「24年目ぶりの衝撃」若者の憧れ「スペシャリティクーペ」復活! ホンダ「プレリュード」とは… 歴代から最新へ

1978年の初代から2001年の5代目まで、ホンダのスペシャリティクーペ「プレリュード」歴代モデルを一挙試乗。各世代ごとに独自のデザインや革新的メカニズムを搭載し、単なるスタイリッシュクーペを超えた存在感を放ってきました。24年ぶりに復活する6代目はe:HEVと新デバイス「Honda S+ Shift」を組み合わせ、爽快感と清々しさを兼ね備えた走りを予感させます。

若者の憧れ「スペシャリティクーペ」の象徴

 1970〜80年代、日本の自動車市場では「スペシャリティクーペ」というジャンルが若者の憧れを集めました。

 その代表格がホンダ「プレリュード」です。

 初代の登場から半世紀、2025年に復活を控える今、筆者(山本シンヤ)は歴代5世代すべてに試乗し、それぞれの時代に込められた魅力と驚きを再確認しました。

 独創的なデザイン、先進的なメカニズム、そして時代ごとの走りの個性──。

 スペシャリティクーペという“無駄の贅沢”が生み出す価値と、6代目への期待をお届けします。

まもなく新たなホンダ「プレリュード」登場へ その前に歴代を振り返る
まもなく新たなホンダ「プレリュード」登場へ その前に歴代を振り返る

 1970~80年代にかけて各自動車メーカーに「スペシャリティクーペ」と呼ばれるジャンルのモデルが数多く登場しました。

 実用車よりもスタイリッシュ、でもスポーツカーほど硬派でないほどほどの性能……と曖昧なコンセプトでしたが、当時の若者には憧れの的でした。

 恐らくクルマが普及するにつれて「家族を乗せる」だけでなく「個人が楽しむ」と言うクルマが求められていたのでしょう。

 そんなスペシャリティクーペの大名詞と言われたホンダ「プレリュード」が2025年に復活します。

 すでにプロトタイプの試乗記は何度かお伝えしていますが、今回は歴代モデルを一気乗り(どれも貴重なモデルなので最高速は50km/hまでの制限付きですが)、まさに温故知新です。

●初代(1978~1982年)

 ホンダベルノ店(キャッチコピーは「クルマが、個性になる」)の専売車種として登場。ホンダ車としては「145クーペ」以来となる2ドアクーペモデルとなります。

 写真で見ると2代目シビックのクーペ版ですが、実車はよりワイド、より低いスタンスで想像以上にスタイリッシュ。

 驚きはインテリアでインパネやドアトリムなどは当時のシビックとは明らかに異なる特別感があります。

 ちなみに試乗車は貴重なコノリーレザー仕様で、当時のロールスロイスと同じ“やれ具合”に思わずニンマリ。

 集中ターゲットメーター(スピードメーターとタコメーターを同軸配置)は2代目シビックと同じですが、メーター周りに操作系を集中させるレイアウトはプレリュード独自。要するにサテライトスイッチのハシリだったのかな……と。国産初の電動サンルーフは解放感タップリです。

 パワートレインは想像していた以上に元気で活発。1.8Lエンジンは95ps(それもグロス値)しかありませんが、900kg前後の車両重量なので過不足ないパフォーマンスで小気味よい加速です。ただ、集中ターゲットメーターは動きは面白いけど直感的な視認性は悪く、北米向けが途中で通常の2眼メーターになったのは解る気がしました(笑)。

 フットワークはシビック+αと想像していましたが、軽快さよりも想像していた以上にドッシリとした印象でビックリ。

 当時貴重だったパワステも軽いだけでなく適度な手ごたえがあり、操作性もまずまず。聞くとシャシー周りはサブフレーム一体型モノコックボディやオフセットマウントの4輪ストラットなどほぼプレリュード独自設計と聞いて納得。

●2代目(1982~1987年)

 初代はスペシャリティクーペではなくセクレタリーカーとしてのイメージが強かった反省から、男性ユーザーに振り向いてもらうためにイメージを一新。TM-CMのボレロ(ラヴェル作曲)が記憶に残る人も多いでしょう。

 エクステリアはリトラクタブルヘッドライト採用でスーパースポーツ並みの引くフロントノーズが一番の特徴。これはデザイナーのスケッチを再現すべく、設計部門が数々のブレイクスルーを行なって実現したそうです。ただ、それ以外は意外とオーソドックスにまとまっているかな……と。

