこから2度に渡る大幅マイナーチェンジを実施し、デザインの変更に加え、先進運転支援「トヨタセーフティセンス」の採用や、レーダークルーズコントロールの装備など、先進・安全性能を向上するなどのアップデートを行っています。
いっぽう、折からのセダンの不人気やSUVの台頭も相まって、2代目の終盤は徐々に人気に陰りが見えてきます。2019年12月、トヨタはマークXの生産終了を発表し、51年の歴史に幕を閉じました。
そんなマークXですが、スポーティさを際立たせた2代目には、さまざまな特別仕様車や限定車がラインナップされました。
このうち、2015年6月に発売された「マークX “GRMN”」は、TOYOTA GAZOO Racingが開発した100台限定のモデルで、専用の内外装のほか、足回りの強化、徹底した軽量化などが図られました。
そして、マークX “GRMN”の最大の特徴は通常モデルにはない6速MTを採用していたこと。
マークIIは歴代のどのモデルでもMT車の設定がありましたが、2004年にマークXに切り替わってからは設定がなく、約10年ぶりの復活となっています。
さらに、MTの搭載に合わせ、サイドブレーキは足踏み式から手引き式に変更し、ペダルレイアウトも3ペダルの操作がしやすいように変更。
321馬力を誇るV型6気筒自然吸気エンジン「2GR-FSE」と、優れたハンドリングを楽しめるセッティングとなっていたのでした。
このほか、専用サスペンションやボディ剛性の強化、専用トルセンLSDの採用、CFRPルーフの装備、アグレッシブな前後エアロパーツを装備。内装もウルトラスエードや専用メーター、専用シートを備え、特別感を与えています。
当時の価格(消費税込)は540万円。ベースとなった「350S」よりも170万円のアップとなっていましたが、もはやバーゲンプライスと呼べそうなクオリティでした。
さらに2019年、2度目のマイナーチェンジを受けたマークXをベースに、再びマークX “GRMN”が設定されました。「FRセダンのマニュアル車」を求める声が非常に高かったことで、さらなるチューニングを図るとともに、販売台数も350台へと増やしています。
パワートレインは、エンジンの出力特性を専用チューニングで変更し、MTとの相性を向上。リアデフのギア比も変更し、操作系のチューニングも実施しました。
さらに、2015年モデルでも補強用ブレース、ドアスタビライザーの追加によるボディ剛性の向上を図っていましたが、2019年モデルでは、トヨタの元町工場に送り、ボディに252点ものスポット溶接を追加。さらなる剛性向上を実施しています。
このほか、専用4本出しマフラーや19インチのBBS製鍛造アルミホイール、専用のカーボン&ピアノブラックの加飾パネルを装備し、特別感と走る喜びを表現しています。
当時の価格(消費税込)は513万円。ベースの「350RDS」よりも130万円ほどのアップにとどまり、すぐに完売しました。
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今では非常に貴重な「FRセダンのMT車」というキャラクターを持つマークX “GRMN”ですが、大手中古車サイトではおよそ600万円から700万円程度で販売されており、すでにプレミアが付いているようで、今後さらに値上がりする可能性もありそうです。
ちなみに、日本のモータースポーツの“聖地”としても名高い国際サーキット 富士スピードウェイ(静岡県小山町)にある実践型の安全運転講習施設「トヨタ交通安全センター モビリタ」では、試験車両として不定期で2019年モデルのマークX “GRMN”を貸し出しています。
運が良ければマークX “GRMN”を使い、低ミュー路での横滑り体験や、運転技能の向上、安全講習を受けることができるかもしれません。
Writer: 伊勢崎剛志
自動車販売から自動車雑誌編集部を経て、ライターとして独立。趣味も多彩だが、タイヤが付いているものはキホン何でも好きで、乗りもので出かけることも大好物。道路や旅にも精通し、執筆活動はそういった分野をメインに活動。










































