否定派が多い「左足ブレーキ」なぜ推奨される? “右足だけ”は踏み間違いの原因に!? 教習所では絶対に教えてくれない「別々の足でペダル操作」メリットは?

2ペダルの「AT車」が全盛のなか、教習所では相変わらず右足でアクセルとブレーキを操作することを推奨しています。しかし「左足ブレーキ」を推奨する人もいるのですが、どういうメリットがあるのでしょうか。

否定派が多い「左足ブレーキ」なぜ推奨される?

 昨今は、アクセルとブレーキの2つのペダルを操作して加減速をおこなう「AT車」の比率が新車販売の約99%を占めているとされています。

 クラッチペダルも追加した3ペダルの「MT車」とは違い、ペダルが2つのAT車のほうが簡単に運転することが可能。

 また、信号や渋滞が多い日本の道路環境では、MT車の運転が煩わしいと感じる人も多く、AT車がほとんどという状況です。

ブレーキペダルを踏むのはどっちの足が正解?(画像はイメージ/photoAC)
ブレーキペダルを踏むのはどっちの足が正解?(画像はイメージ/photoAC)

 そんなAT車ですが、教習所で操作を習う際は「右足でアクセルとブレーキを操作する」ことで統一されており、多くの人が右足だけで2つのペダルを操作しているでしょう。

 しかし、1本の足ですべてを担うより、別々の足でペダルコントロールさせたほうが踏み間違いも少ないと考える人もいます。

 実際、レースの世界では、左足ブレーキはテクニックのひとつとして使用されていたりするのですが、なぜ教習所では「右足ブレーキ」で指導されるのでしょうか。元教習指導員のI氏に聞いてみました。

「原則として、教習所では左足はフットレストなどに置き、右足のみでアクセルとブレーキを操作するよう統一されています。

 MTが主流だった時代からの名残りもあるのですが、左右別々の動きを同時にする複雑さが、かえって操作ミスを誘発する恐れがあるという考えによるものです。

 また現在も右足操作を前提として、ブレーキペダルもアクセルに近い右寄りに配置されていることもあり、無理に左足を使うために不自然な姿勢になることを抑制する目的もあります」

 実は、ブレーキを踏む足について法的な観点で縛りはなく、左足でブレーキを操作することは違反ではありません。

 ただし、アクセル操作以上にブレーキ操作は繊細で、細かい微調整は慣れた足でと考える人が多いのも納得できます。

 また、近年の高齢者ドライバーによる事故の多くは「ペダルの踏み間違い」が原因とされ、本人はブレーキを踏んでいるつもりがアクセルを踏み込んでいることが多発しています。

 そのため、急発進や急加速をクルマが判断・抑制してくれる「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」の普及が広まっているわけですが、それでも完全に防げるわけではありません。

 それに対して、クルマの構造に詳しいH整備士は「左足ブレーキ」推奨派。自身もカートでのレース参戦経験があるとはいえ、速さを競わない公道で「左足ブレーキ」は無駄なテクニックなのではないのでしょうか。

「現代のクルマには、アクセルとブレーキを同時に踏んだとしてもブレーキが優先するように設定された『ブレーキオーバーライドシステム』が搭載されています。

 むしろ操作する足を分けることで、踏み間違い自体を減らすほうが理にかなっていますし、ブラインドコーナーなどで対向車が飛び出してきた場合、踏み換える時間より早く反応できる率は高いと思います」

 理論上、左足ブレーキのほうが踏み間違いの危険性はなさそうですが、欠点は、左足での繊細なブレーキ操作を身につけるまで慣れが必要だということ。

 これも経験を積むことで不自然さは徐々に解消されるようです。H整備士も段階的に左足でブレーキの感覚を掴むのがいいと教えてくれました。

「いきなり公道で、しかも左足だけでブレーキ操作するのは難しいかと思います。そこでお勧めしたいのが、まずは速度調整でのブレーキングで左足を使ってみること。

 特に難しいのがジワッと効かせる力加減と、最後の止まる瞬間のカックンブレーキをいかになくすか。つまり踏むことはできても繊細なタッチが難しいのです。

 急減速が必要な場合で、左足だけでは踏力が足りないと感じる場合は両足を使います。

 ぜひ左足ブレーキも身につけてみてはどうでしょうか」

※ ※ ※

 左足ブレーキは、アクセルオンの状態で急に車線変更してくるクルマなどへの対応でブレーキへの反応速度が早くなるというメリットがあり、咄嗟の事故回避には右足ブレーキよりも優位ともいえるようです。

 反対派から「慣れてないから、誤動作が…」という意見もありますが、やったことがなければ慣れていないのも当然です。

 ただ、停止まで左足を使う必要はなく、状況によって使い分ける、そういったテクニックもむ安全運転に寄与するでしょう。

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Writer: くるまのニュースライター 金田ケイスケ

2000年代から新車専門誌・輸入車専門誌編集部を経て独立。専門誌のみならずファッション誌や一般誌、WEB媒体にも寄稿。
中古車専門誌時代の人脈から、車両ごとの人気動向やメンテナンス情報まで幅広く網羅。また現在ではクルマに限らずバイクやエンタメまで幅広いジャンルで活躍中。

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