「1リッターで30km」走る! アンダー100万円の「究極のエコカー」が凄い! 5速MTのみ&「ほぼ軽サイズ」でおしゃれ内装も採用! 超画期的だった三菱「ピスタチオ」とは何なのか
三菱はかつて、「リッター30km」という超・低燃費のクルマを販売していました。ごくわずかの販売に終わったという幻のモデルですが、一体どんなクルマだったのでしょうか。
涙ぐましい努力で獲得した「リッター30km」の栄光
「低燃費なエコカー」というと、真っ先に思い浮かべるのがハイブリッドカーです。
しかし、モーターや駆動用の大容量バッテリーなどを搭載するハイブリッドカーは、どうしても価格が高くなりがちというデメリットが存在します。
そこで、ハイブリッドカーとは異なるアプローチで試験的にリリースされたエコカーが、1999年12月に発売された三菱自動車工業(三菱)の「ピスタチオ」でした。

ピスタチオは見ての通り、当時の三菱の軽ベーシックモデルであった「ミニカ」の3ドアハッチバックがベースとなっています。
しかし、大きく異なっていたのがその“心臓部”で、660ccの3気筒エンジンを搭載するミニカに対し、ピスタチオは1094ccの4気筒ガソリンエンジンが搭載されていたのです。
このエンジンは「4A31型」というもので、同型式のエンジンは実は「パジェロジュニア」や「タウンボックスワイド」などの小型車にも搭載されていたユニットでしたが、ピスタチオのものはDOHC化された新開発のガソリン直噴エンジン「GDI」となっていたのが大きな違い。
さらにピスタチオは、このエンジンに「ASG(オートマチックストップ&ゴー)」と名付けられたアイドリングストップシステムも組み合わせ、伝達効率に優れた5速MTのみという割り切った設定としています。
これにより、燃費性能は当時としては驚異的な30.0km/L(当時の主力であった10・15モード燃費)を達成。当時のリリースには、「リッターカークラスの純ガソリン車としては世界で初めて10・15モード燃費30km/Lを実現」と誇らしく表記されています。
ちなみに燃費性能はパワートレインやアイドリングストップシステムだけで達成したのはありませんでした。
専用の空力パーツやサスペンション構造部品の軽量化、薄板ガラスや軽量アルミホイールの採用、ボンネットやリアシートバックパネルのアルミ化といった軽量化で、700kgという軽量ボディを実現。
タイヤも転がり抵抗の少ない135というナロー幅を装備していたなど、涙ぐましい小さな努力の積み重ねが結実したものでした。
エクステリアは、8代目ミニカのほぼそのままのスタイルとなっていましたが、専用デザインのグリルや、のちにミニカにも採用されるマルチリフレクターヘッドランプの先行採用、そして「シトロンイエロー/ロアーグリーン」の専用2トーンボディカラーを採用。
インテリアにも木目調パネルやスエード調表皮がインパネに追加されるなど、差別化が図られていました。
そんなピスタチオですが、パワートレインを中心に専用パーツが多くおごられていたのにも関わらず、価格は95万9000円とアンダー100万円を実現。
ただし販売は自治体や企業に限られており、その台数も限定わずか50台ということで、量販を目指したものというよりは、三菱の低燃費技術をアピールするためのモデルという側面が強いものでした。
自治体や企業に限定したとはいえ、すでにATが主流だった頃にMTのみのラインナップはなかなか厳しかったようで、実際は50台の限定台数に達さなかったという話もありますが、現在も自治体や企業から売却された個体が一般ユーザーの手に渡り、現役で稼働している車両もあるようです。
Writer: 小鮒康一
1979年5月22日生まれ、群馬県出身。某大手自動車関連企業を退社後になりゆきでフリーランスライターに転向という異色の経歴の持ち主。中古車販売店に勤務していた経験も活かし、国産旧車を中心にマニアックな視点での記事を得意とする。現行車へのチェックも欠かさず活動中。



