 インテリアは初代よりもオーソドックスになったものの、ステアリング形状やデジタルメーターなど、当時の「ハイテクジャパン」を象徴するような近未来的なデザインを採用。

 シートはユニークなデザインはもちろん、運転席から操作可能なリクライニングレバーがデートカーたる所以を実感します(謎)。クーペにも関わらず視界の良さにもビックリ。ワンアームワイパーも特徴的でした。

 エンジンは初代と同じ1.8Lながら新開発でデュアルキャブ12バルブに進化。ただ、キビキビよりも余裕に振った感じかな……と。ちなみに1985年に2.0L-DOHCを追加しますが、ボンネットに収まらずボンネットにパワーバルジと言う名の“デッパリ”が存在した。

 フットワークはフロントにダブルウィッシュボーン式サスペンション、日本車初の4輪ABS(当時はA.L.Bと呼んでいた)など最新技術を惜しみなく投入。その走りは初代よりもスポーティかつ軽快で路面を這うようなコーナリング。加えて、試乗車はパワステレス仕様だった事も相まって、軟派な見た目とは裏腹に乗り味は硬派でした。

●3代目(1987~1991年)

 2代目の成功でプレリュードは国産スペシャリティクーペの代表格に。その一方で、開発チーム的には1世代で消化しきれなかった所もあり、それらを惜しみなく盛り込んだのが3代目とです。

 エクステリアはキープコンセプトながら、より伸びやか、より低く、よりワイドなプロポーションに刷新。ちなみに1989年にラグジュアリーなテイストを付加した固定式ヘッドライトのinx(インクス)も追加。試乗車はスチールホイール+ホイールキャップ仕様ですが、ディーラーOPでマグネシウムホイールも用意されていました。

 インテリアは2代目と比べるとオーソドックな印象ですが、コクピット感が増したのと各部のレイアウトが整った上に質感も引き上げられています。ユニークなデザインのシートや運転席から操作可能なリクライニングレバーもしっかり踏襲されています(笑)。

 エンジンは全車2.0L化され、SiはDOHC16バルブ(145ps)、それ以外はSOHC12バルブ(110ps)を搭載。試乗車はSiの4速ATでしたが、DOHCながらも実用トルクがシッカリしている一方でモッサリとしたフィーリングは意外でしたが、MTだと印象が変わるかも。

 ちなみに1990年に北米向け2.1Lエンジンを搭載したモデル(Siステイツ)を限定発売。

 フットワークは4輪ダブルウィッシュボーン式サスペンションに加えて世界初の四輪操舵(4WS)の搭載はトピック。操舵角に応じて逆位相~同位相に変化しますが、実際に走らせるとグイグイ曲がる驚きと後ろがムズムズする違和感の共存(笑)。後ろから走りを観察すると、レーンチェンジのような小舵角だと蟹のように並行移動する姿は何とも不思議な感覚。ただ、「四輪で曲がる感覚ってここから始まったんだ」とシミジミ……。

●4代目(1991~1996年)

 3代目は17万5000台と歴代最多の販売を記録したものの、モデル末期はS13シルビアなどのライバルに対して苦戦を強いられたのも事実です。そこれ4代目はスペシャリティクーペに加えてスポーツ要素をプラス。

 エクステリアは固定式ヘッドライトに戻ったものの、ボンネットの低さは健在。よりワイド(初の3ナンバーボディ)、よりショートになったプロポーションは塊感が増しており、これまでのプレリュードよりもスペシャリティ度は増した感じがします。

 インテリアは前席に割り切ったパッケージに加えて、助手席まで一体となったバイザーレスのメーターパネルなどにより、一気にモダンな印象に。特徴的なシートはヘッドレスト一体型になっただけでなく、運転席は電動機能、助手席は中折れ機構(共にOP)がプラスされ、よりデート時の利便性がアップ(謎)。

 エンジンは全車2.2L-DOHCでSi VTECは変バルブタイミング&リフト機構と可変吸気システムの組み合わせで220ps/22.3kgmと大きく出力向上(通常のSiはVTEC無しで160ps/20.5kgm)。

 今回は5速MT仕様に試乗しましたが、1.6L-VTECのような低速スカスカ感はなく豊かなトルクで扱いやすさを再確認。今回は試していませんが、回すとトルクバンドがどこまで続くようなフィーリングだったのを覚えています。

