クルマのハンドルの根元に備わる「謎のレバー」何のため? 運転中に触っちゃダメ! 上下・前後に動かせる「チルト&テレスコピック」とは?
多くのクルマでは、ハンドルのコラム下にレバーが配置されています。これはハンドルの位置を調整する「チルト&テレスコピックハンドル」ですが、どういう機能なのでしょうか。
「チルト&テレスコピック」何のため?
たいていのクルマには、ハンドルコラム下に硬めにロックされたレバーが配置されています。
これはハンドルを任意の位置に調整できる装置で「チルト&テレスコピックハンドル(以下、チルト&テレスコピック)」と呼ばれています。
一体何に使うものなのでしょうか。

最近では、高級車を中心に電動調整タイプも増えており、さらにエンジンのON/OFFに合わせて持ち上がったり(オートアウェイ)、設定されたポジションまで自動で調整(オートリターン)するものもあります。
一体なぜハンドルが上下・前後に移動するのでしょうか。
チルト&テレスコピックが装備される目的は、シートと同じく自分の最適なポジションに合わせるためです。
チルトはハンドルホイールの角度を上下に調整でき、テレスコピックは手前に引いたり奥に押し込めるなどして前後の調整を可能にしています。
ハンドルの根本にあるレバーは、このチルト&テレスコピックのロックレバーとなっており、通常はロックされた状態ですが、レバーを押し下げることで解除され、上下前後に調整できるようになります。
もちろん走行するうえで欠かせないハンドルを支える部分になりますが、運転中に動いてしまっては非常に危険ですので、ロックレバーはかなり硬めに設定されています。
ただし、このチルト&テレスコピックは、すべてのクルマに装着されているわけではなく、ハンドルコラムが固定され、チルトとテレスコピックいずれも調整不可能な場合もあれば、チルトのみ装備されている車種もあります。
反対に、先出の通りチルト&テレスコピックが電動式の車種も増えており、より細かい調整が可能です。
ちなみに、価格がお手頃な車種にテレスコ機能がつかないことが多いのは、コストの問題が大きいでしょう。
構造上、チルトは比較的装備しやすいのですが、テレスコ機能はハンドルから伸びる「ハンドルロッド」と呼ばれるパーツを伸縮可能にする必要があり、しかも安全性を考慮し、かなりの剛性を持たせなければならないため、コストのかかる装置なのです。
それでもシート調整と合わせてチルト&テレスコピックで自分に最適なドライビングポジションを取れるのは、速く走るためというよりも、安全面で非常に重要です。
間違ったドライビングポジションでは咄嗟の場面で緊急回避の操作がしづらいのですが、チルト&テレスコピックでハンドルを調整し、肘が伸び切らない程度に設定すると操作しやすくなるでしょう。
便利なチルト&テレスコピックですが、ほとんど故障はない箇所ではあるものの、ごく稀にトラブルが発生することもあり、その場合はかなり厄介なトラブルに発展してしまうようです。
数多くの自動車修理を手掛けてきたH整備士は次のように言います。
「非常にレアなケースではありましたが、とある軽自動車で起きたトラブルは、チルト&テレスコピックが抜けてしまうというものでした。
ステアリングシャフトが押し込まれすぎて、コラム近くに配置されているブレーキのマスターシリンダーやペダルまで押されてしまい、ブレーキも壊れてしまった事例もあります」
ちなみにこういったレアケースはともかく、チルト&テレスコピック関係でのトラブルはほとんどが電動式。ハンドルコラムを動かすモーターか、制御するECUの故障が起こりうることもあり、その場合は故障部品ごと新品に交換するのが一般的です。
また電動式の場合、イグニッションのON/OFFで自動的に行う「オートアウェイ/オートリターン」は少なからずバッテリーを消費する点にも注意が必要となります。
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チルト&テレスコピックを調整することによって、メーターの視認性や操作性が上がり、運転しやすくなる効果も期待できます。
少しだけハンドルを手前に調整するだけでも運転しやすくなるので、一度試してみるといいでしょう。
Writer: くるまのニュースライター 金田ケイスケ
2000年代から新車専門誌・輸入車専門誌編集部を経て独立。専門誌のみならずファッション誌や一般誌、WEB媒体にも寄稿。
中古車専門誌時代の人脈から、車両ごとの人気動向やメンテナンス情報まで幅広く網羅。また現在ではクルマに限らずバイクやエンタメまで幅広いジャンルで活躍中。





















