謎のATシフト「Nレンジ」いつ使う?「燃費節約」説あるけど…実は「思わぬ大事故」招く危険も!? 知っておきたい「納得の存在理由」とは
多くのAT車には、シフトレバーに「N」レンジが用意されています。この「N」レンジとは一体どんなシフトなのでしょうか。またどういった時に使うのでしょうか。
Nレンジって何に使うの?
AT車を運転する場合、シフトレバーは通常「P」「D」「R」のいずれかを使うことが多いでしょう。
しかし多くのクルマには、もうひとつ「N」レンジが用意されています。
この「N」レンジとは一体どんなポジションなのでしょうか。またどういった時に使うのでしょうか。

「N」はニュートラルを意味し、マニュアル車でいうところの「どこのギアにも入れていない」状態です。
つまりギアがエンジンと離れた状態です。Nレンジに入っていると、アクセルを踏んでエンジンがいくら回転しても、動力として伝わりません。
この仕組みを理解しているドライバーの中には、以下のような場合にNレンジを活用しています。
「Nレンジだと、クリープ現象でうっかりクルマが前に進むことがない。サイドブレーキさえ掛ければ、安心してブレーキペダルから足を離せる。足の休憩になる」
また上の年代では、こういう人もいるかもしれません。
「ギアとエンジンが離れているから、トルクコンバーターも動かず、ガソリンが節約できる」
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トルクコンバーター式の機械式ATはNレンジに入れて坂道を下るとガソリン消費量が節約できるとお考えの方がいらして実際にそれを急な坂道で実行する方もおられます。
しかし、Nレンジに入れて坂道を下るような走行を常日頃繰り返していると自動車のATは寿命を縮めます。何故ならATの内部にはオイルポンプが存在しており、それがATフルードをAT本体の中で潤滑させ続けているからです。しかし、Nレンジにシフトしたまま急な坂道を下り続けるとオイルポンプが充分に作動せずにAT本体内部での潤滑や冷却が不十分になります。この結果、ATの内部に複雑に組み込まれている歯車やそのほかの構造部品の摩耗が進んでしまいます。また潤滑が阻害された結果として加熱する事でATフルードの耐久性も著しく落としてしまう事もあります。それ以前の問題としてNレンジにシフトしたまま坂道を下るとエンジンブレーキが利かず、命を落とす可能性を高めます。
ATの内部は非常に繊細かつ精密な造りです。髪の毛程の太さの微細なゴミが混入しただけでも詰まりを発生させて故障に繋がります。因みに大衆車でもATを壊せばリビルトATを使った所で工賃込みで30万円は下りません。(車種にもよります)
更に現在のATは電子制御が主流なのでDドライブ状態で坂道を下れば、傾斜角とアクセル開度を車載コンピューターが自動的に判断し、燃料カット機能を稼働させます。結果として燃料消費を抑えています。しかし、Nレンジで坂道を下るとアイドリング状態なのでその分ガソリンを消費してしまいます。
これはCVTもほぼ同様です。命がほしければ危険な真似はしないことです。「坂道はNレンジで走れば燃料消費を抑えられる」と迷信に偏っていたのは今や昔の話です。