 フットワークは4輪ダブルウィッシュボーンボーン式サスペンションを踏襲するも、低ロールセンター高や新設計のジオメトリー、ロングホイールストロークなどなど全てを刷新。更に4WSも機械式から電子制御式(ハイパー4WS)に進化するなど、メカニズムは全て刷新。

 今回は4WS無しのモデルでしたが、サイズアップを感じさせない軽快かつ素直なクルマの動きと落ち着いた乗り心地のバランスはスペシャリティとスポーツのいい所取りな印象。ボディサイズも含めて上級シフトしましたが、クールだけど熱血系のスペシャリティクーペかな……と。

●5代目(1996~2001年)

 バブル崩壊後、世の中の流れはミニバンに移りスペシャリティクーペ人気に陰りが出始めていたものの、ホンダは諦めずに5代目を投入。コンセプトは3代目方向(=王道スペシャリティクーペ)に軌道修正しながらも、走りの方向性は4代目をより進化させたモノになっています。

 エクステリアは全長が伸ばされ、クーペながらも居住性/荷室スペースを考慮したパッケージに。しかし、全幅が縮められてしまいデザインは良くも悪くも特別感が薄れしまい、“普通”の2ドアクーペになってしまった感は否めません。

 インテリアも同様でインパネ周りも極めてオーソドックスなデザインになってしまい、むしろ4代目のほうが先進性や新鮮味があるように感じてしまいました。スペシャリティクーペにしては解放感の高い空間は2/3代目の頃に戻った感じもしますが、各部に瞑想の跡が見られるかな……と。

 エンジンは全車2.2Lですが、SOHC/DOHC/DOHC VTEC(SiR用とタイプS用)と豊富にラインアップ。ちなみにタイプS用は吸気抵抗の低減をはじめとする専用チューニングにより、2次バランサー搭載エンジンとして初となる100ps/Lとなる220psを発揮。

 試乗車は5速MT仕様でしたが、4代目よりもレスポンスが鋭いだけでなくよりスムーズな吹け上がりと、その片鱗を少しだけ味わえたかな……と。当時の記憶(同級生の三澤君の新車に乗せてもらった)だと、高回転まで振動はもちろん雑味の無い爽快なエンジンフィールだったのを覚えています。

 フットワークは4代目から踏襲するもボディは高剛性化、シャシーがサスペンション各部の強化やジオメトリー最適化などを実施。注目はタイプSのみに設定されたATTS(アクティブ・トルク・トランスファ・システム)でしょう。

 左右の駆動力を旋回時の状態に応じて外輪側へ多く適切配分することが可能なシステムで、FFとは思えないハンドリングを実現。このATTSに合わせてフロントサスペンションは専用ダブルジョイント式を開発して搭載しています。

 試乗車はATTSの警告灯が点灯、あのアンダーステア知らずのスーパーハンドリングは体感できませんでしたが、それでも最新のFFに負けず劣らずの素直な走りは確認できました。ちなみに当時の記憶だと、運転が未熟な頃に峠で調子に乗りオーバースピードでコーナーに進入してしまい、「あっ、終わった」と覚悟を決めるも何事もなく曲がれて「ATTSは神様だ!」と驚いた事は今でも鮮明に覚えています。

 今回、歴代プレリュードに乗って感じた事は、各世代で何らかの「驚き」を感じた事です。要するに単なるカッコいいクーペにどとまらない所こそが、「プレリュードらしさ」なのかな……と思いました。

 5代目の生産終了から24年が経過、残念ながらスペシャリティクーペは“死語”になりつつあります。

 効率論だけで言えばスペシャリティクーペは世の中に無くても困らない、ある意味「無駄なモノ」ですが、筆者(山本シンヤ)はこの無駄こそが贅沢であり、結果として心の余裕にも繋がると思っています。

※ ※ ※

 これから6代目が登場しますが、久々のホンダのスペシャリティクーペはホンダのハイブリッドの“象徴”と言う新たな役目も担っています。

 シビック譲りのe:HEV+新デバイス「Honda S+ Shift」による官能的なパワートレインと、機敏すぎず、でも鈍感ではない絶妙なさじ加減でバランスが取れたフットワークの組み合わせは、味見程度の試乗ながらも「爽快」を超えて「清々しさ」を感じたほど。市販モデルでの試乗が楽しみです。

 ただ、せっかく復活させたからには、シッカリと育てて欲しいと願っています。

【画像】超カッコいい! これが新型「赤いプレリュード」です!(30枚以上)

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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