レクサスが「最上級モデル」発表! 「ラグジュアリークーペ」が進化!? 「LC」に改良&特別仕様「ピナクル」登場! 何がスゴい?【試乗記】
さて、いざ発表前に先行試乗! どんな印象?
その走りはどうだったのでしょうか。
今回、正式発表に先駆けてトヨタテクニカルセンター下山(TTC-S)で試乗してきました。
まずクーペですが、フロントに重いV8を搭載しているにも関わらずステアリングを切ればスッとノーズがインを向く回頭性の高さ、力技ではなく自然にかつ素直に曲がるコーナリングの一連の流れ、路面に吸い付くようなタイヤの接地性、そしてドライバーに伝わるインフォメーションの豊かさなど、「駆け抜ける喜び」の濃度が高くなっています。
初期モデルでは直進ではフラフラ、コーナリング時はリアから強引に曲がる感じから積極的におススメできなかったDRSですが、PINNACLEはそのネガはほぼ感じない上に、ハンドリングに「切れ味」や「鋭さ」をプラスしています。
恐らく、これまでの進化・熟成に加えて、車体・シャシ・空力の合わせ技により、DRSを使いこなせる素性になったと言えるでしょう。
これらにより、車両重量は通常モデルと大きく変わりませんが、乗っているとクルマが「より小さく」、「より軽く」感じました。通常モデルが「ラグジュアリーのスポーツ」ならば、PINNACLEは「スポーツのラグジュアリー」と呼べるくらいの伸び代です。
コンバーチブルもノーズがインを向く回頭性の高さ、力技ではなく自然にかつ素直に曲がるコーナリングの一連の流れ、路面に吸い付くようなタイヤの接地性、そしてドライバーに伝わるインフォメーションの豊かさなどはクーペほどではないものの引き上げられていますが、コーナリングの一連の流れがいい意味で穏やかな上にその時間軸もゆっくりに感じます。
ただ、勘違いしてほしくないのはダルなのではなく、心地よい“間”があると言う事です。
言うなればクーペは「スッ」と曲がるのに対して、コンバーチブルは「ジワーッ」と曲がるイメージです。

確かにクーペよりもクルマは動く方向ですが、絶妙な所でピタ―ッと抑えてくれる絶妙なバランスが気持ちいい。この辺りはサスセットだけでなく空力のサポートも大きく貢献しているのでしょう。
もちろん、追い込んだ走りもシッカリと応えるポテンシャルを備えているのは実感しますが、個人的にはその手前の7~8割のペースで走っている時が最も気持ちよく爽快に感じました。
つまり、「駆け抜けない喜び」が高いのです。
例えば、高速道路の追い越し車線やワインディングの二車線区間で目を三角にしてすっ飛ばしていくモデルを横目に見ながら、「あの方たちは心に余裕がないのね、ご苦労さま」と笑って見送ることができる、いわば「金持ちケンカせず」といった余裕の走りだと感じました。
この辺りは高性能だけどそれをあえてひけらかさない“したたかさ”は、日本車には無いフィーリングでしょう。
快適性は2台を比べるとクーペは「ソリッド」、コンバーチブルは「シットリ」と言った違いはありましたが、どちらも安全靴からスニーカーに履き替えたかのような軽快かつしなやかな足さばきのバネ下と、空力アイテムで無駄な動きを抑えてフラットに保つバネ上とのバランスも相まって、ベースモデルよりも快適性は高いと感じました。
個人的にはドライブモードの「コンフォート」はもはや不要で「ノーマル」で十分でしょう。
逆に「スポーツ+」は更に“やる気”のモードで、クーペはともかくコンバーチブルは「ちょっとやりすぎ!?」と思うくらいのキャラ変度合です。
この辺りをチーフエンジニアの武藤氏に伝えると、「体幹が増した事で、より攻めたセットアップが可能になりました」と教えてくれました。

パワートレインはどうでしょうか。
フットワークほど劇的な変更ではないものの、より精緻、より洗練された印象です。
実用域では抵抗感がなく微細なアクセルコントロールにも反応する扱いやすさ、中・高回転力域は回せば回すほど滑らかになっているフィーリングとサウンドです。
前回の改良でAT制御が見直しされていますが、ビジーシフトが減ったことで今まで以上にトルクの豊かさを実感。やはり大排気量NAはいいなと。
PINNACLEを総じて言うと、クーペは「より鋭く」、コンバーチブル「より優雅に」がより色濃く表現されたキャラクターになったと思います。
デビューから7年、速さを追求してサイボーグ化していったライバルを追わず、乗り味を追求していった事により、結果として感性に響くクルマに成長したような気がします。
ただ、厳しい事を言うと、もう少し短い期間(デビューから3年位?)でこの領域に辿りついて欲しかったなと思う所も。
そんなPINNACLEはクーペ/コンバーチブル共に100台の限定発売。7月24日から8月7日まで抽選申し込みを受け付けしますが、かなり狭き門になりそうな予感です。
ちなみに通常モデルにもドアストライカーの構造変更が行なわれています。
今回、従来モデルで新旧ドアストライカーの違いを体感していますが、走りへの効果は大きいです。
具体的にはステア系の座りの良さ、車線変更時の応答/収まりの良さ、タイヤの接地性アップのよるグリップ感向上、直進安定性の高さなど、クルマ全体が薄皮1-2枚剥がされたかのようなシャッキリとした印象です。
ただ、その一方で乗り心地はソリッドな感覚が強くなっていましたが、改良モデルはそれに合わせてサスペンションを最適化しているとの事なので、走行性能と快適性のバランスも整えられているので、ご安心を。
「デビューから8年」、「頂点のモデルが登場」と言う事から、個人的には今回のモデルがLCの最後の改良になるのではないかと予想しています。
7月にイギリス・グッドウッドで「トヨタGTコンセプト」がお披露目されましたが、そのレクサス版(スクープサイトではLFRと呼ばれている)がLCの後継モデルとウワサされています。
パワートレインはBEVと言われていますが、それを信じるとLCはアナログ要素を持つ最後のレクサススポーツなのかも。それを踏まえると「完熟のLC」、今が買い時でしょう。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

























