ホンダの「“6人乗り”ミニバン」! “ロールーフ”で「スライドドア」装備! 全長4.6m級「ちょうどイイサイズ」&デカすぎサンルーフ&大開口ドア採用の「スカイデッキ」とは
シザードアとガラスルーフを組み合わせた斬新な6人乗りハイブリッド「スカイデッキ」。このコンセプトカーが目指した未来とは何だったのでしょうか。
革新ミニバン「スカイデッキ」って?
ホンダが2009年の東京モーターショーで初公開された「スカイデッキ」は、スタイリッシュな外観と革新的なパッケージングを兼ね備えた6人乗りのハイブリッドMPV(多目的車・ミニバン)コンセプトカーです。

全長4620mm×全幅1750mm×全高1500mmというボディサイズに、ホンダ独自のIMAハイブリッドシステムを搭載。センターコンソールにバッテリーを収めることで、低床・低重心と広い室内空間の両立を実現していました。
外観では、フロントに採用されたシザードアと後部のスライドドアの組み合わせが来場者の視線を集めました。さらに、フロントから後席までを覆う広大なガラスルーフも話題となり、キャビン全体に圧倒的な開放感をもたらしていました。
室内は2人掛けシートを3列に配置した6人乗りレイアウトで、2列目は前席下へスライド格納し、3列目は床下にダイブダウンする機構を採用。いずれも軽量・薄型のスポーツシートを採用し、ユーティリティ性能の高さを際立たせていました。車内のミニマルかつ未来的なデザインも含め、当時のMPVとしては異例の構成でした。
スカイデッキは市販化されることなく、あくまでデザインスタディの域を出ませんでした。背景には、複雑なドア構造や広大なガラスルーフのコスト、安全性、量産性の課題がありました。
さらに2009年以降、世界的な市場トレンドはMPVからSUVへと大きく傾き、ホンダ自身も「CR-V」や「ヴェゼル」といったSUVモデルの強化へと舵を切っていった時期でもあります。
一方で、スカイデッキが提示した“低全高でスタイリッシュなハイブリッドMPV”という方向性は、後の「ジェイド」(国内で2015年に発売)や「フリード ハイブリッド」(2011年発売)などに間接的な影響を与えたのは間違いありません。
ジェイドは全高1530mm台で3列6人乗り仕様を持ち、パッケージング面において共通点が多く見られました。また、フリードではウォークスルー機能や床下格納式の3列目シートなど、空間効率の高さを追求する思想が共通しています。
とはいえ、スカイデッキの象徴ともいえるシザードアやスライドドアの融合構造、センターコンソールへのハイブリッドユニット収納といった要素は、その後の市販車には受け継がれていません。
これらはショーモデルならではの大胆なアイディアであり、量産化に際してはコストや信頼性の観点から現実的ではなかったことがうかがえます。
では、今後スカイデッキのようなMPVが再び登場する可能性はあるのでしょうか。
ホンダは現在、2040年までに四輪のEV・FCV比率を100%にするという目標を掲げており、2026年から本格展開が始まるEVシリーズ「Honda 0シリーズ」のなかで、次世代ミニバン「SPACE-HUBスペースハブ)」の存在が注目されています。
このスペースハブは、開放的なキャビン空間と先進的なシート配置を特徴とするEVコンセプトカーで、フルフラットフロアを活かした高い空間効率や移動空間としての柔軟性を提案。
スカイデッキが掲げた“未来の家族用モビリティ”という思想を、現代のEV技術で再解釈したモデルと見ることもできるでしょう。
もちろん、スペースハブにもスカイデッキのようなシザードアは採用されておらず、現実的な市販モデルとしては、より洗練され、コストや実用性のバランスを意識した設計になると考えられます。
それでもスカイデッキが持っていた精神、つまり“移動する空間”への創造的な提案という視点は、確かに未来のホンダ車に受け継がれつつあります。
量産車としてスカイデッキが復活する可能性は低いものの、電動化の進展とEVミニバン市場の拡大が進めば、その思想を宿したモデルが今後登場する可能性は十分にあります。
そうした意味でもスカイデッキは、“実現しなかった未来”であると同時に、“実現へ向かう起点”として今もなお意義を持ち続けていると言えるでしょう。
Writer: 佐藤 亨
自動車・交通分野を専門とするフリーライター。自動車系Webメディア編集部での長年の経験と豊富な知識を生かし、幅広いテーマをわかりやすく記事化する。趣味は全国各地のグルメ巡りと、猫を愛でること。


























