福岡県筑後市において飲酒運転をしたとして、久留米市に住む24歳の会社員の男が道路交通法違反（酒気帯び運転）の疑いで逮捕されました。

　男は警察に対し「奈良漬けを食べた」などと話し飲酒を否定したとのことですが、奈良漬けを食べて検挙されることはあるのでしょうか。

　これは5月24日午前1時頃、「青信号で止まったままのクルマがある」との通報を受けて警察官が現場に駆けつけるとクルマの運転席で男が寝ており、男から酒のにおいがしたため呼気を調べた結果、基準値の4倍を超えるアルコールが検出されたものです。

　警察が男を任意同行し事情を聞いたところ、男は「奈良漬けを食べた」などと飲酒運転を否認していました。

　発見当時はクルマが停止しており、男の運転事実が確認できませんでしたが、その後目撃証言や防犯カメラの映像などから男が飲酒運転をした疑いが強まったため、このたび逮捕に至ったということです。

　逮捕後の取り調べに対し男は、「よく覚えていないのでなんとも言えません。警察署に行ったことは覚えていますが、それ以外はよく覚えていません」などと話し、容疑を否認しているとのことです。

　このニュースに対しインターネット上では「樽いっぱいの奈良漬けでも食べたのか？酔っぱらいの言い訳はあきれるものばかりだ」、「さすがに基準の4倍のアルコールが検出されて奈良漬けのせいって事はあり得ないわな」、「奈良漬けは言い訳に使えません」など、奈良漬けに関するコメントが相次いでいます。

　なお酒気帯び運転のアルコール濃度の基準値は、呼気1リットルあたり0.15mgであり、単純なアルコール量で考えると、ビール中瓶1本や日本酒1合、またはウイスキーダブル1杯くらいの飲酒量に相当します。

　また、農林水産省が定める農産物漬物の日本農林規格によると、「奈良漬け」と定義されるためには3.5％以上のアルコール分が含まれている必要があります。

　では、奈良漬けのようなアルコール含有食品を食べたことにより、飲酒運転で検挙されることはあるのでしょうか。

　実はアルコール含有食品がクルマの運転に与える影響については過去に調査がおこなわれており、公益財団法人交通事故総合分析センターの「アルコールが運転に与える影響の調査研究の概要」では、2006年度の調査で次のような結果がまとめられています。

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○　アルコールが含まれる奈良漬け、粕汁（かすじる）、ウイスキーボンボンについて、通常想定される量を摂取した場合のアルコール量は、缶ビール1缶分をはるかに下回る量である。

○　これらのアルコール含有食品を摂取した20分後の呼気アルコール濃度について、検知器で検知されることはなかった。

○　運転シミュレータ実験でも、アルコール含有食品を摂取した場合と摂取していない場合の大きな違いは見られなかった。
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　さらに2009年には、飲酒運転の罪に問われていた男が「酒は飲んでいないが、こぶし大の奈良漬けを食べたために飲酒運転と誤認された」と裁判で主張し、それに対して山梨県警甲府署の署員が、実際に奈良漬けを食べる実証実験をおこなっています。

　この実験では署員5人が、男が主張するよりも若干大きいサイズの奈良漬け（約100グラム）を試食した後に呼気を検査しましたが、アルコール分は検出されませんでした。

　これらの調査を踏まえると、一般的な量の奈良漬けを食べても呼気からアルコールは検出されず、飲酒運転で検挙される可能性は限りなく低いといえるでしょう。

　ただしアルコール濃度の基準値はあくまで罰則のための規定であり、アルコールがわずかでも体内にあれば飲酒運転であることに変わりはありません。

　クルマを運転する前にはアルコール含有食品を食べない、仮に食べてしまった場合は時間を置いてから運転するといった心がけが大切です。

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　警察庁の統計では、飲酒運転の死亡事故率は飲酒なしの場合と比べて約7.4倍というデータが出ており、死亡事故につながる危険性が高まります。

　飲酒後すぐに運転しないことは当然ですが、二日酔い運転のように体内に少しでもアルコールが残っている可能性のある場合についても、運転を控えるようにしましょう。